
コーヒーには利尿作用があるから脱水するというのは本当か
「利尿作用がある=脱水する」は成り立たない、水分摂取量そのものがカフェインの排出効果を上回る
コーヒーの利尿作用が脱水を招くという説を一次資料で検証します。習慣的な飲用者を対象とした無作為化比較試験では水と同等の水分補給効果が確認された一方、高用量では一時的な利尿の増加も報告されています
この記事の要点
- カフェインには利尿作用(尿量を増やす作用)があること自体は生理学的に確認されている事実
- Killer, Blannin, Jeukendrup(2014, PLOS ONE)の無作為化比較試験では、習慣的なコーヒー飲用者において水とコーヒーで体内総水分量・尿量に有意差は見られなかった
- この試験は1日4杯・カフェイン量4mg/kg体重という中程度の摂取量で行われた
- Seal et al.(2017, Frontiers in Nutrition)は、より高用量(6mg/kg)では急性の利尿増加が確認されたと報告している
- 「中程度の摂取では脱水しない」と「摂取量に関わらず一切影響がない」は別の主張であり、量に応じた効果の違いを踏まえる必要がある
「コーヒーには利尿作用があるから、飲むとかえって脱水する」——スポーツ指導や健康情報でもよく耳にする説です。利尿作用があること自体は事実ですが、それがそのまま「脱水する」という結論につながるかどうかは、実際の水分バランスを測定した研究で検証する必要があります。
利尿作用があるのは事実
カフェインが腎臓でのナトリウム・水分の再吸収を抑制し、尿量を増やす作用を持つこと自体は生理学的に確認された事実です。この点までは通説と一致します。問題は、この利尿作用が「コーヒーに含まれる水分そのものによる水分補給効果」を上回るかどうかです。
中程度の摂取では脱水は確認されなかった
この点を無作為化クロスオーバー試験で検証したのが、Killer, Blannin, Jeukendrup(2014, PLOS ONE)です。習慣的にコーヒーを飲む健康な男性50名(18〜46歳)を対象に、次の2条件を比較しました。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| コーヒー試験 | 1日4杯(各200mL)、カフェイン量4mg/kg体重 |
| 水試験 | 1日4杯(各200mL)の水のみ |
結果は、体内総水分量(コーヒー試験51.5±1.4kg vs. 水試験51.4±1.3kg)、24時間尿量(2409±660mL vs. 2428±669mL)ともに統計的に有意な差は見られませんでした。血液学的マーカーも含め、測定した全項目でコーヒーと水の間に差は確認されなかったと結論づけられています。
この結果から、AICR(米国がん研究協会)やMayo Clinicなど複数の公的・臨床機関が「中程度のコーヒー摂取(1日3〜4杯程度)は脱水を引き起こさない」という立場を示しています。理由として、コーヒーに含まれる水分自体がカフェインの利尿効果を相殺すること、また習慣的な飲用者はカフェインの利尿効果に対して一定の耐性を持つことが挙げられています。
ただし高用量では話が変わる
一方で、「摂取量に関わらず一切影響がない」とまでは言い切れません。Seal et al.(2017, Frontiers in Nutrition)は、カフェイン量を変えて比較する試験を行い、次の結果を報告しています。
| 条件 | カフェイン摂取量 | 3時間累積尿量 |
|---|---|---|
| 低カフェイン | 269±45mg(約3mg/kg) | 316±38mL |
| 高カフェイン | 537±89mg(約6mg/kg) | 613±101mL(有意差あり) |
| 対照(水のみ) | 0mg | 356±53mL |
体重60kgの人で換算すると、高カフェイン条件(6mg/kg)はカフェイン360mg程度、コーヒー3〜4杯以上に相当します。この用量域では急性の利尿増加が統計的に有意に確認されており、Killer et al.の「中程度の摂取(4mg/kg)では差がない」という結果と矛盾するものではなく、用量に応じて効果が変わることを示す補完的なデータと位置づけられます。
まとめ
コーヒーの利尿作用そのものは事実ですが、習慣的な飲用者が1日3〜4杯程度の中程度の量を飲む範囲では、脱水を引き起こすという説は査読済みの無作為化比較試験では支持されていません。一方でカフェイン摂取量が360mg程度を超えるような高用量では利尿の増加が確認されており、「量に関わらず絶対に脱水しない」という単純化も正確ではありません。1日の摂取目安についてはカフェインとコーヒーの健康な付き合い方、豆と水の比率はコーヒーの豆と水の比率は何対何が正解かもあわせてご覧ください。
参考文献・情報ソース
- Killer, Blannin, Jeukendrup 2014 — No Evidence of Dehydration with Moderate Daily Coffee Intake: A Counterbalanced Cross-Over Study in a Free-Living Population(PLOS ONE / PMC)
- Seal et al. 2017 — Coffee with High but Not Low Caffeine Content Augments Fluid and Electrolyte Excretion at Rest(Frontiers in Nutrition / PMC)
- American Institute for Cancer Research — Will Coffee Make Me Dehydrated?
- Cleveland Clinic — Does Coffee Really Dehydrate You?
- Mayo Clinic — Caffeine: Is it dehydrating or not?
よくある質問
- コーヒーには本当に利尿作用があるのですか
- あります。カフェインが腎臓での水分再吸収を抑制し、尿量を増やす作用があること自体は生理学的に確認されています。ただし「利尿作用がある」ことと「脱水を引き起こす」ことは同じではありません
- 普段からコーヒーを飲んでいる人は脱水しやすいのですか
- Killer, Blannin, Jeukendrup(2014)の無作為化比較試験では、習慣的なコーヒー飲用者50名を対象に、1日4杯のコーヒー(カフェイン4mg/kg体重)と同量の水を比較した結果、体内総水分量・24時間尿量ともに有意差は見られませんでした。中程度の習慣的摂取であれば、コーヒーに含まれる水分がカフェインの利尿効果を相殺すると考えられています
- カフェイン量が多くなっても脱水しませんか
- Seal et al.(2017)の研究では、カフェイン量が6mg/kg体重(体重60kgで360mg程度、コーヒー3〜4杯相当以上)になると、3時間の累積尿量が有意に増加したと報告されています。中程度の摂取と高用量の摂取では結果が異なるため、「量に関わらず絶対安全」とまでは言えません
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