バヌアトゥ タナ島
活火山の灰が育む南太平洋のオーガニック・スペシャルティ
南太平洋バヌアトゥ諸島のタナ島。活火山ヤスール山の火山灰が堆積した土地で1852年から育まれてきたアラビカ種が、1,000人超の小規模農家とINIKコープの連携によりフェアトレード・オーガニック認証つきのスペシャルティコーヒーとして世界市場へ届けられる
産地情報
| 産地 | バヌアトゥ共和国 タナ島(Tanna Island, Vanuatu) |
|---|---|
| 品種 | ティピカ・ブルボン・カティモール |
| 標高 | 300〜800m(タナ島高原部) |
| 味わい | チョコレート・ナッツ・トロピカルフルーツ・スムーズな余韻・苦味少なめ |
品種情報
品種:ティピカ(Typica)・ブルボン(Bourbon)・カティモール(Catimor)
1852年にタナ島南部のポート・レゾリューションへ持ち込まれたジャマイカ産ティピカとレユニオン島産ブルボンを起源とする。この2品種は活火山ヤスール山が堆積させた鉱物豊富な火山性土壌で1世紀以上かけて土地に適応し、低苦味・フルボディのタナ島固有のカップを形成した。近年はキャナミール耐性に優れた半矮性ハイブリッドのカティモールも導入され、安定生産に貢献している
- 1852年に南太平洋で最初期のアラビカ導入地のひとつとなる
- 活火山ヤスール山の火山灰土壌が豊富なミネラルを供給
- ティピカ・ブルボンの1世紀以上の土着化で独自のフレーバーを獲得
- 農薬・化学肥料不使用の100%オーガニック栽培が慣行
バヌアトゥ タナ島とは
バヌアトゥ共和国は南太平洋に弧状に連なる約80の島々から構成され、オーストラリア北東約1,800kmに位置する。主要なコーヒー産地はタナ島(Tanna Island)のほか、エスピリトゥ・サント島(Espiritu Santo)とマレクラ島(Malekula)にも広がるが、生産量・知名度ともにタナ島が圧倒的に中心を担う。
タナ島南部には標高361mの活火山ヤスール山(Mt. Yasur)がそびえ、絶えず噴出する火山灰がタナ高原の土壌に堆積し続けている。この火山性腐植土は水はけがよく鉱物・有機物が豊富で、年間降水量約2,500mm・平均気温**18℃**の安定した熱帯性気候と相まって、アラビカ種の栽培に理想的な環境を作り出している。
1852年から始まる栽培史
バヌアトゥへのコーヒー導入は1852年と、太平洋地域でも最も早い部類に属する。宣教師によってタナ島南部のポート・レゾリューション(Port Resolution)に植えられた最初の苗木は、ジャマイカ産のアラビカ・ティピカとレユニオン島産のブルボンだった。その後フランス植民地政府(ニュー・ヘブリディーズ時代)が19世紀末〜20世紀初頭にかけて商業生産を推進し、1980年代には**タナ・コーヒー・ディベロップメント・カンパニー(TCDC)**が設立されて小規模農家の組織化が本格化した。
小規模農家と火山土壌の有機農法
現在タナ島では1,000人超の小規模農家がコーヒーを生産しており、その家族を含めた約5,000人のカナカ系先住民(タナ島人口の約15%)の生計を支える基幹産業となっている。各農家の栽培規模は1〜4ヘクタールの小区画で、農薬も化学肥料も一切使用しない慣行が伝統的に維持されている。収穫期(5月〜9月)になると各地域のコミュニティが集まり、手摘みで一斉に収穫する「祭りのような」収穫文化がタナ島の特徴でもある。
年間生産量は約800トン、そのうち約600トンが輸出向けとなり、カッピングスコアは83.5点(スペシャルティグレード)に達する。オーガニック・パシフィカ認証・フェアトレード認証・レインフォレスト・アライアンス認証を取得しており、2018年には Fine Food Show South でブロンズメダルを受賞している。
代表的な生産者・農園
代表的な農園
- タナ・コーヒー・ディベロップメント・カンパニー Tanna Coffee Development Company (TCDC)
1984年設立のタナ島コーヒー産業の中核組織。タナ島の全小規模農家が生産したドライパーチメント(乾燥豆)を全量買取保証する仕組みを構築し、1,000人超の農家・約5,000人の生計を支える。オーガニック・フェアトレード認証の取得・更新を一元管理し、国際市場への窓口も担う
- INIKコープ INIK Co-operative
小規模農家から集荷したコーヒーチェリーをセミウォッシュド精製する協同組合型の加工ステーション。チェリーを収穫当日に処理し、自然発酵→洗浄→スクリーニングの工程を経て含水率11.5%まで天日乾燥する。農家がグリーンビーン(生豆)の売却価格に直接関与できる仕組みが特徴
- ナンバワン・コーヒー Nambawan Coffee
ビスラマ語で「ナンバーワン」を意味するブランド名のスペシャルティロースター。タナ島産生豆を現地加工・焙煎して直接輸出する付加価値モデルを採用し、オーストラリア・ニュージーランド向けに高品質なシングルオリジンとして提供する
精製方法
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
タナ島ではINIKコープが管理する**セミウォッシュド(半水洗式)が標準工程となっている。収穫当日にチェリーを集め、パルパー(果肉除去機)で果皮・果肉を取り除いた後、自然発酵で粘液質(ミューシレージ)を分解する。発酵後は水洗いしてスクリーニング(サイズ選別)を行い、アフリカンベッドで含水率11.5%**になるまで天日乾燥させる。農薬・化学薬品を一切使わない有機農法と、発酵・乾燥の丁寧な管理が、チョコレートとナッツの豊かな甘みとクリーンなカップを生み出す核心にある。
フレーバーチャート
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃(中煎り・豊かなアロマを引き出すには高め設定)
- 挽き目:中挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ/フレンチプレス(フルボディの質感を活かすにはフレンチプレスが特に合う)
- 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → ナッツとチョコの繊細な甘みが前に出る、14g → ボディと余韻がより厚く)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
参考文献・情報ソース
- Tanna Coffee — About Us
- Espresso Coffee Guide — Vanuatu Coffee Beans
- Vanuatu Tourism Office — Tanna Coffee
- Tasty Coffee Tales — Vanuatuan Coffee: Volcanic Richness in Every Cup
- Witham's Coffee — Buy Vanuatu Coffee Online – Tanna Island – Organic
- Far and Away Adventures — Coffee Plantations in Vanuatu
- SCA Coffee Standards
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