タイ ドイチャン

アヘン畑から高地アラビカへ、アカ族が築いた協同組合

タイ北部チェンライ県ドイチャン、アヘン代替作物政策のもとアカ族・リス族が育てたアラビカが標高900〜1,600mで62人の農家協同組合による直接輸出モデルへ成長、ダークチョコレートとキャラメル、オレンジ系シトラスが層をなす東南アジア屈指のスペシャルティ産地


産地情報

産地タイ北部チェンライ県メースワイ郡ワウィ地区 ドイチャン村(ゴールデントライアングル山地)
品種カティモール種、カトゥーラ種、ティピカ種、ブルボン種、カトゥアイ種(アラビカ混植)
標高900〜1,600m(村の中心部は標高約1,074m、コア産地は1,200〜1,400m)
味わいダークチョコレート・キャラメル・オレンジ系シトラス・フローラル・ほのかなスパイス

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:カティモール種・カトゥーラ種・ティピカ種・ブルボン種・カトゥアイ種

ドイチャンのコーヒーは1980年代前半、プミポン国王主導のアヘン代替作物政策のもとでアカ族・リス族の丘陵少数民族に導入されたアラビカ種を起源とする。耐病性に優れたカティモール種が主力品種として広く植えられる一方、カップクオリティを支えるティピカ種・ブルボン種、収量安定に貢献するカトゥーラ種・カトゥアイ種が混植される。単一農園というよりも多品種混植の小農家群という構成がドイチャンの個性を生んでいる

  • アヘン撲滅の代替作物としてアカ族・リス族へ導入
  • カティモール種中心に5品種前後が混植
  • 標高1,200〜1,400mの冷涼な高地が酸と甘みを両立
  • 協同組合による手摘み・小ロット管理が主流

タイ ドイチャンとは

ドイチャンはタイ最北端チェンライ県、ミャンマー・ラオスと国境を接する「ゴールデントライアングル」山地の一角、メースワイ郡ワウィ地区に位置する村です。村の中心部は標高約1,074m、コーヒー栽培はその周囲900〜1,600mの斜面に広がり、コアとなる産地は1,200〜1,400m帯に集中します。

タイのアラビカはチェンマイ・チェンライなど北部の高地が主産地で、南部で主体のロブスタとは栽培地域が明確に分かれます。国全体の生産規模は世界的には大きくありません(ICOの2020年産統計で約50万俵〈60kg換算〉、世界20位前後)が、近年はスペシャルティとしての評価が急伸しており、2022年の第1回タイ・カップオブエクセレンスでは最高92.82点、2025年大会では上位15ロットすべてが88点超を記録しています。タイの豆というと象の消化を利用した希少なブラックアイボリーが知られますが、ドイチャンはその対極にある「農家協同組合による正統派スペシャルティ」の代表格です。

この村がコーヒー産地として知られるようになった背景には、王室主導の「アヘン撲滅・代替作物政策」があります。1980年代前半、アカ族のリーダーピコ・サエドゥー氏のもとで約10年をかけて栽培技術が広まり、その後タイ人実業家ウィチャ・プロムヨン氏の協力で2003年に「Doi Chaang Coffee Original Company」が正式設立。2006年にはカナダの実業家ジョン・ダーチ氏との提携で国際輸出向けの新会社が生まれ、以来カナダ・北米市場を中心に評価を高めてきました。設立当初は約40エーカーだった栽培面積は、15年足らずで11,000エーカー超へと急拡大しています。

味わいの核はダークチョコレートとキャラメルの甘み、そこにオレンジ系のシトラスとフローラルな香りが重なる層の厚さ。ウォッシュド精製が生むクリーンな輪郭と、高地育ちならではの穏やかな酸味のバランスが評価の理由です。


代表的な農園・協同組合

代表的な農園

  • ドイチャン・コーヒー・オリジナル協同組合Doi Chaang Coffee Original Cooperative Limited
    🏆 USDA Organic/EU Organic/EU地理的表示(GI)認証
    📍 チェンライ県メースワイ郡ワウィ地区 ドイチャン村⛰️ 900〜1,600m

    アカ族・リス族の小農家62人を中核に設立された協同組合。2003年の会社設立当初は約40エーカーだった栽培面積が15年足らずで11,000エーカー超に拡大した。精製方法別に「HERITAGE(ウォッシュド)」「RESERVA(ハニー)」「CLASSICO(ナチュラル)」とワインのようにラインを分け、農家への利益還元率の高さでも知られる

  • ドイチャン・コーヒー・カンパニー(国際輸出部門)Doi Chaang Coffee Company Ltd.
    🏆 Fair Trade認証
    📍 チェンライ県ドイチャン(輸出拠点はカナダ)⛰️ 900〜1,600m

    2006年、カナダの実業家ジョン・ダーチ氏とドイチャン協同組合の提携で発足した国際輸出会社。生産者が利益の過半を受け取るフェアトレード型の直接輸出モデルを構築し、北米市場でドイチャンの名を広めた

  • メーチャンタイ・コミュニティ企業Mae Chan Tai Community Enterprise
    📍 チェンライ県 メーチャンタイ村(アカ族集落)⛰️ 約1,500m

    43世帯・約230人が暮らすアカ族の村で、村の全世帯がコーヒー栽培に従事する。「アカアマ・コーヒー」創業者リー・アユ・チュエパ氏の出身地としても知られ、日本を拠点とするGIAPSA(アジア自立推進総合機構)との連携で栽培品質の向上と販路開拓を進めている


精製方法

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫
2
果肉除去
3
水洗い・発酵
4
乾燥
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴

ドイチャンでは完熟したチェリーのみを手摘みし、水槽で未熟豆・過熟豆を選別したのち果肉を除去。1〜2日以上かけて発酵させ(研究文献ではpH4.3〜4.5を目安に発酵を終える方法が報告されている)、その後複数回洗浄して天日乾燥する。協同組合はこのウォッシュド系列を「HERITAGE」と呼び、ハニー系列「RESERVA」、ナチュラル系列「CLASSICO」とあわせてワインのアペラシオンのように精製方法でラインを分けている。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いタイ ドイチャンエチオピア イルガチェフェケニア AAグアテマラ アンティグアインドネシア マンデリンG1ベトナム ロブスタ

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:90〜93℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ推奨(チョコレートの甘みとシトラスの明るさを両立しやすい)
  • 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → シトラスとフローラルな香りが軽やかに広がる、14g → キャラメルとチョコレートのコクが増す)

📏 基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

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