ネパール グルミ
ヒマラヤの麓で育つ高地アラビカ——ブルボン&ティピカが生む透明感とフローラルな甘み
1938年に栽培が始まったネパール発祥の地グルミ。標高1,000〜1,600mの山岳高地でウォッシュド精製されるブルボン・ティピカ主体のアラビカは、フローラルな香り・ストーンフルーツ・チョコレートの複合が際立つスペシャルティグレードです
産地情報
| 産地 | ネパール・ガンダキ州/ルンビニ州(グルミ・パルパ・シャンジャ・カスキ各郡) |
|---|---|
| 品種 | ブルボン(Bourbon)・ティピカ(Typica)・カトゥーラ(Caturra) |
| 標高 | 1,000〜1,600m(主産地グルミ:900〜1,400m) |
| 味わい | フローラル・ストーンフルーツ・メープルシロップ・ダークチョコレート・クリーンな明るい酸 |
品種情報
品種:ブルボン / ティピカ / カトゥーラ
ネパールコーヒーの品種構成はブルボン約65%・ティピカ約25%・残りカトゥーラ等とされる(Perfect Daily Grind, 2023)。1938年にミャンマー(当時ビルマ)経由でグルミ郡アープチャウル地区に持ち込まれたとされる種が起源。ほぼすべてアラビカで、ロブスタは商業的に栽培されていない
- ブルボン(Bourbon)はティピカからの突然変異で、エチオピア→イエメン→ブルボン島(現レユニオン)を経て世界に広まった品種。ネパールでは全体の6割超を占め、カラメルのような甘みとクリスプな酸味が特徴。高標高の緩慢な成熟がキャラクターをより鮮明にする
- ティピカ(Typica)はアラビカ原種に最も近い系統で、シルキーなボディとデリケートなシトラス・フローラル感で知られる。収量が少なくCLR(葉さび病)に弱いが、テロワールの特徴をそのまま表現するため、スペシャルティ評価が高い
- カトゥーラ(Caturra)はブルボンの自然変異で背丈が低く多収性。ネパール高標高では成熟が遅くなり、ブルボンに近い風味表現が得られる場合がある
ネパール グルミとは
ネパール連邦民主共和国はヒマラヤ山脈南麓に位置し、国土の77%が山岳地帯という世界でも例外的な高地国家です。コーヒー栽培に適した「コーヒーベルト」(南北緯25度以内)のほぼ北限に位置しながら、標高1,000〜1,600mという高地条件がアラビカ栽培を可能にしています。
1938年に始まった栽培の歴史
ネパールでのコーヒー栽培の始まりは1938年に遡ります。ヒラ・ギリという僧侶がミャンマー(当時ビルマ)の修道院からコーヒーの種子を持ち帰り、ガンダキ州グルミ郡のアープチャウル(Aapchaur)地区に植えたとされます(Nepal Coffee Federation、Himalayan Coffee Trading記録)。
ただし本格的な商業栽培が始まったのはそれより後の話で、1968年にネパール政府がインドから種子を輸入して普及活動を開始。さらに1980年代以降に農業省と協同組合支援が重なり、グルミ・パルパ・シャンジャのいわゆる「コーヒースーパーゾーン」(Coffee Super Zone)が形成されました。
現在、コーヒーは全国42郡・32,500世帯以上で栽培されており、2022/23年度の生産面積は3,655ヘクタール、生産量は394トン(グリーンビーン換算)と記録されています(ネパール紅茶・コーヒー開発庁 NTCDB、2023年統計)。生産規模は小さいながら、スペシャルティ比率は80%以上と推定されており(Perfect Daily Grind, 2023)、品質面では国際市場から高い評価を受けています。
グルミ郡の位置付け
グルミ(Gulmi)はルンビニ州西部の山岳郡で、国内第2位の生産量(231ヘクタール、約27トン、2021/22年度 PDG参照)を誇ります。年間降水量1,200〜1,600mm、平均気温15〜20℃という温和な環境が、アラビカの段階的成熟に最適です。
グルミ郡コーヒー協同組合連盟(DCF Gulmi)は1993年設立で、傘下の一次協同組合(PCC)を通じて小農家の収穫・精製・輸出を統括。ウォッシュド精製主体で、有機農法の実践により国際市場での価格は1kgあたり約16米ドル前後(2022/23年度輸出単価、ネパール紅茶・コーヒー開発庁参考)と、コモディティ価格を大幅に上回る水準を維持しています。
代表的な生産者・協同組合
代表的な農園
- グルミ郡コーヒー協同組合連盟(DCF Gulmi) District Coffee Federation Gulmi🏆 ネパール国内品評会入賞実績あり
1993年設立のグルミ郡最大の協同組合連盟。複数の一次協同組合(PCC)を統括し、小規模農家の有機栽培・ウォッシュド精製を支援する。グルミのコーヒーは全量有機農法とされ、輸出向けスペシャルティロットとして欧州・日本向けに出荷。ネパールコーヒーの発祥地ともされるアープチャウル地区を含む(DCF Gulmi公式サイト)
- ヒマラヤ・コーヒー・カンパニー Himalaya Coffee Company
ネパール国内15郡超の協同組合・小農家と連携し、スペシャルティグレード(カップスコア80点以上保証)アラビカを海外市場向けに供給。自然日陰栽培・温度管理倉庫での保管により品質安定に注力。ウォッシュド・ナチュラル・ハニー・嫌気性発酵の各プロセスを実験的に展開(Perfect Daily Grind 2025記述)
- カブレパランチョク郡協同組合(中央コーヒー協同組合連合) Central Coffee Co-operative Union / Kavrepalanchok District
2021/22年度の郡別生産量でネパール第1位(273ヘクタール・32トン超)を記録するカトマンズ近郊の主産地(PDG 2023データ)。中央コーヒー協同組合連合(CCCU)傘下で、公定価格制と農業技術指導プログラムにより小農家の安定収入を支援している
精製方法
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
ウォッシュドが圧倒的主流。 収穫したチェリーをパルパーで果肉除去し、12〜36時間の水タンク発酵でムシラージを分解。水洗後、レイズドベッドまたはパティオで天日乾燥する。高地の適度な乾燥気候がゆっくりした乾燥を促し、クリーンかつ透明感のあるカップを生み出す。近年はグルミ・カスキを中心にナチュラル・ハニー・嫌気性発酵を試みる農家も増えており、輸出ロットの多様化が進んでいる(Perfect Daily Grind 2025)。
フレーバーチャート
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃
- 挽き目:中挽き〜中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ・エアロプレス
- 豆の量:12g / 200ml(フローラル感と明るい酸を活かすなら低め温度・短め抽出が向く)
高地アラビカ特有の明るい酸とフローラル感は、高温抽出(95℃以上)で失われやすい。88〜92℃のやや低温で丁寧にドリップすると、メープルシロップのような甘みとストーンフルーツの香りが引き立つ。
参考文献・情報ソース
- Perfect Daily Grind — How Nepal is emerging as a specialty coffee origin(2025年6月・生産量・品種・協同組合)
- Perfect Daily Grind — Will Nepal produce more specialty coffee in the future?(2023年・生産統計・郡別データ)
- Nepal Coffee Federation — About NCF(協同組合構造・生産者支援体制)
- DCF Gulmi — The origin of Nepalese coffee(グルミ郡1938年史・協同組合)
- Himalayan Coffee Trading — History of Coffee in Nepal(1938年ヒラ・ギリ・ミャンマー経由の導入史)
- FiscalNepal — Nepal's coffee exports 2022/23(生産面積・輸出量・市場データ)
- SCA Coffee Standards — Golden Cup Brewing Standard(抽出基準)
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