モザンビーク ゴロンゴサ

内戦後の大地で蘇る——世界最希少種ラセモサと、森林再生を担うアラビカが共存する新フロンティア

アフリカ南東部モザンビークのゴロンゴサ国立公園山麓(標高650〜935m)で、Catimor系コスタリカ95がQグレーダースコア82〜83点のウォルナット&レモンカップを生み出します。固有種Coffea racemosaはハーブ・低カフェインで知られる世界屈指の希少種です


産地情報

産地 モザンビーク ゴロンゴサ山(ソファラ州)・キリンバス諸島イボ島(北部)
品種 Catimor コスタリカ95・Coffea racemosa(固有種)
標高 650〜935m(ゴロンゴサ山麓)/海面〜1,500m(racemosa自生域)
味わい ウォルナット・トースト・マイヤーレモン・ハーブ・ミルクチョコレート

品種情報

アラビカ種 Coffea arabica 最高品質

品種:Catimor コスタリカ95 / Coffea racemosa

モザンビークへのコーヒー導入はポルトガル植民地時代に遡るが、宗主国は隣国アンゴラを主要産地と位置づけ、モザンビークは茶の産地とされた。独立後の内戦(1977〜1992年)で農業インフラが壊滅し、長く「コーヒー空白地帯」だった。ゴロンゴサ・コーヒー・プロジェクトは2014年に設立され、現在は1,000人以上の農家がアラビカを栽培する(Perfect Daily Grind 2021 / Our Gorongosa)。並行して固有種 Coffea racemosa は北部イボ島に自生し、スローフード財団が2012年に「プレシディウム(守るべき食文化)」に認定している(Slow Food Foundation)

  • Catimor コスタリカ95(別名CR-95)はCaturra×ティモール・ハイブリッドを起源とするCatimor群の一品種で、葉さび病(CLR)・コーヒーベリー病(CBD)に高い耐性を示す。ゴロンゴサでテストされた7品種のうち環境適応性と品質の両面で選抜されており、QグレーダーによるカッピングでSCAスコア82〜83点を記録している(Perfect Daily Grind / Our Gorongosa 2021)
  • Coffea racemosa(ラセモサ)はモザンビーク〜南アフリカ北東部の約150km²の森林帯にのみ自生するコーヒー属の希少種。カフェイン含有量がアラビカの約半分(0.7〜0.9%)と低く、ローレル・ミント・ユーカリ・リコリスのハーブ香が特徴。かつてポルトガルはブラジルやサントメのブレンドに苦味緩和剤として使用し、20世紀初頭にヨーロッパへ輸出されていた(Slow Food Foundation / Espresso Barista)

モザンビーク ゴロンゴサとは

モザンビーク共和国はアフリカ南東部のインド洋沿岸国で、国土の大部分は低地と台地で構成されます。コーヒー栽培に適した高地はソファラ州のゴロンゴサ山(最高峰1,863m)周辺と、中部マニカ州のキマニマニ山地(シンバブエ国境沿い)、および北部のザンベジア州・ニアッサ州の一部に限られます(Perfect Daily Grind 2021)。

コーヒーの歴史は複雑です。ポルトガル植民地時代、宗主国はアンゴラをコーヒーの主産地として育成し、モザンビークは茶の生産地と役割を分けられました。独立後の1977〜1992年の内戦でインフラが壊滅し、コーヒー産業は実質的に失われます。2000年代以降も大型サイクロン(ケネス2019年、エロイズ2021年)が農業に打撃を与え続けてきました(Perfect Daily Grind 2021)。

転機となったのがゴロンゴサ国立公園の保全と農業の融合です。2008年に設立されたゴロンゴサ復元プロジェクト(GRP)が2014年にコーヒープロジェクトを立ち上げ、国立公園の緩衝地帯に住む農家にアラビカ苗木を配布。8年後には植林地が「自然林に60%近似した生態系」を形成し、82種の鳥類と固有コウモリが生息するようになりました(Fresh Cup 2023 / Space for Giants)。

栽培されるのはCatimor系コスタリカ95(CR-95)で、標高650〜935mの山麓でシェードグロウン農法によって栽培されます。QグレーダーがSCAスコア82〜83点を記録しており、「ウォルナット・トースト・マイヤーレモン」のノートが特徴的な中煎り向きのカップです(Our Gorongosa 2021 / Perfect Daily Grind)。

一方、北部のキリンバス諸島イボ島には全く異なるコーヒーが存在します。在来種 Coffea racemosa は砂とサンゴ礁が混じる貧栄養土壌に自生し、乾季(最長9か月)に耐え、ほぼ無農薬で育ちます。カフェイン量はアラビカの約半分、風味は「ローレル・ミント・ユーカリ・リコリス」の強いハーブ香が支配的で、伝統的に家庭の庭に1〜2本植えられ手作業で収穫・天日乾燥されてきました(Slow Food Foundation 2012)。

2023年6月、モザンビークはICO(国際コーヒー機関)に正式加盟し、国際コーヒー協定(ICA 2022)に署名しました。これは同国のコーヒー産業が国際貿易の土俵に上がる意思表示であり、ゴロンゴサ・キマニマニ両プロジェクトの輸出拡大を後押しする動きとして注目されています(ICO Press Release 2023)。


代表的な農園・生産組織

代表的な農園

  • ゴロンゴサ・コーヒー・プロジェクト(Our Gorongosa) Gorongosa Coffee Project / Our Gorongosa (Produtos Naturais da Gorongosa)
    📍 ソファラ州ゴロンゴサ山麓(カンダ・タンバラーラ・サンドゥンジーラ地区) ⛰️ 650〜935m

    2014年にゴロンゴサ復元プロジェクト(GRP)が設立。湿式ミル3基(カンダ・タンバラーラ・サンドゥンジーラ)と共同乾燥ミル1基、農場内焙煎所・包装ラインを整備する。1,000人超の農家が参加し、200ha以上を管理。2021年に8トンの生豆を初輸出し、ウォルナット・トースト・マイヤーレモンのシングルオリジンが米国スペシャルティ市場向けにリリースされた(Perfect Daily Grind / Our Gorongosa)

  • カフェ・デ・マニカ(Agrotur) Café de Manica / Agrotur
    🏆 オーガニック生産体制
    📍 マニカ州キマニマニ国立公園周辺 ⛰️ 800〜1,200m(推定)

    2019年にJenaro LopezとMandela Manuelが創業。初収穫は390kgだったが、2023年時点で2,300人以上の農家が2,500haにわたるオーガニックコーヒーを栽培するモザンビーク最大の農園群に成長した。マラウイ・ブラジル・ジンバブエから導入した7品種のアラビカを栽培し、女性農家支援と国立公園保全への収益還元(2%)を実施(Daily Coffee News 2023 / Medium)

  • イボ島ラセモサ生産者グループ(スローフード・プレシディウム) Ibo Coffee Producers — Slow Food Presidium
    📍 北部カーボ・デルガード州キリンバス諸島イボ島 ⛰️ 海面〜低地(砂浜・サンゴ礁土壌)

    スローフード財団が2012年に「プレシディウム」として認定。約30人の生産者が家庭の庭に1〜2本の Coffea racemosa を保全・収穫する。サンゴ礁混じりの貧栄養土壌に適応した固有種で、11〜12月収穫・竹とジュートの棚で天日乾燥・手剥きという伝統製法を維持する。かつてイリーカフェ(illycaffè)とイタリア政府・モザンビーク政府が保全投資に合意した実績を持つ(Slow Food Foundation / Perfect Daily Grind)


精製方法

精製方法

☀️

ナチュラル

Natural / Dry Process

1
収穫
2
そのまま乾燥
3
(長期間)
4
脱穀
ボディ
4/5
クリアさ
2/5
発酵感
5/5

フルーティーで甘みが強い。ベリー系の発酵感とワインのような複雑さ

ゴロンゴサ産はナチュラル(天日乾燥)が主流。 収穫したコーヒーチェリーを果肉付きのままレイズドベッドで3〜4週間天日乾燥する。3基の湿式ミルも整備されており、ウォッシュドロットも生産されている。イボ島の Coffea racemosa は11〜12月に手摘みした後、竹製の棚に広げて完全乾燥させ手剥き処理するという、何世代も続く伝統的なナチュラル製法を踏襲する。いずれも農薬・化学肥料を使わないオーガニック農法が前提とされている(Slow Food Foundation / Our Gorongosa)。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味 苦味 甘み コク 香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎 深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味 酸味 コク 軽い モザンビーク ゴロンゴサ エチオピア イルガチェフェ タンザニア キリマンジャロ ケニア AA ジンバブエ 東部高地 ブラジル サントスNo.2 インドネシア マンデリンG1

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ・エアロプレス
  • 豆の量:12g / 200ml(中煎りでウォルナットとレモンのバランスを引き出すなら90℃前後が最適)

基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)。中煎りのゴロンゴサはやや低温寄り(88〜92℃)でシトラス酸を引き出しやすい
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

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