CAPiTA Spring Break Powder Glider

アーティスト Corey Smith の合板デッキが起点、深雪だけに振り切ったサーフ思想のディレクショナル

CAPiTASpring BreakCorey Smithパウダーボードサーフ

CAPiTA が量産する Corey Smith のプロジェクト「Spring Break」の解説――2010年にレイクタホの雪不足のなか、庭で合板を削って始まったアートプロジェクトが起点で、その最も深雪寄りのモデルが Powder Glider。幅広ノーズ・ピザスライス状の切り欠きテール・36〜38mm の大きなテーパーと Surf Rocker で、ゲレンデを波と見立てて滑るために設計されている


「Spring Break(スプリングブレイク)」は、アーティスト兼スノーボーダーの Corey Smith(コリー・スミス)が2010年に立ち上げたプロジェクト。CAPiTA が量産を手がけるサーフ思想のシリーズで、その中で最も深雪へ振り切ったディレクショナル機が「Powder Glider」です。板尾に切り込まれたピザスライス状のノッチ、幅広で長いノーズ、36〜38mm という大きなテーパー――ゲレンデをそのまま波と見立てて滑るために設計された一枚です。

ブランドの成り立ち:2010年、レイクタホの渇いた1月から

項目 内容
プロジェクト発足 2010年(Corey Smith と仲間たち)
コンセプト 「創作上の制約をゼロにした “架空のスノーボード会社” という形のアートプロジェクト」(CAPiTA 公式)
発端 レイクタホの記録的に雪の少ない1月。時間を持て余した Smith が、カリフォルニア州トラッキーの自宅の庭で合板を削り出してボードを作り始めた
量産化 2014年に CAPiTA と組んで初のフル生産コレクションを発売。2015年からオーストリアの CAPiTA 自社工場「The MotherShip」で生産
Powder Glider の位置づけ 「Corey Smith が構想し、CAPiTA が設計」。ガレージで作っていた大ぶりの合板デッキを、世界屈指の工場の技術で再現したモデル

CAPiTA 公式の年表では、2011年に最初の Spring Break 映像作品、2012年に Slush Slasher のプロトタイプを Mt.Hood でテスト、2016年に量産版 Slush Slasher を発売、2018年には Spring Break の Ultralight Displacement Snowcraft シリーズが ISPO の Product of the Year を受賞、2020〜2023年に Powder Racer/Powder Twin/Resort Twin を追加、と整理されています。Powder Glider のデッキ裏には「Shaped by Corey Smith / Tested in Tahoe, California / Established 2010」とプリントされており、モデルの出自がそのまま板に刻まれています。

シェイプ

CAPiTA Spring Break Powder Glider 2025-26モデル:左=緑グラデーションのトップデッキ(幅広ノーズ、小さく切り欠かれたテール)、中・右=黒とグリーンの2種のベースグラフィック

画像:CAPiTA Spring Break Powder Glider(2025-26モデル)
出典:CAPiTA 公式(capitasnowboarding.com)製品画像
※左=トップデッキ、中・右=ベースグラフィック2種。板尾のピザスライス状ノッチが視認できる

テーパード・ディレクショナルのシルエットに、幅広で長い「wide-framed nose」と、小さく切り欠かれた(ピザスライス状のノッチが入った)テールを組み合わせたシェイプ。ノーズ幅とテール幅の差=テーパー量は36〜38mm(サイズ別)で、Burton Fish の30mm や Gentemstick TT の2.5mm と比べても大きく、深雪でノーズが自然に上がる方向へ強く振ってあります。

プロファイルは CAPiTA が「SURF ROCKER」と呼ぶ形状で、インサート間はフラット、そこからノーズ・テールへ向けて連続的にロッカーが立ち上がります。CAPiTA はこれを現代のサーフボードのロッカーラインになぞらえて説明しています。サイドカットは複数半径をブレンドした「Surf Blended Radial」。the good ride のレビューは Powder Glider を「really directional and really tapered(かなりディレクショナルで、かなりテーパーが効いている)」「sits on top of snow like a surfboard(サーフボードのように雪面の上に乗る)」と表現しています。

スペック(2025-26モデル)

項目 154 158 162
サイズ表記(呼称) 154cm 158cm 162cm
有効エッジ 925mm 949mm 973mm
ノーズ幅 308mm 316mm 324mm
ウエスト幅 263mm 270mm 277mm
テール幅 272mm 279mm 286mm
サイドカット半径 6.7m(6,725mm) 6.9m(6,900mm) 7.1m(7,075mm)
テーパー量 36mm(ノーズ−テール) 37mm(ノーズ−テール) 38mm(ノーズ−テール)
セットバック 約20mm(0.8インチ、販売店表記) 同左 同左
基準スタンス 533mm(21.0インチ) 559mm(22.0インチ) 584mm(23.0インチ)
ベント Surf Rocker(インサート間フラット+ノーズ・テール連続ロッカー) 同左 同左
フレックス(10段階) 5(CAPiTA 表記、レビュー体感は5〜6) 同左 同左
コア Surflite 4.0 Core(バルサに替えてパウロニア+プレミアムポプラ) 同左 同左
構造 HOLYSHEET Tri/Tri グラス+Magic Bean Resin 同左 同左
ベース Powder Drive Base(焼結/押し出しハイブリッド) 同左 同左
トップシート PLT Technology(無溶剤プリント) 同左 同左
体重目安 54〜81kg 63〜90kg 72〜99kg
対応ブーツ目安(US) 6〜10 10以上 10以上

データソースは末尾の参考文献セクション参照(CAPiTA 公式製品ページのスペック表を基準に、evo/Backcountry/Absolute-Snow/the good ride でクロスチェック)。セットバックは CAPiTA 公式表に独立した列がなく、販売店表記の「約20mm(0.8インチ)」を記載しています。ただし短いテールのぶん、基準スタンスそのものが実全長の中心よりかなり後方に寄り、the good ride は162サイズで中心から約4.75インチ後ろと実測しています。

評価

  • the good ride(2019〜2026モデルを継続レビュー):パウダー 5/5、ベースの走り 4.5/5、カービング 2/5、荒れた不整地 2.5/5、スイッチ 1/5。「one of the easiest, most effortless floats(最も楽で、力のいらない浮き)」「nothing like it in deep pow(深雪では他に類を見ない)」とコメント
  • 浮力:幅広ノーズ+大きなテーパー+セットバックの合わせ技で、深雪で後ろ足を送り込まなくてもノーズが上がる。「12インチ(約30cm)以上のパウダーで、すぐ笑顔になるほど浮く」(Old Guys Rip Too)
  • 走り:Powder Drive Base(焼結/押し出しハイブリッド)で低〜中速のグライドは軽い。Surflite 4.0 Core により板サイズのわりに軽い
  • 苦手:締まった斜面ではフラットベースの直進性がフッキー(ひっかかる)で、荒れた不整地では弾かれる。グルーマーでのカービングも本領ではない
  • フレックス:CAPiTA 表記は 5/10。レビュアーの体感は5〜6/10で、コシを残しつつよくしなり、抜けのポップさがあるという評価

Corey Smith というシェイパー

Corey Smith は画家・彫刻家・写真家であり、プロスノーボーダー兼スノーボードデザイナー。CAPiTA の連載アーティストとして、過去10年の代表的なグラフィックを数多く手がけてきた人物です。合板を削るところから始まった Spring Break は、彫刻・絵画・スノーボードを横断する「機能するアートプロジェクト」として育ち、Powder Glider はその出発点にある「サーフボードを山に持ち込んでいた時代」へのオマージュを、量産技術で形にしたモデルにあたります。使用ライダーとしてはまず Smith 本人が挙がり、Spring Break は少数のフレンズライダーとともに展開されてきました。

パウダーボードシーンでの存在感

  • Spring Break のサーフ志向は、Gentemstick/Moss Snowstick/Korua Shapes/Jones Mind Expander といった「サーフ/パウダー特化ディレクショナル」群と同じ棚に並ぶ
  • そのなかで Powder Glider の立ち位置は「深雪専用」に振り切っている点が特徴。同じ Spring Break でも全天候型は Slush Slasher が担い、Powder Glider は12インチ以上のパウダーで持ち味が最大化する
  • 2018年、Spring Break の Ultralight Displacement Snowcraft シリーズが ISPO の Product of the Year を受賞し、“アートプロジェクト発” のシリーズが技術面でも評価されたことを示した
  • 北海道のツリーラン+深雪という条件では、幅広ノーズと大きなテーパーの組み合わせが効く一方、フラットベースゆえに林道やトラバースのアイスバーンでは気を使う――「波を待つ」場面を選んで持ち出す一枚

参考文献

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