マダガスカル マンドリツァラ/アンチラベ
世界60種以上のコーヒー固有種を擁する生物多様性の島で育つ希少アラビカ
マダガスカルは60種以上のCoffea固有種を持つ世界屈指のコーヒー生物多様性拠点。中央高地アンチラベ(標高1,200〜1,600m)では19世紀にレユニオン島経由で伝わったブルボン系アラビカが栽培され、ナチュラル精製でシトラスとチョコレートが溶け合う独特のカップに仕上がります。マンドリツァラはヴァキナンカラトラ地方の高地農村で同品種の栽培が続く
産地情報
| 産地 | マダガスカル・ヴァキナンカラトラ地方(マンドリツァラ/アンチラベ周辺中央高地) |
|---|---|
| 品種 | アラビカ・ブルボン系(一部ローリナ/ブルボン・ポワントゥ) |
| 標高 | 約1,200〜1,600m(中央高地) |
| 味わい | シトラス・レッドフルーツ・チョコレート・フローラル・中程度のボディ |
品種情報
品種:ブルボン(Bourbon)系アラビカ / ローリナ(Laurina)
19世紀初頭にフランス植民地レユニオン島(旧称ブルボン島)からマダガスカルへ伝わったブルボン系アラビカが中央高地の主力品種。一部農家はブルボンの自然突然変異種であるローリナ(Bourbon Pointu/Laurina)も栽培する。ローリナはカフェイン含有量が通常アラビカの約1/3〜1/2と低く、フローラルで軽やかな甘みが特徴。マダガスカル国立農業研究センター(FOFIFA)のキアンジャバト研究ステーションでは、本国固有の野生Coffea種40種以上を保存研究している
- レユニオン島由来のブルボン系を中心に栽培
- 一部農家でローリナ(自然低カフェイン突然変異種)を生産
- 中央高地の火山性土壌と昼夜の寒暖差が品質を支える
- 国立農業研究センターFOFIFAが固有野生種を40種以上保存
マダガスカル高地コーヒーとは
マダガスカルはインド洋西部に位置するアフリカ大陸沖最大の島国で、その生物多様性の豊かさは「第8の大陸」とも称される。コーヒーにおいても例外ではなく、マダガスカルには 世界のコーヒー属(Coffea)既知種の約半数にあたる60種以上の固有種 が分布する。2021年にはキュー王立植物園(Royal Botanic Gardens, Kew)のアーロン・デイビス博士らが北マダガスカルの森から Coffea callmanderi、C. darainensis、C. kalobinonensis、C. microdubardii、C. pustulata、C. rupicola の6新種を一度に記載し、島の遺伝的豊かさを世界に示した。ただし多くは絶滅危機に瀕しており、商業利用には至っていない。
商業生産の主体は ロブスタ(約85〜90%) で、東海岸のヴァトヴァヴィ・フィトヴィナニ地域、タマタヴェ、アンタラハなど海抜100〜300mの低地を産地とする。一方 アラビカ(約10〜15%) は標高1,200m超の 中央高地(アントアナナリヴォ州・ハウト・マツィアトラ州・アモロン・イ・マニア州) に集中し、イタシ地区、アンチラベ近郊のヴァキナンカラトラ地方、マンドリツァラ周辺がその代表的産地だ。
コーヒー栽培の歴史は19世紀初頭に遡る。フランスが植民地化する以前から貿易関係のあった レユニオン島(旧称ブルボン島)から最初のアラビカ苗木が持ち込まれ、1894年にフランスが正式に植民地化して以降は輸出作物として急拡大した。1965〜1989年には世界第8位の生産国となり、ピーク時には年間110万袋超を記録した。独立後の政策転換と経済停滞でその後大幅に減少したが、2020年代以降スペシャルティ志向の農家が中央高地で復活の兆しを見せている。
代表的な産地・生産地域
代表的な農園
- アンチラベ周辺(ヴァキナンカラトラ地方) Antsirabe / Vakinankaratra Region
マダガスカル中央高地を代表するアラビカ産地の一角。火山性土壌と昼夜の寒暖差を活かしたブルボン系アラビカが栽培され、ナッツ・カカオ・シトラスが均整よく現れるカップが特徴。イタシ地区の火口湖沿いの区画と並びスペシャルティ市場への供給拠点として注目度が高まっている
- イタシ地区(火口湖周辺) Itasy Region🏆 Madagascar Coffee Company公認アラビカ優良産地
マダガスカル・コーヒー・カンパニーが公表する三大アラビカ産地の一つ。クレーター湖を取り囲む火山性土壌と冷涼な夜間気温がブルボンの花の香りと明るい酸味を引き出す。アラビカ栽培適地として最も評価が確立している地区
- キアンジャバト研究ステーション(FOFIFA) FOFIFA Kianjavato Research Station
マダガスカル国立農業研究センター(FOFIFA)が管理する野生Coffea種の遺伝資源保存施設(商業農園ではなく研究目的)。固有野生Coffea種を40種以上生きたまま保存しており、将来の品種改良・低カフェイン育種・気候適応研究の拠点。近年はRatelo(野生種×アラビカの交雑品種)の開発も進む
精製方法
精製方法
ナチュラル
Natural / Dry Process
フルーティーで甘みが強い。ベリー系の発酵感とワインのような複雑さ
水資源が限られるマダガスカルでは、中央高地の小農家も大半がナチュラル精製(乾燥精製)を採用する。収穫したコーヒーチェリーをそのままアフリカンベッドなどで天日乾燥させ、果肉ごとゆっくりと乾かすことでフルーツの甘みが豆に移行する。ウォッシュド(水洗式)は水不足から「実験的」な位置付けに留まるが、一部スペシャルティ向け農家が試みている。
フレーバーチャート
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
生物多様性の宝庫:マダガスカルの野生コーヒー
マダガスカルの固有コーヒー種が世界的に注目される理由は、その 遺伝的多様性の圧倒的な豊かさ にある。キュー植物園の研究によれば、アフリカ全土の既知Coffea種130種のうち約40〜44種がマダガスカルに固有分布する。より重要なことに、それらの多くが 自然状態でカフェインをほぼ含まない ことが判明しており、将来の低カフェイン育種やアラビカの気候適応改良における遺伝資源として評価が高い。
スプルゲ(Sprudge)が特集したFOFIFAの研究では、野生種とアラビカを掛け合わせた実験品種 Ratelo の開発が進んでおり、旱魃耐性と病害抵抗性を持ちながら高地アラビカのカップクオリティを維持する次世代品種として期待されている。現在、国際的な保全機関とFOFIFAの連携が強化され、絶滅危機に瀕した固有種のジーンバンク整備も急ピッチで進む。
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃
- 挽き目:中挽き〜中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ(フローラルとシトラスを鮮明に出す)またはフレンチプレス(ボディとフルーツ甘みを重視)
- 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → シトラスと花の香りが軽やかに、14g → チョコレートとレッドフルーツの厚みが増す)
基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む。本ブログは焙煎度別に折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
参考文献・情報ソース
- Perfect Daily Grind — A guide to coffee production in Madagascar (2021)
- Madagascar Coffee Company — Arabica Regions (Itasy, Haute Matsiatra, Amoron'i Mania)
- Sprudge — In Madagascar, A Coffee Revival Steps Into The Spotlight(コーヒー復興・マダガスカル珈琲会社・供給網整備)
- Daily Coffee News — Six New Coffee Species Identified in Madagascar (2021)
- Kew Bulletin — Six new species of coffee (Coffea) from northern Madagascar
- Omwani — Madagascar Coffee Production & Sourcing Guide
- Cambridge University Press — The Origins and Development of Coffee Production in Réunion and Madagascar, 1711–1972
- Royal Coffee — Bourbon's Botanical Origins And The Evolution Of Laurina
- SCA Coffee Standards
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