
ウガンダ ルウェンゾリ
「月の山」に女性たちが築いたウガンダ初の地理的表示コーヒー
ウガンダ西部・ルウェンゾリ山地(月の山)標高1,200〜2,200mで栽培されるアラビカ。1999年に女性主体で発足したブコンゾ・ジョイント協同組合が牽引し、2023年にはウガンダ初の地理的表示「ルウェンゾリ マウンテンズ・オブ・ザ・ムーン」に登録された産地です
この記事の要点
- 産地はウガンダ西部ルウェンゾリ山地(カセセ・ブンディブギョ・カバロレ等5県、標高1,200〜2,200m)
- 1999年設立、女性中心の貯蓄組合から発展したブコンゾ・ジョイント協同組合が中核
- 2008年に東アフリカで初めてGALS(ジェンダー・アクション・ラーニング・システム)を導入
- 2023年、ウガンダ初の地理的表示「ルウェンゾリ マウンテンズ・オブ・ザ・ムーン」に登録
- SL14・SL28・ニャサランド種主体のフルウォッシュ精製、一部農家はナチュラルも試験生産
産地情報
| 産地 | ウガンダ西部・ルウェンゾリ山地(カセセ県/ブンディブギョ県/カバロレ県/ブニャンガボ県/ントロコ県) |
|---|---|
| 品種 | SL14・SL28・ニャサランド(Nyasaland)主体 |
| 標高 | 1,200〜2,200m(GI基準1,200m以上、主要生産帯は1,300〜2,200m) |
| 味わい | チョコレート・ベリー・レモン・プラム・キャラメル・完熟果実 |
品種情報
品種:SL14 / SL28 / ニャサランド(Nyasaland)
ウガンダのアラビカ品種構成はエルゴン山側のブギス地区とほぼ共通で、ケニア農業試験場が選抜したSL14・SL28、エチオピア起源で植民地期にマラウイ(旧ニャサランド)経由で持ち込まれたニャサランド種の3系統が混在して栽培されている(Rise and Grind Roastery / Moon Roast Coffee産地記述)
- ルウェンゾリ山地赤道直下ながら氷河を頂く「月の山(Mountains of the Moon)」として知られ、120kmにわたりコンゴ民主共和国との国境を形成する。豊富な降雨と火山性の肥沃土壌が多様な微気候を生み、標高帯ごとに異なるカップ特性をもたらす(Friends of Marlinほか産地記述)
- ブコンゾ・オウェンバ(Bukonzo Owemba)ブランドのロットは標高1,400〜2,200mで栽培され、チョコレート・ベリー・レモンにミディアムボディの酸味が重なり、国際カッピング基準で80点超を記録する(Rwenzori Farmers Cooperative Union公式)
- 西部カセセ県キシンガ地区で、キャガランイ・コーヒー社が運営するルウェンゾリ・アラビカ・スキームの下で約2,000農家がニャサランド×ブギス系品種をシェア営農方式で栽培し、ナチュラル精製で完熟果実・プラム・レッドアップルのカップを生む試験ロットも流通する(Mercanta Coffee Hunter)
- 国全体でロブスタが生産量の約80%を占め、アラビカはルウェンゾリ山とエルゴン山(ブギス)を中心とする山岳地帯に集中する(USDA FAS Uganda Coffee Annual 2024、2024年6月13日発行)
ウガンダ ルウェンゾリとは
ルウェンゾリ山地はウガンダ西部からコンゴ民主共和国国境にかけて約120kmにわたり連なる山塊で、赤道直下でありながら氷河を戴くことから「月の山(Mountains of the Moon)」と呼ばれてきました。カセセ・ブンディブギョ・カバロレ・ブニャンガボ・ントロコの5県にまたがる標高1,200〜2,200mの斜面が、ウガンダにおけるロブスタ原産国という背景の中でも数少ないアラビカの中核産地のひとつです。豊富な降雨と火山性土壌が育むカップは、チョコレートの土台にベリーやレモンの果実感が重なる、東部エルゴン山のブギスよりもやや軽やかな個性を持ちます。
この産地を語るうえで欠かせないのが、**ブコンゾ・ジョイント協同組合(Bukonzo Joint Cooperative Union)の存在です。組織の出発点はコーヒーではなく金融でした。1999年、内戦・貧困・地理的孤立で経済的に取り残されていたブコンゾ地域で、15〜30名単位の女性中心の自助貯蓄グループ11団体(当時組合員の98%が女性)が集まり、貯蓄組合として発足。その後コーヒー生産・加工へと事業を広げ、現在は組合員約3,800名のうち83%にあたる約3,150名が女性という、東アフリカでも珍しい女性主導の生産組織に成長しました。2008年には東アフリカで初めてGALS(ジェンダー・アクション・ラーニング・システム)**を導入し、家庭内の意思決定や資産管理における男女格差の是正に取り組んだ功績で、2015年にSCAA(現SCA)サステナビリティ賞を受賞しています。
さらに2023年、ウガンダ登録サービス局(URSB)がWIPO・フランス国際農業研究協力センター(CIRAD)・フランス開発庁(AFD)の支援を受け、「ルウェンゾリ マウンテンズ・オブ・ザ・ムーン(Rwenzori Mountains of the Moon)」をウガンダ初の地理的表示(GI)として登録しました。対象は前述の5県のうち標高1,200m以上で栽培されたアラビカに限られ、1万1千人超の農家が制度の恩恵を受けることを見込んだ取り組みです。GI取得は単なる名称保護にとどまらず、農家所得を20〜30%押し上げる効果も期待されています。
代表的な生産者・協同組合
代表的な農園
- ブコンゾ・ジョイント協同組合連合Bukonzo Joint Cooperative Union (BJCU)🏆 2008年に東アフリカ初のGALS(ジェンダー・アクション・ラーニング・システム)導入、2015年SCAA(現SCA)サステナビリティ賞受賞
1999年、女性中心の自助貯蓄グループ11団体(98%が女性)が発足させた協同組合。現在は組合員約3,800名のうち83%(約3,150名)が女性を占め、フェアトレード・オーガニック認証の完全ウォッシュド精製アラビカを生産する
- ルウェンゾリ農家協同組合連合Rwenzori Farmers Cooperative Union (RFCU)
ブコンゾ・オウェンバ(Owemba)ブランドを展開する協同組合連合。FLO・EU・NOPオーガニック認証を取得し、マイクロウォッシングステーションでの精製とレイズドベッド乾燥を組合員に指導する
- ルウェンゾリ・アラビカ・スキーム(キシンガ地区)Rwenzori Arabica Scheme — Kyagalanyi Coffee Ltd.
バコンゾ族の農家が数世代にわたり栽培してきた地域で、キャガランイ・コーヒー社が約2,000農家をシェア営農方式で組織。ナチュラル精製による完熟果実・プラム系のロットも輸出する
精製方法
フルウォッシュ(オーガニック・フェアトレード認証)が主流。 収穫したチェリーはマイクロウォッシングステーションでパルピング→水槽発酵→洗浄の工程を経て、屋根付きレイズドベッドで天日乾燥する。キシンガ地区など一部の生産者グループはナチュラル精製にも取り組み、完熟果実感の強いロットを試験的に輸出している。
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
フレーバーチャート
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
シナモン ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:89〜93℃
- 挽き目:中挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ・フレンチプレス
- 豆の量:11〜12g / 200ml(ベリーとレモンの果実感を引き出すなら中細挽きでやや短めの抽出時間を)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
参考文献・情報ソース
- Uganda Registration Services Bureau — ウガンダ初のGI「Rwenzori Mountains of the Moon」登録の公式発表
- Rwenzori Mountains of the Moon Coffee — GI公式サイト(対象県・標高基準)
- Rwenzori Farmers Cooperative Union(RFCU)公式サイト
- Food Tank — Bukonzo Joint Cooperative Challenging Gender Roles(設立史・GALS導入経緯)
- Sucafina — Bukonzo Owemba FW FTO(標高・認証・カッピング基準)
- Mercanta Coffee Hunter — Rwenzori Kisinga(キシンガ地区・ナチュラル精製・農家構成)
- USDA FAS — Uganda Coffee Annual 2024(アラビカ/ロブスタ生産比率・輸出統計、2024年6月13日発行)
- SCA Coffee Standards — Golden Cup基準(抽出比率・温度)
よくある質問
- ウガンダ ルウェンゾリのコーヒーは同じウガンダのブギスと何が違いますか?
- 両方とも標高の高いウガンダ西部・東部の山岳地帯で栽培されるアラビカですが、ブギスがエルゴン山の火山性土壌でフルボディ・ダークチョコレート系のカップになるのに対し、ルウェンゾリは氷河を頂く「月の山」の多雨環境で、チョコレートの土台にベリーやプラムの果実感が重なる、やや軽やかなカップに仕上がります
- ブコンゾ・ジョイント協同組合はどんな組織ですか?
- 1999年、内戦や貧困で経済的に孤立していたウガンダ西部ブコンゾ地域で、15〜30名単位の女性中心の貯蓄組合11グループ(当時98%が女性)が集まって発足した組織です。現在は組合員約3,800名のうち83%が女性を占め、コーヒー生産と金融教育を両輪で行っています
- 「ルウェンゾリ マウンテンズ・オブ・ザ・ムーン」というコーヒーの地理的表示(GI)とは何ですか?
- 2023年にウガンダ登録サービス局(URSB)がWIPOやフランスの支援機関(CIRAD・AFD)と共に登録した、ウガンダ初のコーヒーGIです。カセセ・ブンディブギョ・カバロレ・ブニャンガボ・ントロコの5県、標高1,200m以上で栽培されたアラビカだけが名乗れる産地呼称で、1万1千人超の農家が対象になっています
コメント
コメントを書く