
エクアドル サモラ・チンチペ
アンデスとアマゾンが接する南の辺境、Chitoコミュニティが磨く清澄なウォッシュド
エクアドル最南東部サモラ・チンチペ県は、アンデス高地とアマゾン熱帯雨林が接する標高900〜1,900mの辺境産地です Chitoコミュニティなど小農家連合が48時間発酵のウォッシュド精製を磨き上げ、ライム・キャラメル・チョコレートの明るいカップを作ります
この記事の要点
- 産地はエクアドル最南東部サモラ・チンチペ県、アンデス東斜面とアマゾン熱帯雨林が接する標高900〜1,900mの一帯
- 隣国ペルーの[サンマルティン州](/blog/peru-san-martin/)と山を挟んで隣接し、同じアンデス-アマゾン移行帯のテロワールを共有
- Chitoコミュニティなど小規模農家連合が48時間の水中発酵とビニールハウス高床乾燥のウォッシュド精製を標準化
- カトゥーラ・サルチモール・SL28・カティモール・カスティーリョなど複数品種を混植するブレンド仕立てが主流
- ライム・キャラメル・チョコレートの甘さとブライトな酸のバランスが特徴で、国際バイヤーが直接買い付けるダイレクトトレード比率が高い
産地情報
| 産地 | エクアドル・サモラ・チンチペ県(アンデス東斜面〜アマゾン移行帯) |
|---|---|
| 品種 | カトゥーラ/サルチモール/SL28/カティモール/カスティーリョの混植ブレンド |
| 標高 | 約900〜1,900m(Chitoコミュニティ等の主力ロットは1,600〜1,800m) |
| 味わい | ライムのブライトな酸・キャラメル・チョコレート、クリーンで甘い後味 |
品種情報
品種:カトゥーラ(Caturra)/サルチモール(Sarchimor)/SL28 混植ブレンド
サモラ・チンチペの多くの小規模農家は単一品種ではなく、カトゥーラ・サルチモール・SL28・カティモール・カスティーリョ(コロンビア原産のさび病耐性品種)を同じ区画に混植する これは大規模投資が難しい零細農家が病害リスクを分散させながら安定した収量を確保するための伝統的な栽培形態で、精製時にロットとしてまとめて仕上げることでカップの複雑さを生む
- 単一品種でなく複数品種の混植ブレンドが主流
- 零細農家が病害リスク分散のため多品種を同一区画で栽培
- カスティーリョコロンビア原産のさび病耐性品種として近年導入が拡大
- 精製時にロットとしてまとめることでカップに複雑さが生まれる
エクアドル サモラ・チンチペコーヒーとは
サモラ・チンチペ(Zamora Chinchipe)は、エクアドル最南東部に位置する県で、ロハ県の東に隣接し、南と東は国境を越えてペルー・アマゾナス州やサンマルティン州と接します。アンデス山脈東斜面が広大なアマゾン盆地へと落ち込む「アンデス-アマゾン移行帯」に位置し、標高は低地の約900mから高地の約1,900mまで幅があります。この地形が乾季・雨季の境目をあいまいにし、年間を通じて湿潤な気候をもたらします。
エクアドルのコーヒー史は1820年代に遡りますが、南部のロハ県とサモラ・チンチペ県は北部ピチンチャ県の大規模農園型生産とは対照的に、隣国コロンビアやペルーの山岳部と同じく遠隔地の小規模家族経営が中心の産地として発展してきました。国全体のコーヒー生産量は約5,580トン(2023年、Statista)と小規模で、その大半はインスタントコーヒー向けロブスタ加工品です。アラビカスペシャルティの生産はごく限られており、サモラ・チンチペのロットは希少性の高さから欧米の専門バイヤーが直接買い付けるダイレクトトレードの対象になっています。
代表的な産地・生産者
代表的な農園
- ChitoコミュニティChito Community, Zamora Chinchipe
ルベン・クニア、ホセ・ヒメネス、パブロ・ゲレロ、メラニア・ガルシアら7名の主要生産者がロット全体の96%を生産するファームゲート方式のコミュニティロット サルチモール・カトゥーラ・SL28・カティモール・カスティーリョ・コロンビア種の混植ブレンドを、厳格なチェリー選別・収穫当日の除皮・48時間の水中発酵・ビニールハウス内高床乾燥という精密な工程で仕上げる
- Cosmel Merino生産者組合Cosmel Merino Producer Group, Zamora Chinchipe
約40名の生産者が参加する組合で、在来アラビカ品種のウォッシュド精製を手がける グリーンアップル系のブライトな酸とアプリコットジャム・キウイを思わせる風味が専門ロースターの間で評価されている
サモラ・チンチペのコーヒーはロハ県のようにCup of Excellenceで表彰歴を重ねる段階にはまだ達していませんが、Royal Coffee・Vollers・Burman Coffee・Café ImportsといったAmerican・欧州の専門グリーンコーヒー商社が個別にコミュニティロットを買い付けており、生産量の小ささに反して国際スペシャルティ市場での認知は着実に広がっています。
精製方法
サモラ・チンチペのロットは大半がフルウォッシュドで、収穫当日にチェリーを選別・除皮したのち水中で発酵させます。発酵時間はロットにより差がありますが、Chitoコミュニティの場合は約48時間の水中発酵ののち水洗し、雨の多い気候に対応するためビニールハウス内の高床(アフリカンベッド式)で乾燥させます。この工程管理の丁寧さが、湿潤な気候下でもクリーンでブライトなカップを実現する鍵になっています。精製方法ごとの工程と味わいの違いは精製方法ガイドで体系的に整理しています。
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
シナモン ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:89〜93℃
- 挽き目:中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ/エアロプレス(ライムの酸とキャラメルの甘さを両立させやすい)
- 豆の量:11〜13g / 200ml(11g → ライムの酸とクリーンさが際立つ、13g → キャラメル・チョコレートの甘みに厚みが出る)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(浅煎りはやや高め)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
参考文献・情報ソース
- Royal Coffee — Ecuador Coffee Export Review: Loja, Zamora Chinchipe & Pichincha
- Royal Coffee — Ecuador Farmgate Zamora Chinchipe Chito Community
- Press Coffee Roasters — Ecuador Zamora Coffee
- Café Imports — Ecuador Growing Regions
- Wikipedia — Coffee production in Ecuador
- Statista — Ecuador coffee production volume 2014–2024
- Daily Coffee News — Inaugural Cup of Excellence a Historic Occasion for Ecuadorian Coffee (2021)
よくある質問
- サモラ・チンチペと隣県ロハの違いは?
- [ロハ県](/blog/ecuador-loja/)はアンデス高地の乾燥した気候でティピカ・メホラドやシドラなど固有品種が際立つのに対し、サモラ・チンチペはアマゾン熱帯雨林に接する湿潤な気候で、カトゥーラ・サルチモール・SL28など複数品種を混植したブレンドロットが中心です どちらもエクアドル南部の高品質産地として並び称されます
- エクアドル産コーヒーはなぜ流通量が少ないのですか?
- エクアドルの国全体のコーヒー生産量は約5,580トン(2023年、Statista)と小規模で、その大半はインスタントコーヒー向けロブスタ加工品です アラビカスペシャルティは南部の限られた小規模農家連合が生産しており、Chitoコミュニティのような直接取引ロットが希少価値の源になっています
- サモラ・チンチペコーヒーに合う淹れ方は?
- ペーパードリップでやや低めの湯温を使うと、ライムのブライトな酸とキャラメルの甘さのバランスが引き立ちます 浅煎り〜中煎りでフルーティーな酸を残す焙煎が向いています
コーヒーをもっと知る
クリーンな酸味が特徴のウォッシュド。ナチュラル系のフルーティーさと、あなたはどちらがお好みですか?
産地の映像はYouTube Shorts、書き手の考えはnoteでも発信しています
コメント
コメントを書く