アイスコーヒーとコールドブリューは何が違うのか

「熱湯で淹れて冷やす」か「最初から水で淹れる」かで、酸味と抗酸化活性が変わる

アイスコーヒーは熱湯で抽出してから急冷する飲み物、コールドブリューは常温〜冷水で長時間かけて抽出する飲み物です。抽出温度の違いが酸味・カフェイン量・保存性にどう影響するかを査読研究ベースで整理します


この記事の要点

  • アイスコーヒーは90〜96℃の熱湯で数分かけて抽出してから急冷、コールドブリューは常温〜冷水で12〜24時間かけて抽出する
  • Rao & Fuller(2018、Scientific Reports)の研究では、pHはホットブリュー4.85〜5.10・コールドブリュー4.96〜5.13とほぼ同等だが、滴定酸度と抗酸化活性はホットブリューの方が有意に高い
  • Fuller & Rao(2017、Scientific Reports)の研究では、粗挽き豆を使ったコールドブリューはホットブリューよりカフェイン濃度が約27%高いという結果が出ている
  • コールドブリューは豆の使用量自体がアイスコーヒーより多い(コーヒー1Lあたり粗挽き豆50〜100g程度に対し、アイスコーヒーは細挽き豆30〜60g程度)
  • 「コールドブリューの方が酸味が少ない」と体感されるのは総酸量ではなく、抽出される酸の質(プロトン化の度合い)が違うため

「アイスコーヒー」と「コールドブリュー」、どちらも冷たいコーヒーですが、作り方はまったく別物です。前者は熱湯で淹れたコーヒーを急冷したもの、後者は最初から水(または常温水)でじっくり時間をかけて淹れたものです。この抽出温度の違いが、酸味・カフェイン量・保存性にどう影響するのかを、査読研究のデータをもとに整理します。

抽出方法がそもそも違う

アイスコーヒーは、90〜96℃程度の熱湯を使い、ペーパードリップやサイフォンなど通常のホットコーヒーと同じ方法で数分かけて抽出し、氷や急冷装置で温度を下げて作ります。抽出そのものは短時間ですが、湯温が高いぶん風味成分を素早く引き出せます。

コールドブリューは、常温〜冷水を使い、粗挽きにした豆を12〜24時間かけてゆっくり浸漬(または透過)させて抽出します。低温の水は熱湯に比べて抽出効率が低いため、時間で補う仕組みです。豆の使用量もアイスコーヒーより多めで、目安としてはコーヒー1Lあたり粗挽き豆50〜100g程度(アイスコーヒーは細挽き豆30〜60g程度)とされています。

酸味の違いは「量」ではなく「質」

「コールドブリューは酸っぱくない」というイメージは広く知られていますが、これを実際に測定した査読研究があります。Thomas Jefferson大学のRao & Fuller(2018、Scientific Reports)は、ブラジル・エチオピア・コロンビア・メキシコ産の豆を使い、ホットブリューとコールドブリューのpHと滴定酸度(総酸量)を比較しました。

結果は次の通りです。

指標 ホットブリュー(アイスコーヒーの抽出方法) コールドブリュー
pH 4.85〜5.10 4.96〜5.13
滴定酸度 高い 低い
抗酸化活性 高い 低い

pH自体はほぼ同等でしたが、滴定酸度(実際に溶け出している酸の総量)と抗酸化活性はホットブリューの方が有意に高いという結果でした。論文はこの差について、熱湯抽出の方が非プロトン化状態の酸をより多く引き出す傾向があるためと考察しています。つまり「酸の量」自体はさほど変わらなくても、「抽出される酸の種類・状態」が違うために、体感的な酸味やキレの印象に差が出るというのが実態に近い理解です。酸味・苦味そのものの一般的な仕組みはコーヒーが苦くなる原因と酸っぱくなる原因は何が違うのかもあわせてご覧ください。

カフェイン量はコールドブリューの方が高くなりやすい

もう一つのRao & Fullerによる研究(Fuller & Rao, 2017、Scientific Reports)では、豆の挽き目を変えてカフェイン濃度を比較しています。粗挽き豆を使った場合、コールドブリューはホットブリューよりカフェイン濃度が約27%高いという結果が報告されました。

ただし、これは「同じ豆・同じ水量で淹れた場合の濃度」の比較です。実際に飲む1杯あたりのカフェイン量は、豆の使用量(コールドブリューは元々多め)や、濃縮タイプを水・牛乳で希釈する比率によって大きく変わります。抽出方法別のカフェイン量をより広く比較したい場合は抽出方法でコーヒーのカフェイン量はどれくらい変わるのかもあわせてご覧ください。

保存性はコールドブリューの方が高い

コールドブリューは抽出後、冷蔵で1〜2週間程度風味を保てるとされる一方、アイスコーヒーは急冷後の劣化が比較的早く、当日〜翌日中の飲みきりが推奨されることが多いです。低温抽出は酸化・劣化に関わる成分の抽出量自体が少ないため、保存に向いた性質を持つと考えられています。

まとめ

アイスコーヒーとコールドブリューの違いは、抽出温度と時間という1つの軸に集約されます。熱湯で短時間抽出するアイスコーヒーは酸味とキレが出やすく、常温〜冷水で長時間抽出するコールドブリューはまろやかでカフェインが濃くなりやすい——どちらが優れているというより、求める風味に応じて選ぶ飲み方の違いです。抽出方法全般の基礎はコーヒーの精製方法ガイド、豆選びの基本はコーヒー品種完全ガイドもあわせてご覧ください。

よくある質問

アイスコーヒーとコールドブリューはどちらが酸っぱいですか?
滴定酸度(酸の総量)で比較すると、査読研究(Rao & Fuller, 2018)ではホットブリュー(アイスコーヒーの抽出方法)の方が有意に高い値を示しています。pH自体はほぼ同じ(ホット4.85〜5.10、コールド4.96〜5.13)でも、ホットブリューの方が非プロトン化の酸を多く抽出するため、体感的な酸味・キレはアイスコーヒーの方が強く出やすいとされています
コールドブリューの方がカフェインは多いのですか?
研究(Fuller & Rao, 2017)では、粗挽き豆を使ったコールドブリューはホットブリューよりカフェイン濃度が約27%高いという結果が出ています。ただしコールドブリューは豆の使用量自体が多く、また濃縮タイプを水や牛乳で希釈して飲むことも多いため、実際に飲む1杯あたりのカフェイン量は豆の量・希釈率次第で大きく変わります
コールドブリューは常温でも作れますか?
常温(室温)でも冷蔵でも作れます。低温で抽出するほど時間はかかりますが、風味の劣化が緩やかで保存性が高い傾向があります。いずれの温度帯でも、熱湯を使わない点がアイスコーヒーとの決定的な違いです

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