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コロンビア トリマ

FARC誕生の起点とされる地が育てた、紛争後の無農薬コーヒー

コロンビア中西部トリマ県、原産地呼称の標高は1,000〜2,000m。FARC誕生の起点とされるマルケタリア(プラナダス)を抱え50年紛争の中心地だったが2016年和平後にASOPEPなど17の生産者協会が発展、カスティージョ・カトゥーラを栽培し柑橘・ダークチョコの複雑なカップを生む国内第3位の産地


産地情報

産地コロンビア中西部 トリマ県(プラナダス・リオブランコ・イバゲ周辺)
品種カスティージョ・カトゥーラ・ティピカ・ブルボン・マラカトゥーラ
標高1,000〜2,000m(原産地呼称「カフェ・デ・トリマ」の範囲)
味わいオレンジ・洋梨などのストーンフルーツ・ダークチョコレート・キャラメル・張りのある酸味当サイトの味わいの目安です。公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づき、特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:カトゥーラ(Caturra)

1915〜1918年頃、ブラジル・ミナスジェライス州でブルボン種の単一遺伝子突然変異として発見され、1937年にサンパウロ州立農学研究所(IAC)が選抜・命名した矮性品種。樹高が低く密植栽培に向き、収量性の高さから1950〜60年代にかけてコロンビア・コスタリカなど中南米全域へ急速に広がった。トリマでは生産者協会ASOPEPが手がけるウォッシュドロットの中核品種で、標高1,400〜2,100mの畑でバニラ・キャラメル・ブラックリコリスの甘みと張りのある酸味を引き出す

  • ブルボン種の単一遺伝子突然変異、矮性で密植栽培に適する
  • 1937年にブラジルIACが選抜、1950〜60年代に中南米全域へ普及
  • トリマの生産者協会ASOPEPが手がけるウォッシュドロットの中核品種
  • 標高1,400〜2,100mでバニラ・キャラメル・ブラックリコリスの甘みが際立つ

コロンビア トリマとは

トリマ(Tolima)はコロンビア中西部、首都ボゴタから西へ約200kmに位置する内陸県。西のコルディジェラ・セントラル(中央山脈)と東のコルディジェラ・オリエンタル(東山脈)に挟まれたマグダレナ川上流の谷と山岳地形が広い高地帯を作り出し、原産地呼称「カフェ・デ・トリマ」の対象地域は標高1,000〜2,000mの範囲とされる(コロンビア産業商務監督庁=SIC)。県内38市町村でコーヒーが栽培され、約61,800戸の生産家族が106,852ヘクタール(2024年、フェデラシオン・ナシオナル・デ・カフェテロス=FNCデータ)を耕作し、ウイラ・アンティオキアに次ぐコロンビア国内第3位のコーヒー生産県に位置づけられる。栽培面積の83.98%が技術転換(テクニフィカード)済み、83%がさび病耐性を持つカスティージョ等の品種で占められる。

FARCの起点とされる土地——紛争から復興へ

トリマ県南部の自治体プラナダスには、1964年に政府軍の攻撃を受けたマルケタリア農民集落があり、この攻撃がコロンビア革命軍(FARC-EP)の武装闘争の起点として語られる。ただし、コロンビア真実委員会は複数の武装グループがFARCの名のもとに統合したのは1964年末と記しており、「プラナダスで結成された」と一地点に限ることはできない。その後、1990〜2013年の間だけで230件超の紛争関連事件が記録され、1985年以降プラナダス一自治体で4,579人が犠牲者として登録された。FARC-EPは2017年の武装解除まで独自の統治体制を敷き、紛争は地域の経済活動や市場へのアクセスも損なった(トリマ県政府)。皮肉にも、紛争の時代が化学肥料や農薬をほとんど使わない土壌をそのまま残す結果となり、和平後の生産者たちがオーガニック栽培へ転換する土台になった。

和平後の生産者協会の台頭

2016年の政府とFARCの和平合意以降、プラナダスでは17の小規模生産者協会が発展した(ASOPEPの結成は和平前の2013年)。査読研究(International Journal of the Commons)は、これらの生産者協会が、それまでプラナダスの買付を握っていた協同組合カフィスール(CAFISUR)と地元の買付業者の支配を弱めたと分析している。CAFISURは、自身の2018年の事業報告で、プラナダスでの同組合の買付量が約39.7%減少したと報告している。これはCAFISURの買付量で、地域全体の販売量や輸出量の減少を示す数字ではない。2013年設立のASOPEP(プラナダス小規模生産者協会)はその代表格で、自らコーヒーを輸出し、複数の精製方法のロットを手がけている(コーヒー地域の行政計画機関RAPエヘ・カフェテロの公式カタログ)。ただし、精製から輸出までの全工程を自前で一貫運営しているかは、一次資料では確認できていない。

カップオブエクセレンスと風味の個性

2015年のコロンビア・カップオブエクセレンスでは、トリマ産のロットが上位4位のうち3席を独占する快挙を達成した。柑橘系の張りのある酸味とミディアム〜フルボディが特徴で、ロースターのレビューではオレンジ・洋梨・ピーチといったストーンフルーツ、ダークチョコレート、焼き菓子を思わせるアロマがしばしば言及される。主要品種はカスティージョ・カトゥーラ・ティピカ・ブルボン・マラカトゥーラで、近年はゲイシャやピンクブルボンなど高付加価値品種を試験栽培するマイクロロット生産者も増えている。同じコロンビア南部の産地としては、原産地呼称(DO)を持つコロンビア ウイラがピンクブルボンを軸に赤い果実の甘酸を打ち出しており、トリマの柑橘系の酸とダークチョコレートの対比が際立つ。さらに西のコロンビア カウカは高い酸とキャラメルの甘さを両立させており、同じコロンビア国内でも産地ごとの気候差がカップにはっきり表れる。


代表的な生産者・農園

代表的な農園

  • ASOPEP(プラナダス小規模生産者協会)Asociación de Productores Agropecuarios de Café Especial de Planadas (ASOPEP)
    📍 コロンビア・トリマ県 プラナダス⛰️ 1,400〜2,100m

    2013年設立、275戸の小農家が加盟する生産者協会。自らコーヒーを輸出し、複数の精製方法のロットを手がける(RAPエヘ・カフェテロ公式カタログ)。バニラ・キャラメル・ブラックリコリスの甘みと張りのある酸を特徴とするウォッシュドロットを生産。プラナダスでカフィスールなどの買付支配を弱めた生産者協会のひとつ

  • MULTICOOP(トリマ多目的協同組合)Cooperativa Multiactiva de Asociaciones Agropecuarias del Tolima (MULTICOOP)
    📍 コロンビア・トリマ県 リオブランコ⛰️ 1,450〜1,850m

    300戸を超える小農家が加盟し、各生産者が自前のマイクロミルでチェリーの収穫からウォッシュド精製・乾燥までを管理する協同組合。フェアトレードおよびオーガニック認証を取得し、オレンジブロッサムやイチゴ、ハニーやシナモンを思わせる香味のロットを輩出

  • フィンカ・エル・ハルディンFinca El Jardín
    📍 コロンビア・トリマ県 プラナダス⛰️ 約1,857m

    4代目生産者ホルヘ・エリアス・ロハス氏が営む3ヘクタールの家族農園。カトゥーラ・イエローコロンビア・ピンクブルボン・レッドブルボン・ゲイシャなど6品種を作り分け、72時間の密閉発酵を含む多段階の実験的精製で自社ブランド「ラ・ロカ・ステート」のマイクロロットを生産


精製方法

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫→
2
果肉除去→
3
水洗い・発酵→
4
乾燥→
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴

トリマではウォッシュド(水洗式)が主流の精製法で、ASOPEPやMULTICOOPなどの生産者協会が発酵槽でのミューシレージ分解とアフリカンベッドでの天日乾燥を組み合わせ、クリーンな酸味とストーンフルーツの果実感を引き出す。フィンカ・エル・ハルディンのようなマイクロロット生産者では、72時間の密閉発酵と機械乾燥・温室乾燥を多段階で組み合わせる実験的な精製も広がっており、同じウォッシュド精製の中でもロットごとに風味の幅が生まれている。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づく編集上の目安です。特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。


おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いコロンビア トリマコロンビア ウイラエチオピア イルガチェフェパナマ ボケテケニア AAブラジル セラード

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃(中煎りの甘みと果実香を引き出す温度帯)
  • 挽き目:中挽き〜中細挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ/エアロプレス(ストーンフルーツの酸を明るく引き出す)
  • 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → 柑橘の酸味主体、14g → チョコレートとボディが際立つ)

📏 基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310)の目安 55g/kg(約1:18、200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

訂正(2026-09-27): 「和平合意以降、プラナダスだけで17の小規模生産者協会が新たに設立された」と記載していましたが、出典の論文は17団体が和平後に「発展した」としており、すべてが新設ではありません(ASOPEPは和平前の2013年結成)。記述を改めました。あわせて、CAFISURについて「販売シェアが40%減少」と記載していましたが、論文が示すのは同組合を通じた販売量の40%減少で、市場シェアの数字ではなかったため改めました。さらに、この40%減少を「2017〜2018年の1年間でCAFISURを通じた販売量が40%減少し、同期間の域内生産量は702トン増加した」と記載していましたが、CAFISUR自身の2018年事業報告で確認できたのは、プラナダスでの同組合の買付量が約39.7%減ったことで、地域全体の販売・輸出の数字ではありませんでした。同報告の買付量に改め、一次資料で確認できなかった「702トン増加」は削除しました。標高を「1,200〜2,300m(主要産地は1,400〜2,200m)」と記載していましたが、コロンビア産業商務監督庁(SIC)の原産地呼称「カフェ・デ・トリマ」では1,000〜2,000mでした。原産地呼称の範囲に改めました。プラナダスを「1964年にFARCが結成された地」と記載していましたが、コロンビア真実委員会では1964年末に複数の武装グループがFARCの名のもとに統合したとされており、プラナダス(マルケタリア)は武装闘争の起点として語られる地という記述に改めました。「コーヒー産地としての国際市場アクセスも長く閉ざされてきた」は一次資料で確認できず、トリマ県政府の資料で確認できる「紛争が経済活動や市場へのアクセスを損なった」という範囲に改めました。ASOPEPを「精製・品質管理・輸送・輸出までを自前で一貫して担う県内唯一の生産者協会」と記載していましたが、RAPエヘ・カフェテロの公式カタログで確認できたのは輸出と複数の精製方法までで、全工程の一貫運営と「県内唯一」は確認できなかったため、確認できた範囲に改めました。追加の照合で、ASOPEPの加盟農園の標高を「1,400〜2,150m」としていましたが、RAPエヘ・カフェテロの公式カタログでは1,400〜2,100mで、2,150mは確認できなかったため改めました。また、CAFISURを「それまで地域を独占していた」、ASOPEPを「寡占体制を崩した」と記載していましたが、査読研究(International Journal of the Commons)が示すのは、プラナダスの生産者協会群がCAFISURと地元の買付業者の買付支配を弱めたことでした。地域と主体をこの範囲に改めました。

訂正(2026-09-28): 2026-09-27の訂正でASOPEP加盟農園の標高を1,400〜2,100mに改めましたが、品種の説明と特徴の欄に「1,400〜2,150m」が残っていたため直しました。

訂正(2026-09-30): 抽出の目安で「SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準」と記載していましたが、SCA(スペシャルティコーヒー協会)は米国のSCAAと欧州のSCAEが2017年に統合した団体で、「Golden Cup」は旧SCAAの名称のため、「SCA(スペシャルティコーヒー協会)家庭用ブリューワー認証の基準」に改めました。比率(55g/L、約1:18、200mlで11g)は変更していません。同日、この基準を示していた2017年の認証要件の文書がSCAのサイトで公開されなくなっていたため、現行の家庭用ブリューワー規格(SCA Standard 310-2021、水1kgに豆55g)の表記にそろえました。

訂正(2026-10-16): 品種の説明と生産者の欄で、ASOPEPを「県内最大級の生産者協会」「トリマ最大級の生産者協会」と記載していましたが、トリマ県内の生産者協会の規模を比べた一次資料を確認できなかったため、比較の表現を削除しました。あわせて、本文でコロンビア カウカを「火山土壌由来の高い酸とキャラメルの甘さを両立させており」と記載していましたが、火山土壌と風味の因果を示す一次資料は確認できなかったため、「火山土壌由来の」を削除しました。


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