Prior Khyber
ウィスラー発、樹林帯パウダーのために作られたディレクショナル
カナダ・ウィスラーの Prior Sports が展開するパウダー/ビッグマウンテン系ディレクショナル「Khyber」の解説――1989〜1990年に Chris Prior がノースバンクーバーの自宅ガレージで始めた手工生産ブランドの現行フラッグシップの一枚。名称の由来はウィスラー・マウンテンの深雪ツリーラン「Khyber」、太いノーズとテール側の大きなテーパーで樹林帯・急斜面での取り回しに振った設計
「Khyber」は、カナダ・ウィスラーを拠点とするハンドメイド系ブランド Prior Sports のパウダー/ビッグマウンテン向けディレクショナル。名称はウィスラー・マウンテンの名物ツリーラン「Khyber」に由来し、深雪のディープコースト・スノーで面を切る樹林帯ライディングのために設計された一枚です。
ブランドの成り立ち:1989〜1990年、ノースバンクーバーのガレージから
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業者 | Chris Prior(クリス・プライアー、バルバドス出身) |
| 創業時期 | 1989〜1990年頃、ノースバンクーバーの自宅ガレージ |
| 前歴 | ウインドサーフィン/セーリングボード製造の経験を転用 |
| 初期の柱 | フリーライドボードとアルパインレースボード |
| 転機 | カナダのアルペン選手 Mark Fawcett が顧客となりワールドカップで活躍、ブランドの知名度が向上 |
| 拡張 | 1996年にバンクーバーの大型施設へ移転しフルタイム生産化 |
| ウィスラー移転 | 1999〜2000年にウィスラーへ拠点を移し、スプリットボードをライン化 |
| スキー参入 | 2002年からスキー製造も開始 |
| 創業者の逝去 | Chris Prior は2017年10月15日に死去、事業は継続 |
複数の一次資料間で創業年の表記に「1989年」「1990年」のゆらぎがあり、本記事では幅を持たせて記載しています。Prior は現在もウィスラーの自社工房でハンドメイド生産を続ける数少ないブランドの一つで、地元コミュニティでは「Prior の板を見かけると一目置かれる」と評されるカルト的な支持基盤を持っています(出典: Backcountry Magazine, Pique Newsmagazine)。
シェイプ

画像:Prior Khyber(トップシート/ベース)
出典:Prior Sports 公式(priorsnow.com)
Khyber は 太いショベル状ノーズ・ゆったりしたサイドカット・テール側への大きなテーパーを組み合わせたディレクショナル形状。テール側のテーパー量はサイズによらず一定で、後ろ足にかかる負荷を抜いて板全体を沈めやすくする狙いがあります。キャンバーは Prior が「Hybrid(ハイブリッド)」と呼ぶプロファイルで、ノーズとテールにロッカー、足下の中央部にはトラディショナルキャンバーを2〜4mm残す構成。浮力とエッジグリップ、ターンごとの弾みを両立させる設計です(出典: priorsnow.com 製品ページ)。
コアは垂直積層のアスペン材、ベースは4001シンタードデュラサーフ、グラスファイバーはトライアクシャルEグラスまたはXCEカーボンを選択可能。サイドウォールはUHMWポリエチレンです。
スペック(現行モデル)
| サイズ (cm) | サイドカット半径 (m) | ウエスト幅 (mm) | ノーズ幅 (mm) | テール幅 (mm) | テーパー (mm) | インサートセットバック (mm) | スタンス (inch) | 推奨体重 (kg) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 150 | 7.0 | 250 | 303 | 280 | 23 | 25 | 17–23 | 35–65 |
| 153 | 7.25 | 253 | 308 | 284 | 24 | 25 | 19–25 | 40–70 |
| 156 | 7.5 | 255 | 312 | 287 | 25 | 25 | 19–25 | 45–76 |
| 160 | 8.0 | 256 | 314 | 287 | 27 | 25 | 19–25 | 55–85 |
| 165 | 8.5 | 260 | 322 | 292 | 30 | 25 | 19–25 | 65–95 |
| 170 | 9.0 | 268 | 326 | 296 | 30 | 25 | 19–25 | 80–105 |
データソース:Prior Sports 公式 Khyber 製品ページ掲載のサイズチャートより。キャンバー・コア・ベース仕様も同ページの記載に基づきます。
評価
- 樹林帯・パウダー特化:太いノーズと大きなテールテーパーの組み合わせで、深雪のツリーランや急斜面のグレードランで小回りと浮力を両立させる設計。Prior 自身が対象シーンとして「タイトな樹林帯・パウダー・グレードラン・ピローライン・クーロワール・バックカントリー」を挙げている
- ハイスピード指向のターン弧:レビューではエッジ・ツー・エッジの俊敏さよりも、高速域で弧を描き切るタイプのターンに向くと評価されている。フレックスは中程度からやや硬めで、ノーズ・テール寄りは柔らかくチャタリングを抑える
- Spearhead との比較:Prior のラインでは同社のビッグマウンテン系モデル「Spearhead」よりもセンター寄りの重心配分で、急斜面でのライン取りや自然地形からのエア導入に振った性格とされる
- スプリットボード展開:Khyber Split は Prior が扱うスプリットボードの中でも販売数が多いモデルとされ、バックカントリーユースでの支持基盤の厚さがうかがえる
バックカントリーシーンでの存在感
Khyber の名は、ウィスラー・マウンテンのオフピステエリア「Khyber(カイバー)」から取られています。ローカルの間で樹林帯パウダーの聖地として知られるゾーンの名を冠したこと自体が、この板の性格宣言になっています(出典: Freeride.com レビュー)。
Prior は大手のようなプロチームを擁するブランドではなく、Khyber の評価はウィスラーのローカルシーンとバックカントリー専門メディアが支えてきました。スプリットボード版の Khyber Split は splitboard.com や Explore Magazine が単独レビューで取り上げており、ソリッド版と同型シェイプのまま登行用途に展開できる点が、ガイドやスプリットユーザーに選ばれる理由として挙げられています。「Prior の板を見かけると一目置かれる」というローカル評(ブランド沿革の節を参照)が最も色濃く表れるのが、この Khyber 系列です。
参考文献
- Khyber — Prior Sports ULC(製品ページ・サイズチャート)
- About — Prior Sports ULC(ブランド沿革)
- ‘Enjoy the Ride’ — Chris Prior: 1965–2017 — Pique Newsmagazine
- With his passing, Chris Prior leaves behind a quarter-century snowboard legacy — Backcountry Magazine
- Prior Khyber 2022 Snowboard Review — TheGoodRide
- Prior Khyber review — Freeride.com
- Prior’s Khyber Splitboard – A Directional Powder Splitboard — splitboard.com
- Review: Prior Khyber splitboard — Explore Magazine
- Khyber Split — Prior Sports ULC
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