ベネズエラ メリダ州/タチラ州

19世紀の輸出大国から静かな復興へ——アンデスが育む甘みとクリーンネス

かつて世界第2位のコーヒー輸出国だったベネズエラ。メリダ州・タチラ州のアンデス高地では標高1,200〜2,000m以上でティピカ・ブルボンを中心としたアラビカが育つ。石油依存と政治経済混乱で衰退した後、2020年代にスペシャルティグレード「ラバド・フィノ」を軸に輸出が急回復している


産地情報

産地 ベネズエラ・メリダ州/タチラ州(アンデス西部高地)
品種 ティピカ種・ブルボン種・カトゥーラ種・ムンドノーボ種
標高 1,200〜2,000m以上
味わい ミルクチョコレート・クレメンタイン・ナッツ・穏やかな甘みとクリーンな後味

品種情報

アラビカ種 Coffea arabica 最高品質

品種:ティピカ(Typica)/ブルボン(Bourbon)

メリダ州・タチラ州のアンデス高地では、18〜19世紀にスペイン植民地時代に持ち込まれたティピカとブルボンが今も主力品種として栽培される。ティピカはアラビカ最古の品種系統のひとつで、高標高では生長が遅い分だけ豆が凝縮し、繊細な甘みとクリーンネスが際立つ。ブルボンはティピカから分岐した古来品種で、甘みとコクのバランスが良い。タチラ州のコーヒーはコロンビアとの国境に近く、風味もコロンビア産と類似する傾向がある。メリダ州産は独自の軽い甘みとデリケートな風味で知られ、地元ではグアヨヨ(Guayoyo)と呼ばれる薄めの伝統的な淹れ方でも親しまれてきた

  • ティピカ・ブルボンが高地で栽培される古来品種中心
  • 標高1,200〜2,000m以上のアンデス西部山麓
  • 最高品質グレードは「ラバド・フィノ(Lavado Fino)」ウォッシュド
  • タチラ産はコロンビアコーヒーと風味が近く、メリダ産はより甘みが繊細

ベネズエラ・アンデスコーヒーとは

ベネズエラ のコーヒー栽培はアンデス山脈の北部突端、コロンビアとの国境に近い西部高地に集中している。なかでも メリダ州(Mérida)タチラ州(Táchira) はアラビカ高品質栽培の中心地で、標高 1,200〜2,000m以上 の斜面にティピカ・ブルボン・カトゥーラが植えられている。

ベネズエラのコーヒー史は輝かしい過去と劇的な衰退、そして静かな復興という三段階で描かれる。

黎明期と最盛期(18〜19世紀)

コーヒー栽培はタチラ州に18世紀に導入されたとされる。1791年のハイチ革命で当時の最大生産地サン=ドマングの農園が壊滅したことを受け、ベネズエラのアンデス産地が世界市場で急速に存在感を高めた。19世紀中頃から後半にかけてベネズエラは 世界第2位のコーヒー輸出国(ブラジルに次ぐ) に成長し、1919年には年間生産量が 8万2,000トン超 に達した。輸出港マラカイボから「マラカイボコーヒー」として欧州・北米市場に送り出された豆は、その名を世界に轟かせた。

衰退(20世紀)

1920年代以降、マラカイボ湖底の石油開発が本格化すると国家の重心が一気に石油産業へシフトした。農業への投資は後退し、劣悪な農業慣行による土壌侵食も重なってコーヒー生産は長期的に低迷した。2003年以降の政府による価格統制はさらに生産意欲を削ぎ、2010年代にはベネズエラは世界生産シェア 1%未満 まで落ち込んだ。国内消費を賄うためにブラジルやニカラグアから約半分を輸入する状況にまで達した。

復興の兆し(2020年代)

それでも、アンデス高地の農家が守り続けた古樹ティピカ・ブルボンを活かしたスペシャルティ路線への転換が静かに進んでいる。2023年のコーヒー生産は約 31万袋 と世界26位にとどまるが、2025年上半期の輸出量は前年同期比約500%増 との報告があり、スペシャルティグレード「ラバド・フィノ(Lavado Fino:精選ウォッシュド)」を軸に北米・欧州市場での再評価が始まっている。


代表的な産地・生産者

代表的な農園

  • メリダ州アンデス高地農家 Mérida Andean Highland Smallholders
    📍 ベネズエラ・メリダ州(アンデス西部) ⛰️ 1,400〜2,000m以上

    コルディジェラ・デ・メリダ(ベネズエラアンデス山脈)の斜面に点在する家族農家が主体。ティピカ・ブルボンを中心にウォッシュド精製で仕上げる「ラバド・フィノ」グレードがスペシャルティ市場で評価される。メリダ州産は他の南米産と比べて軽く甘い風味が特徴で、繊細なクレメンタインのような柑橘感を持つ

  • タチラ州コロンビア国境地帯農家 Táchira Andean Border Smallholders
    📍 ベネズエラ・タチラ州(コロンビア国境) ⛰️ 1,200〜1,800m

    18世紀にコーヒー栽培が最初に根付いた州。コロンビアのクンディナマルカ・ノルテ・デ・サンタンデールに隣接し、品種・精製・風味の傾向がコロンビア産と近い。かつては「ククタコーヒー」としてコロンビア経由でマラカイボ港へ集積し輸出された歴史を持つ


精製方法

ウォッシュドが主流。 高品質グレード「ラバド・フィノ(Lavado Fino)」はベネズエラコーヒーの最高格付けで、チェリーを果肉除去後に発酵・水洗いし、天日乾燥で丁寧に仕上げる。このプロセスがメリダ産のクリーンネスと繊細な甘みを引き出す核心にある。

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫
2
果肉除去
3
水洗い・発酵
4
乾燥
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味 苦味 甘み コク 香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎 深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味 酸味 コク 軽い ベネズエラ メリダ エチオピア イルガチェフェ インドネシア マンデリンG1 ベトナム ロブスタ タンザニア キリマンジャロ ブラジル サントスNo.2

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ(甘みとクリーンネスを最大限に引き出す)
  • 豆の量:11〜13g / 200ml(11g → クレメンタインの柑橘感と軽やかな甘みが際立つ、13g → ミルクチョコレートとナッツの厚みが増す)

基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

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