Lib Tech Orca
Travis Rice が設計したホエールテール・ディレクショナル――ボリュームシフト思想とC2Xキャンバーが生んだオールマウンテン・パウダー戦略
Lib Tech「Orca」の解説――2018-19シーズンにデビューしたTravis Rice シグネチャーモデル。ホエールテール・テクノロジーとC2Xディレクショナルコンターを組み合わせ、従来より3〜6cm短く乗るボリュームシフト設計でパウダーの浮力と整地でのレスポンスを両立した一枚
「Orca」は Lib Tech(Mervin Manufacturing)が Travis Rice とともに設計したディレクショナル・フリーライドボード。2018-19シーズンのデビュー時は153cm単一サイズのみの展開だったが、初シーズンでショップの棚からほぼ消えるほどの反響を呼び、現行では8サイズ(138〜162cm)のラインに拡張されている。名称の由来はシャチ(Orca)――テールの「ホエールテール・テクノロジー」がその形状から着想されている。
デビュー:2018-19シーズン
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初登場 | 2018-19シーズン |
| シェイパー | Travis Rice(ジャクソンホール出身、Lib Tech との共同設計) |
| 製造 | Mervin Manufacturing(ワシントン州リドフィールド、米国内自社生産) |
| デビュー時展開 | 153cm 単一サイズのみ(ワイスト幅 267mm) |
| ネーミング | シャチ(Orca)をモチーフにしたホエールテール・テクノロジーから |
| 環境連携 | セール収益の一部を Orca Conservancy(南部居住型シャチ保護団体)に寄付 |
Lib Tech は Mike Olson と Pete Saari が1977年に創業した Mervin Manufacturing を母体とする。業界の多くが海外生産に移行した中、Mervin はアメリカ国内自社工場を維持し続けている唯一の主要メーカーのひとつ。Travis Rice は2004年からスポンサー契約を結び、以後10年以上にわたって設計・テストを重ねてきた。
ホエールテール・テクノロジーとC2Xコンター

画像:Lib Tech T. Rice Orca(25-26シーズン)
出典:Lib Tech 公式(lib-tech.com)
※ 2018-19 デビュー時から継続するホエールテール・テクノロジー採用のディレクショナル形状
Orca のシェイプを支える2つの技術的柱がある。
ひとつはホエールテール・テクノロジー。テール中央に切り込みを入れたスワロー型のテール形状で、パウダーでは深雪へ沈み込みやすくしながら、タイトな7mサイドカット半径と急角度のテールライズがターン後半の素早いリリースとオーリーのポップを生む。「このボードにグッタリした魚は存在しない、魚を食らう奴だ(this ain’t no gutless fish, it eats fish)」というTravis Rice の言葉がコンセプトを端的に表している。
もうひとつはC2Xディレクショナルコンター。両足の間に短いロッカーセクション、バックフット下に高いキャンバーセクション、フロントフット方向に緩やかで長いキャンバーセクションという非対称の複合プロファイル。フット間のロッカーがパウダーでの浮力とターン導入の軽さを担い、フット直下のキャンバーがエッジホールドとオーリーのポップを維持する。
ボリュームシフト
Orca はボリュームシフト設計を採用しており、通常より3〜6cm短いサイズを選ぶことが前提になっている。ノーズが長くワイスト幅が広いため、短くても浮力は失われず、むしろ短さがクイックなターン切り替えとトリッキーな取り回しに貢献する。
スペック
Lib Tech T. Rice Orca(25-26現行)全サイズ
| 全長 | コンタクト長 | ワイスト幅 | ノーズ幅 | テール幅 | サイドカット半径 | テーパー | セットバック |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 138cm | 100cm | 247mm | 288mm | 280mm | 6.8m | 8mm | 50mm(2“) |
| 144cm | 102cm | 255mm | 301mm | 291mm | 7.0m | 10mm | 50mm |
| 147cm | 105cm | 257mm | 303mm | 293mm | 7.0m | 10mm | 63.5mm |
| 150cm | 108cm | 265mm | 314mm | 304mm | 7.0m | 10mm | 63.5mm |
| 153cm | 110cm | 267mm | 316mm | 306mm | 7.0m | 10mm | 63.5mm |
| 156cm | 113cm | 267mm | 317mm | 306mm | 7.0m | 11mm | 63.5mm |
| 159cm | 115cm | 267mm | 319mm | 308mm | 7.0m | 11mm | 63.5mm |
| 162cm | 118cm | 269mm | 322mm | 311mm | 7.0m | 11mm | 63.5mm |
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ベント(キャンバープロファイル) | C2X ディレクショナルコンター(フット間ロッカー+フット直下キャンバー) |
| フレックス | 7/10(ミディアムスティッフ) |
| コア | HP(Horsepower)コア ―― アスペン60%+パウロウニア40% |
| 構造 | バイアックス+トライアックス・グラスファイバー+バサルトファイバー |
| ベース | HP シンタードナイフカットベース |
| エッジ | Magne-Traction(7セレーション片側) |
データソース:Lib Tech 公式(lib-tech.com/orca)、Alpine Beach(25シーズンスペックシート)。テーパー量はノーズ幅とテール幅の差から算出。
推奨フィールド
Orca のフィールド適性は広い。設計思想はパウダー特化ではなく「パウダーから整地まで使える日常の1枚」に置いている。
- パウダー/ディープスノー:50mm以上のセットバック、10mm以上のテーパー、長いノーズが組み合わさって自然なノーズアップを作る。バックフット荷重を意識しなくても浮力が得やすい設計
- ツリーラン/不整地:C2X のフット間ロッカーがターン導入を軽くし、狭い間隔での素早い切り替えに対応。7mのタイトなサイドカットがスラッシーなショートターンを引き出す
- グルーミングコース:Magne-Traction のセレーションエッジがアイシーなグルーミングでも食いつきを維持。硬いバーンでのカービングでも動じない
- フルマウンテン:ボリュームシフトの短さと広いウエストの組み合わせが「日常ドライバー」としての汎用性を担保している
Travis Rice
Travis Rice は1982年ワイオミング州生まれ。ジャクソンホール育ちで現在もジャクソン・ホール・マウンテン・リゾートを拠点とする。2001年にプロ転向、“The Art of Flight”(2011年)、“The Fourth Phase”(2016年)などの映像作品で世界規模の知名度を獲得した。Red Bull は2013年に「世界最高峰の現役スノーボーダー」に選出。Snowboarder 誌の「過去20年で最も影響力のあるスノーボーダー20人」にもランクイン。
Lib Tech との関係は2004年からのスポンサー契約に始まり、20年以上にわたる共同開発に発展。T.Rice Pro、Orca シリーズ(Travis Rice Orca / Golden Orca / Apex Orca)など複数のシグネチャーラインを展開している。2026-27シーズンには次世代モデル「Orca II」の発表も行われている。
評価
- エッジホールド:Magne-Traction の7セレーションが東海岸のアイスバーンや春のグルーミングでも機能する。ハードパックでのエッジホールドはタイトなサイドカットとの相乗効果で高評価が多い
- パウダーでの浮力:セットバックとテーパーの組み合わせが効いており、ボリュームシフトサイジングで乗れば専用パウダーボードに近い浮力感を得られるとの評価が複数のレビューで一致している
- ターンの切り替え:7mサイドカットとフット間ロッカーがクイックなターン弧を作る。ただしフラットベースでのワンフット時に感じるゆるさは、ロッカー特有の特性として受け入れた上で乗ること
- ベースの滑走性:HP シンタード採用だが滑走速度はやや平均的との評価もある。ワクシング頻度を上げると改善する
参考文献
- Lib Tech Travis Rice Orca(Lib Tech 公式 25-26)
- Lib Tech Orca 2018-2019 Snowboard Review(Whitelines)
- Lib Tech Orca 2019-2026 Snowboard Review(The Good Ride)
- Lib Tech Orca Review(Board of the World)
- Travis Rice Orca x The Orca Conservancy(Lib Tech Blog)
- Travis Rice(Wikipedia)
- Travis Rice at Jackson Hole Mountain Resort
- Lib Tech Orca Snowboard Review(Snowboarding Profiles)
- Lib Tech T. Rice Orca C2X Snowboard 2026(Tactics)
- Lib Tech Orca 2025 Specs(Alpine Beach)
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