ミャンマー シャン州 ユワンガン
紛争と復興を経て世界に届く山岳の明るい一杯
ミャンマー南部シャン州のユワンガンは標高1,300〜1,600mの山岳地帯。1885年に宣教師が持ち込み、1980年代にケシの代替作物として再生したアラビカが、明るい酸味と花のような香りで世界のスペシャルティ市場に名乗りを上げています
産地情報
| 産地 | ミャンマー・シャン州南部 ユワンガン郡(Ywangan Township) |
|---|---|
| 品種 | カトゥアイ(Catuai)/ SL28 / コスタリカ種 |
| 標高 | 1,300〜1,600m |
| 味わい | グレープ・タンジェリン・赤りんご・キャラメル・なめらかなボディ |
品種情報
品種:カトゥアイ(Catuai)
1950〜60年代にブラジルのカンピーナス農業研究所(IAC)でイエローカトゥーラとムンドノーボを交配したアラビカ改良種。樹高が低く強風・雨に強いため小規模農家に普及しやすい。ミャンマーでは1986年に政府が輸入した種子群のひとつとして導入され、ユワンガンの主力品種となった。明るい酸と果実感が特徴
- ブラジル起源のカトゥーラ×ムンドノーボ交配
- 1986年ミャンマー政府輸入でユワンガンに定着
- 樹高が低く小農向きの作業性
- 明るい酸と果実香が出やすい
ミャンマー シャン州ユワンガンとは
ミャンマー南部シャン州のユワンガン(Ywangan、「塩の村」の意)は、マンダレーから車で約3時間南下した標高1,300〜1,600mの山岳地帯にある。ユワンガン郡内125村のうち90村がコーヒー栽培に関わり、推定1万4,600世帯がコーヒーを主な生計手段としている小規模農家の集積地だ(Atlas Coffee Importers調べ)。
宣教師から代替作物へ
コーヒーがミャンマーに持ち込まれたのは1885年、英国植民地時代の宣教師によるものとされる。シャン州でアラビカが本格的に根付いたのは1930年代の仏教カトリック宣教師が南部シャン州に種を植えた頃だ。1930〜34年にかけてナウンチョー郡に120エーカー規模の農園「Chaungwe」が作られた記録もある(Myanmar Coffee Association 歴史資料)。
転機は1980年代。政府はUSAIDとUNの支援を受け、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)のケシ栽培を代替するため農家へのコーヒー転換を推進。1986年には政府が海外から種子を大量輸入し、カトゥアイ・SL28・コスタリカ種をユワンガンに配布した。これが現在のユワンガン品種構成の直接的な起源である。
スペシャルティへの台頭
2014年以降、Mandalay Coffee Group(2014年設立) がミャンマー最大規模のミルを稼働させ、Coffee Quality Institute・Atlas Coffee Importers・WINROCKとの連携でスペシャルティ輸出が本格化した。プレミアムロットはSCAスコア85〜87点を記録し、FOB価格は1ポンドあたり3〜4ドル超を実現している(Atlas Coffee Importers 産地資料、2023年)。
代表的な生産者・農園
代表的な農園
- アマヤル・コーヒー(Amayar Coffee) Ywangan Amayar Coffee🏆 スペシャルティコーヒー カッピングスコア83点以上
400世帯以上120ヘクタールから集荷する女性主導の農業企業。2017年に自社ウォッシングステーションとミルを建設しFDA認証を取得。現在の生産量は年間50〜100トン、輸出先は米国・フランス・日本・台湾・シンガポール・タイ。農家の50%が20〜30代の若手。ダヌ・シャン・パラウン・パオーなど複数の少数民族コミュニティが参加
- マンダレー・コーヒー・グループ Mandalay Coffee Group
2014年設立のミャンマー最大コーヒーミル。シャン州各地の小農から集荷し、輸出向け精製・グレーディングを担う。Myanmar Coffee Association(会員300名以上)と連携しスペシャルティ教育を推進
精製方法
精製方法
ナチュラル
Natural / Dry Process
フルーティーで甘みが強い。ベリー系の発酵感とワインのような複雑さ
ユワンガンの小農はほとんどがナチュラル(自然乾燥)精製を採用する。乾季(12月〜4月)の「暑い昼・涼しい夜」の寝かせ条件が、チェリーを高架乾燥ベッドで14〜25日間かけてゆっくり乾かすのに適しており、グレープ・赤りんごを思わせるクリーンな果実感が生まれる。アマヤル・コーヒーのような一部生産者はウォッシュドやハニープロセスも手がける。
フレーバーチャート
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃
- 挽き目:中挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ/エアロプレス(果実感とクリーンさを両立)
- 豆の量:11〜13g / 200ml(11g → タンジェリンとキャラメルが軽やかに広がる、13g → グレープと赤りんごの厚みが増す)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
参考文献・情報ソース
- Royal New York — Coffee Analysis: Myanmar Shan State Ywangan
- Atlas Coffee Importers — Myanmar Origin Encyclopedia
- Atlas Coffee Importers — Amayar Encyclopedia(Ywangan・農家400世帯・標高1,300-1,600m・女性主体)
- Origin Coffee — Myanmar Coffee Guide: A Brief History
- ASEAN Café Show — Coffee Production in Myanmar
- SCA Coffee Standards
コメント
コメントを書く