
コーヒーは深煎りほどカフェインが多く、デカフェはカフェインゼロというのは本当か
「苦い=カフェインが多い」という感覚は査読研究では裏付けられていない、デカフェにも微量のカフェインは残る
深煎りとカフェイン量、デカフェのカフェインゼロ説という2つの通説を一次資料で検証します。焙煎温度による含有量の差はほぼ確認されず、デカフェもFDA基準で最大15mg程度が残ることが分かっています
この記事の要点
- 「深煎りは苦いからカフェインが多い」という感覚的なイメージは査読研究では裏付けられていない
- Ludwig et al.(2014, Food & Function)は焙煎中カフェイン量がほぼ変化しないことを報告している
- カフェイン量を左右する主な要因は焙煎度ではなく品種(アラビカ/ロブスタ)・豆の使用量・抽出方法
- デカフェは「カフェインゼロ」ではなく、FDA基準で1杯(8oz)あたり2〜15mg程度のカフェインが残る
- デカフェの脱カフェイン工程はFDA基準で97%以上の除去を求めるが、完全除去は技術的に前提とされていない
「深煎りは苦いからカフェインが多そう」「デカフェだからカフェインゼロで安心」——コーヒーのカフェイン量をめぐるこの2つのイメージは、どちらも広く信じられていますが、一次資料を確認すると実態とはズレがあります。焙煎とデカフェ、それぞれのカフェイン量について査読研究・公的機関の資料から検証します。
通説: 深煎りほどカフェインが多い
「深煎り=しっかり焙煎した=苦味が強い=カフェインも多い」という連想は直感的には自然ですが、根拠になる研究を確認すると話は単純ではありません。
Ludwig et al.(2014, Food & Function)は、焙煎および抽出条件がカフェインとクロロゲン酸類(CQA)の含有量に与える影響を分析し、カフェインは焙煎の過程で比較的安定している一方、CQAは高温になるほど失われることを報告しています。つまり焙煎が進むほど変化するのはカフェインではなく別の成分であり、「カフェイン/CQA比」が焙煎度合いを示す指標として使えるとされているほどです。
PMCに掲載されたレビュー(Influence of Various Factors on Caffeine Content in Coffee Brews)でも、抽出方法による含有量差(抽出方法別のカフェイン量を参照)の方が焙煎度による差よりもはるかに大きいとされています。カフェイン量を実際に左右するのは焙煎度ではなく、品種(アラビカかロブスタか)・豆の使用量・抽出方法という別の3要因です。詳しい背景はカフェインとコーヒーの健康な付き合い方でまとめています。
苦味が強く感じられる深煎りの体感は、カフェインではなく焙煎で生成される苦味成分(メラノイジンなど)によるものと考える方が、現時点の一次資料とは整合的です。
通説: デカフェはカフェインゼロ
デカフェ(脱カフェインコーヒー)は「カフェインを気にせず飲める」飲み物として扱われますが、正確には「カフェインがほぼゼロに近いが完全にゼロではない」飲み物です。
FDAの消費者向け資料(Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?)によれば、8oz(約240mL)のデカフェコーヒー1杯には2〜15mg程度のカフェインが含まれるとされています。通常のドリップコーヒー1杯が95〜165mg程度であることを考えると、デカフェは95%以上カットされてはいるものの、ゼロではありません。
| 種類 | カフェイン量の目安(8oz=約240mL) |
|---|---|
| レギュラードリップコーヒー | 95〜165mg |
| デカフェコーヒー | 2〜15mg |
代表的な脱カフェイン工程には、蒸気と溶媒を使う溶媒抽出法、水と活性炭フィルターのみを使うスイスウォータープロセス、超臨界CO2を使うCO2法の3方式があります。Swiss Water社の解説によれば、いずれの方式もFDA基準では97%以上のカフェイン除去が求められますが、これは裏を返せば「最大3%程度は残ることが技術的な前提」ということでもあります。
なぜ「ゼロ」だと誤解されやすいか
デカフェのパッケージ表示は多くの場合「カフェインレス」「Decaffeinated」であり、「カフェイン99%カット」であって「カフェイン0%」ではありません。日常的にはこの差はほとんど無視できる量ですが、カフェインに強く敏感な人・薬を服用中で相互作用が懸念される人・妊娠中でカフェイン摂取量を厳密に管理したい人にとっては、2〜15mgという幅を知っておく価値があります。妊娠中の摂取目安についてはカフェインとコーヒーの健康な付き合い方でも触れています。
まとめ
深煎りだからカフェインが多い、という感覚は査読研究では裏付けられておらず、カフェイン量を決めるのは焙煎度ではなく品種・使用量・抽出方法です。一方でデカフェも「カフェインゼロ」ではなく、FDA基準で1杯あたり2〜15mg程度が残ります。どちらも「量の程度」を正しく知ることが、カフェインとの付き合い方を考えるうえでの出発点になります。
参考文献・情報ソース
- Ludwig et al. 2014 — Variations in caffeine and chlorogenic acid contents of coffees: what are we drinking?(Food & Function)
- PMC — Influence of Various Factors on Caffeine Content in Coffee Brews
- FDA — Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?
- Swiss Water Process — A Closer Look at Water-Process vs Chemical Solvent Method Decaf Coffee
- 食品安全委員会 — ファクトシート「食品中のカフェイン」
よくある質問
- 深煎りコーヒーはカフェインが多いのですか
- 査読研究では、焙煎温度によるカフェイン量の有意な差は確認されていません。Ludwig et al.(2014)はカフェインが焙煎の過程で比較的安定していることを報告しています。カフェイン量を左右する主な要因は焙煎度ではなく、品種・豆の使用量・抽出方法です
- デカフェにはカフェインが全く含まれていないのですか
- 含まれています。FDAの資料によると、8oz(約240mL)のデカフェ1杯には2〜15mg程度のカフェインが残るとされています。FDA基準では脱カフェイン工程で97%以上のカフェイン除去が求められますが、100%除去が前提ではありません
- デカフェのカフェインは気にしなくていいレベルですか
- 通常のドリップコーヒー1杯(95〜165mg程度)と比べると大幅に少なく、多くの人にとっては無視できる量です。ただしカフェインに強く敏感な人や、カフェインを完全に避ける必要がある妊娠中の方などは、ゼロではない点を意識する価値があります
コーヒーをもっと知る
コメント
コメントを書く