Korua Pencil

2014年スイス創業・Korua初期の1本――ポインテッドノーズ+微スワローテールの「Swiss Army Knife」

Korua ShapesスイスカービングスノーサーフパウダーボードFloat Camber

Korua Shapes が2014年のブランド発足時から展開するディレクショナル「Pencil」。"all about turning"を掲げたスイス発ブランドの原器で、Float Camber+テーパード・ポインテッドノーズ+微スワローテールという構成でグルーマーからパウダーまでをカバーする、Korua が「Swiss Army Knife」と自称するオールマウンテン形状


Korua Shapes ロゴ

「Pencil」は Korua Shapes が 2014 年のブランド発足と同時期にラインナップに加えたディレクショナル・シェイプ。ブランド名を冠するモデルがほぼない Korua の中で、Dart とともに最も知名度の高い一枚です。Korua 自身は Pencil を 「Swiss Army Knife of Snowboards」 と呼んでおり、グルーマーからパウダーまでオールマウンテンをカバーする汎用性と、「とにかく気持ちよく曲がる」ための設計を両立しています。

創業:2014 年スイス

項目 内容
創業年 2014 年
創業地 スイス
創業者 Nicholas Wolken、Stephan Maurer、Jerry Niedermeier(+True Color Films の Alvaro Vogel)
創業の動機 2013 年の日本ツアーで目撃したスノーサーフ&カービング文化。「大手ブランドが追いかける大技・コーク中心の流れへのアンチテーゼとして、ターンだけに集中したブランドを作ろう」と Wolken が発案
初年度規模 約 6 シェイプ、販売数は約 15 枚(ほぼ知人向け)
ブランド哲学 “All about turning”。カーブを主役に据え、シーズンモデルを設けずに形をキャリーオーバーすることで「時間が経っても価値が落ちない板」を目指す

Korua の Nicholas Wolken は Whitelines Magazine のインタビューで「私たちは単に違うスノーボードを目撃したのではなく、日本でまったく別のシーンと文化を体験した。ターンとカービングとスノーサーフを中心とした、ヨーロッパや北米とは異なるアプローチ」と語っています(出典: Carving Out A Niche — Whitelines)。

Pencil 初登場

項目 内容
初登場 2014 年(Korua 創業ラインナップに含まれる)
モデル名の由来 「鉛筆」そのもの。尖ったノーズのシルエットが鉛筆の先端に似ていることから命名
ラインナップ内の位置 Classic Line の中核モデル。Dart(前足中心のカービング特化)に対し、より汎用性を重視した「全条件対応」の1枚
現在まで シーズンモデルなし。形状・スペックを維持したまま現行に続く

シェイプ

Pencil のシルエットは 「ポインテッドノーズ+微スワローテール」「テーパード・ディレクショナル」 の組み合わせ。鉛筆の先端のように絞り込まれたノーズが、パウダーターン時のスプレーを顔面から遠ざけ、板の先端を雪面へスムーズにエントリーさせます。テールのわずかなスワローは、遊び心のあるリリースと適切なトーションを両立させるための処理です。

Float Camber プロファイルが Korua の技術的な核心。ノーズ付近をロッカー形状とし、体の下でキャンバーに切り替わる「S 字断面」によって、パウダーでの浮力とターン中の安定した推進力を両立しています。テーパー量は 138cm で 24mm、164cm で 28mm と、ノーズとテールの幅差が大きく設定されており、エッジの切り替えが軽く、短い板に乗っているような機動性を生み出しています。

Korua Pencil(現行:Classic Line)

Korua Pencil — ポインテッドノーズと微スワローテールのディレクショナル・ホワイトトップデッキ

画像:Korua Pencil(現行 Classic Line)
出典:Korua Shapes 公式(koruashapes.com)
※ ミニマルなホワイトトップデッキ。ポインテッドノーズ(上)と微スワローテール(下)がシルエットで確認できる

ベースとなる素材構成はシンプル:ポプラライトウッドコア、バイアキシャル・グラスファイバー、プレミアム・シンタードベース。過剰な素材スペックよりも「シェイプで性格を作る」という Korua の姿勢が反映されています。また Korua はサステナビリティを重視し、カラーウェイも毎年大幅には変えない方針をとっています。

スペック

サイズ 有効エッジ ランニング長 ノーズ幅 ウエスト幅 テール幅 サイドカット半径 セットバック テーパー
138cm 980mm 840mm 280mm 240mm 256mm 7.8m 35mm 24mm
147cm 1,060mm 920mm 298mm 252mm 272mm 7.9m 35mm 26mm
153cm 1,100mm 950mm 302mm 254mm 276mm 8.0m 35mm 27mm
159cm 1,160mm 1,030mm 311mm 260mm 284mm 8.1m 35mm 28mm
164cm 1,200mm 1,060mm 322mm 269mm 294mm 8.2m 35mm 28mm

データソース:Korua Shapes 公式 Pencil ページ。シーズンモデルなし・形状キャリーオーバーのため、この数値は発売以来ほぼ変わっていないと考えられますが、1枚1枚手仕上げの工程があり、個体差が生じる場合があります(出典: Korua FAQ)。

設計の変化メモ

  • 2014 年:Korua Shapes 創業。Pencil、Dart を含む約 6 シェイプで発足。初年度は約 15 枚
  • 2015〜現在:形状キャリーオーバー方針により大幅仕様変更なし。ベース・コア素材のマイナーアップデートのみ
  • サイズ展開:初期から 159cm 中心。現在は 138〜164cm の 5 サイズ展開

評価

  • 「Swiss Army Knife」の称号は正確:グルーマーカービング、バックカントリーのパウダーライン、斜度のある圧雪バーン――どれも平均点以上でこなす。Korua の板の中で「1枚で全部やりたい」ライダーが最初に選ぶのが Pencil
  • フレックスは硬め:The Good Ride のレビューによるとフレックスレーティングはかなり硬い部類。バター・グラトリ向きではなく、「スピードに乗せたカービング」が主戦場
  • テーパーの恩恵:24〜28mm のテーパーが板を短く感じさせ、エッジ切り替えを軽くする。159cm を乗っても「もっと短い板みたいに動く」という評価が複数のレビューに共通する
  • パウダーでの浮き:Float Camber がノーズのロッカーで浮力を生み、セットバック 35mm がテール側への荷重を自然に誘導する。深いパウダーでも前乗りを意識せずに乗れるセッティング
  • スイッチは苦手:ディレクショナル設計のため、スイッチライディングの評価は低い(The Good Ride:1.5/5)。パークやスピンには向かない
  • 硬い雪でのエッジホールド:ウエスト 240〜269mm とサイズによって異なるが、整地カービングでのエッジグリップは十分。高速ターンでも板が暴れにくい

ライダー

  • Nicholas Wolken:Korua 共同創業者。スイス・ミュンヘン拠点のスノーボーダーで、YEARNING FOR TURNING シリーズの中心的ライダー。ターンを軸にした映像表現と、日本をはじめ世界各地での撮影旅で Korua の世界観を発信し続けている(出典: Korua 公式ライダーページ
  • Atsufumi Mizuno(水野 厚文):日本人チームライダー。YEARNING FOR TURNING Vol. 6「Carve Oddity」など複数作品に出演。日本の雪山でのカービング・スノーサーフスタイルで Korua のアイデンティティを体現するライダーとして知られる
  • Florian Krummenacher:スイス出身のチームライダー。Japan ツアーを含む複数の YEARNING FOR TURNING 作品に登場
  • Antti Autti:フィンランド出身。オリンピックのハーフパイプ代表経験を持つが、Korua のカービング哲学に共鳴して参加。YEARNING FOR TURNING Vol. 3 などに出演

YEARNING FOR TURNING フィルムシリーズ

Korua のアイデンティティは映像制作とセットで語られます。YEARNING FOR TURNING(YFT)は 2014 年の創業と同時にスタートした短編シリーズで、複雑なトリックを一切排除し「ターンとカービングだけを徹底的に美しく撮る」という方針を貫いています。

作品 内容
YFT Vol. 1(2014 年) 創業シーズンの映像。6 シェイプ発表と同時公開。Wolken と Maurer がヨーロッパのバーンでカービング
YFT Vol. 3(2016 年頃) 日本ロケ。Nicholas Wolken、Florian Krummenacher、Antti Autti が日本の雪山でカービング
YFT Vol. 6「Carve Oddity」(2017/18 年頃) 日本ロケを含む。Atsufumi Mizuno が参加。スラッシーなハーフパイプから深いパウダーまでを収録

映像の完成度と「難しいことは何もしていないのに格好いい」という評価が業界内で広まり、Pencil と Dart は Whitelines Awards を連続受賞。Korua が小規模ブランドでありながら急速に認知を高めた最大の要因の一つとされています。

スノーサーフ・カービングシーンでの存在感

  • 同類カテゴリ:Gentemstick TT(1998 年〜、日本)、Moss Snowstick 系(1982 年〜、日本)、Burton Fish(2002 年〜、米)、Jones Mind Expander といった「ターン&パウダー特化のディレクショナル」群と同じ棚に並ぶ
  • Korua の特異点:日本発ブランドではなく、日本のスノーサーフ文化から影響を受けたスイスのブランドというポジション。Gentemstick や Moss が「文化の発信地・日本」から世界へ広がっていくのに対し、Korua はヨーロッパ側から日本を参照し、「ヨーロッパでもこのスタイルが成立する」ことを映像で証明した
  • シーズンレスという革新:カラー・グラフィックを毎年変えず、シェイプをキャリーオーバーし続ける姿勢は「サステナブル」かつ「板の価値を時間で減らさない」という哲学的な主張。2014 年以降これが多くのスモールブランドに影響を与えている
  • Pencil の位置:Dart が「前足中心のカービング特化」なのに対し、Pencil は「初めて Korua を選ぶライダーへの入口」。ブランドの裾野を広げる役割を担いながら、Korua の「all about turning」思想を最も幅広い雪質・地形で体験できる1枚

参考文献

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