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Jones Flagship

2010-11シーズン創業ラインの旗艦――Jeremy Jones が自分のために設計したビッグマウンテン・フリーライドの基準器

Jones SnowboardsビッグマウンテンフリーライドJeremy Jones

Jones Snowboards の創業期モデル「Flagship」の解説――2009年に Jeremy Jones が Rossignol との19年契約を終えて立ち上げ、2010-11シーズンに Mountain Twin/Hovercraft/Solution と並ぶ初年度ラインの旗艦として登場。アーリーライズ+キャンバー+Magne-Traction のディレクショナルで、急斜面の変化する雪を高速で抜けるための一枚として15年以上ブランドの基準であり続けている


「Flagship」は Jones Snowboards のフリーライド/ビッグマウンテン旗艦。ブランド創業者 Jeremy Jones(ジェレミー・ジョーンズ)が自分のライディングのために設計した一枚で、2010-11シーズンの初年度ラインから現行まで、長さ・幅・サイドカットを年ごとに調整しながらラインの中心に居続ける、ブランドの基準器です。モデル名そのものが「旗艦」を意味し、Jones というブランドが何を目指すのかを最初に示した板でもあります。

初登場:2010-11シーズン

項目内容
初登場シーズン2010-11(Jones Snowboards 初年度ライン)
ブランド創業2009年(Jeremy Jones が立ち上げ、製品は2010-11から)
初年度ラインナップFlagship/Mountain Twin/Hovercraft/Solution(スプリットボード)
立ち位置フリーライド/ビッグマウンテンの旗艦。Jones の主軸モデル
製造スイス・Nidecker(ニデッカー)との協業で生産開始
設計者Jeremy Jones 本人。急斜面・変化する雪・スピードを前提に自分用の基準として設計

Jeremy Jones は2009年、19年続いた Rossignol とのスポンサー契約を終えて自身のブランド Jones Snowboards を設立しました。最初のボードは2010-11シーズンに登場し、Flagship・Mountain Twin・Hovercraft の3本のソリッドボードと、スプリットボードの Solution が初年度ラインを構成しています。Jones は当初からスイスの老舗 Nidecker と組んで生産し、現在は Nidecker Group(Nidecker/Flow/Jones/YES./Now を擁する)の一員です(出典: Jones Snowboards — WikipediaJeremy Jones leaves Rossignol to start Jones Snowboards — Snowboard Review)。

設計者 Jeremy Jones

Flagship を語るにはまず設計者の背景が要ります。Jeremy Jones はマサチューセッツ州ケープコッドの小さな丘でスノーボードを始め、後にビッグマウンテン・フリーライドの第一人者となったライダーです。Big Mountain Rider of the Year を10回受賞し、ヘリやリフトに頼らず自分の足で山に入る「ヒューマンパワード」な滑りを牽引しました。

  • Deeper(2010):Teton Gravity Research(TGR)と組んだスプリットボード三部作の第1作。ヘリを使わず歩いて未踏ラインへ向かうスタイルを世に広めた
  • Further(2012):第2作。地球上の最も遠い山脈へ。Jones はこの活動で2013年の National Geographic Adventurer of the Year に選出
  • Higher(2013):完結編。ケープコッドの丘からヒマラヤの急峰まで、彼の滑走人生をたどる構成
  • Protect Our Winters(POW):気候変動から雪を守る活動団体を設立。2013年にはオバマ大統領の Champions of Change に選ばれている

Flagship は、こうした「自分の足で急斜面に入り、誰も滑っていないラインを高速で抜ける」ライダー本人が、自分用の道具として設計した板です。市場調査から生まれた製品ではなく、使い手の必要から逆算された一枚という出自が、性格をそのまま決めています。

シェイプ

初代 Flagship の核は 「アーリーライズ・ノーズ&テール」「足元キャンバー」「Magne-Traction(波状エッジ)」「ディレクショナル」 の組み合わせ。当時まだ珍しかったアーリーライズ(接雪点の手前からノーズ・テールを早めに持ち上げる形状)を採り入れ、パウダーでのノーズ落ちと、クリフ着地での「つんのめり」を抑えたのが大きな特徴でした。

Jones Flagship(現行・代表年式)

Jones Flagship のトップデッキ:ウッドグレイン基調に Jones の山型アイコンとセンターのスパイングラフィック

画像:Jones Flagship(現行年式)トップデッキ
出典:Jones Snowboards 公式
※ 2010-11シーズン初代の入手可能な板単体画像が限られるため、輪郭・グラフィックの系譜を保つ現行年式を代表として掲載

チームライダーの Ryland Bell は、このアーリーライズについて「パウダーでハンドルを乗り越える(前のめりに転ぶ)ことや、クリフを踏み切るときの不安定さがかなり減る位置に乗せてくれる」と語っています。スパイン(細い尾根)をまたいで滑るときの引っかかりを減らす狙いも、当初の設計意図のひとつでした。

スペック

初代(2010-11)の Flagship は、サイズ 158/161/164 にワイドの 163W/168W を加えた 5サイズ、フレックスは中硬の 6 という構成でした。下表は初代の確認可能な値と、形状の系譜を引き継ぐ現行年式の代表値を並べたものです。

項目初代 Flagship(2010-11)現行 Flagship(2025-26)
サイズ展開158/161/164/163W/168W151/154/156W/158/159W/161/162W/164/165W/167/169W/172
フレックス6/10(中〜やや硬)4/5(ミディアム〜スティッフ)
キャンバー形状足元キャンバー+アーリーライズ・ノーズ&テールハイブリッドキャンバー(Directional Camber)
エッジMagne-Traction(波状エッジ)Mellow Magne-Traction(控えめな波状)
シェイプディレクショナルディレクショナル(テーパー)
ノーズ/テール補助アーリーライズ(スプーンノーズ的形状)Spoon Tech(ノーズ・テールの面取り)
サイドカット不明7.3〜9.5m(サイズ別)
テーパー不明12〜14mm(サイズ別)
セットバック不明20mm(全サイズ共通)
板重量不明2.7〜3.6kg(サイズ別)
テレイン評価オンピスト 7/10・フリーライド 10/10・パーク 3/10
製造NideckerSWS 系(年式で変遷)

データソース:Jones The Flagship Snowboard 2010/11 Review — WhitelinesJones Flagship Snowboard Review — The Good Ride2010-11当時の全寸法を直接確認できる一次カタログは入手できなかったため、初代列はサイズ・フレックス・形状概念に限定し、寸法詳細は現行年式の代表値で補っています。

サイズチャート(2025-26)

サイズ実効エッジノーズ幅テール幅ウエスト幅テーパーサイドカット基準スタンスセットバック推奨体重板重量
1511,118mm290mm276mm243mm14mm7.3m540mm20mm54〜77kg2.7kg
1541,142mm292mm278mm246mm14mm7.9m560mm20mm54〜77kg2.8kg
156W1,156mm306mm292mm261mm13mm8.3m600mm20mm59〜82kg3.0kg
1581,176mm294mm281mm249mm13mm8.5m600mm20mm59〜82kg2.9kg
159W1,180mm307mm295mm263mm13mm8.7m600mm20mm64〜86kg3.1kg
1611,200mm296mm283mm252mm12mm9.1m600mm20mm64〜86kg3.1kg
162W1,210mm307mm294mm263mm12mm9.3m600mm20mm73〜95kg3.3kg
1641,226mm299mm286mm254mm12mm9.3m600mm20mm73〜95kg3.2kg
165W1,234mm311mm298mm266mm12mm9.4m600mm20mm73〜95kg3.3kg
1671,246mm305mm292mm259mm13mm9.4m600mm20mm73〜95kg3.4kg
169W1,266mm317mm304mm270mm13mm9.5m620mm20mm77kg〜3.6kg
1721,288mm311mm298mm263mm13mm9.5m620mm20mm77kg〜3.6kg

W = ワイドモデル。セットバック全サイズ共通20mm。テーパーはサイズにより12〜14mm。データソース:Jones Flagship — Jones Snowboards 公式Jones Flagship Size Chart — Melbourne Snowboard Centre

年代を通じての変化メモ

  • 2010-11:初年度ラインで登場。Nidecker 製造、アーリーライズ+キャンバー+Magne-Traction の重く硬めのフリーライドボード
  • 2013:製造を Nidecker から GST へ移行。軽量化とフレックスのマイルド化、ビルド品質の向上
  • 2017-19:SWS 製造へ。Spoon Tech(ノーズ・テールの3D面取り)を導入し、やや扱いやすい性格に
  • 2020(10周年):テーパーを大きく増やし(従来比で約12.5mmへ)、よりディレクショナルで荒れた雪に強い設計へ刷新。10th Anniversary 版も展開
  • 2021-23:セットバック・インサートを追加し、パウダーでの浮力調整幅を拡大
  • 現行(24-26):トップシートを硬めにしてダンピング(雪面の衝撃吸収)を強化。ポップ(弾き)は維持

評価

  • 急斜面・高速・変化する雪のための板:整地で速く曲がるためではなく、岩や風の影響で荒れた急斜面を、スピードを保ったまま安定して抜けるための設計。Jeremy Jones は「ラインの底で、思わずこの板に礼を言いたくなる」と表現している
  • アーリーライズ+足元キャンバーのバランス:ノーズ・テールを早めに持ち上げてパウダーでの浮きと取り回しを稼ぎつつ、足元のキャンバーでエッジグリップと反発を残す。整地でも破綻しない汎用性を持つ
  • Magne-Traction の効き:波状エッジが硬い雪面でのグリップを補助。初代はしっかり効くタイプで、後年は「Mellow(控えめ)」方向に調整され、引っかかり感を減らしている
  • 重さと硬さ:初代〜2016年頃は「昔ながらのフリーライドボードのように重く硬い」と評され、出力できる乗り手向け。2013年以降の製造移行で徐々に軽く・扱いやすくなった
  • 限界:グラトリやパーク、ハーフパイプを主目的にする板ではない。あくまで山を滑り降りるための道具として選ぶ一枚。ディレクショナル形状ゆえスイッチ主体の滑りにも不向き

使用ライダー

  • Jeremy Jones(ジェレミー・ジョーンズ):ブランド創業者本人。Big Mountain Rider of the Year 10回、TGR との Deeper/Further/Higher 三部作、POW 設立者。Flagship は彼の主軸モデルであり、設計の出発点
  • Forrest Shearer(フォレスト・シアラー):Jones のロングタイムライダー。スプリットボード/ヒューマンパワード系のフリーライドで知られ、Flagship 系のソリッドボードも使用
  • Ryland Bell(ライランド・ベル):Jones チームライダー。アラスカ等のビッグライン撮影で知られ、Flagship のアーリーライズ設計の意図を語っている
  • Travis Rice(トラヴィス・ライス)ら:Jones の活動初期に関わったとされる著名ライダー。専属関係ではなく、撮影・プロジェクト単位での関与が報じられている

ビッグマウンテンシーンでの存在感

  • 同類カテゴリ:Lib Tech T.Rice Pro、Burton Custom/Flying V、Capita Mega Death、Nitro Slash、Weston Backwoods といった「フリーライド/ビッグマウンテン向けディレクショナル」群が同じ棚に並ぶ
  • Flagship の位置:この中で Jones は 「ライダー本人が自分の道具として作り、そこから生まれたブランドの旗艦」 という出自を持つ点が際立つ。マーケティングではなく使い手の必要から逆算された設計思想が、15年以上ぶれずに続いている
  • アーリーライズの普及:2010年前後、フリーライドボードはまだフルキャンバー+ロングノーズが主流だった。Flagship が打ち出した「アーリーライズ+足元キャンバー」のハイブリッドは、その後の各社フリーライドボードが追随する標準形のひとつになっていった
  • POW とブランドの一貫性:Jeremy Jones の環境活動(Protect Our Winters)と、Jones Snowboards のリサイクル素材採用などのサステナビリティ方針は同じ根から出ている。「滑る山を守る」という姿勢が、道具づくりとブランドの両方を貫いている

参考文献

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