
インド アラクバレー
標高900m台の丘陵で部族農家が育てる、世界最大級のバイオダイナミック農園
アンドラ・プラデシュ州アラク渓谷は2019年にGI認証「アラクバレー・アラビカ」を取得した標高900〜1,350mの産地 1999年にNGOナーンディ財団が始めた植樹プロジェクトが1万人規模の部族農家協同組合に育ち、世界最大級のバイオダイナミック認証スペシャルティ農園として輸出されている
この記事の要点
- 産地はアンドラ・プラデシュ州アルルリ・シタラマラジュ県のアラク渓谷、東ガーツ山脈の丘陵地帯
- 2019年にインド政府から「アラクバレー・アラビカ」としてGI認証を取得、認証上の標高定義は900〜1,100m
- 1999年にNGOナーンディ財団が植樹支援を開始、現在は1万人規模の部族農家が加盟する協同組合が生産を担う
- 20年間で3,000万本以上を植樹し、水消費量を10年で36分の1に削減、世界最大級のバイオダイナミック認証スペシャルティ農園と位置づけられる
- アンドラ・プラデシュ州はインド国内コーヒー生産州の第4位、州全体のアラビカ生産量は年間1.2万トン超(2024年)
産地情報
| 産地 | インド・アンドラ・プラデシュ州アルルリ・シタラマラジュ県 アラク渓谷、東ガーツ山脈の丘陵地帯 |
|---|---|
| 品種 | S.795(Sln.795)が中心、ほかセレクション9系統も一部栽培 |
| 標高 | 900〜1,350m(GI認証上の定義は900〜1,100m、ブランド独自畑は1,350mまで報告) |
| 味わい | ジャグリー(粗糖)の甘みとダークカカオ、爽やかな柑橘系の酸、まろやかなボディ |
品種情報
品種:S.795(Sln.795、Kent種とS.288種の交配で1940年代リリース)が主力品種、一部でセレクション9(Sln.9)系統も栽培
アラク渓谷のアラビカはインド国内で広く栽培されるS.795が主力で、標高700mを超える幅広い高度帯でも品質を保てる品種として選ばれてきた カルダモンや在来樹種と混作するアグロフォレストリー方式で、単一作物の畑ではなく森林の一部として栽培される点が渓谷全体の特徴
- S.795Kent種とS.288種の交配で1940年代にリリースされた高品質アラビカで、幅広い標高帯に適応する
- 在来樹種・フルーツ樹(グアバ・サポジラ等)との混植により土壌の水分保持力を高めるアグロフォレストリーが標準的な栽培方式
- ブランド「アラクコーヒー」自社ロットを85点以上のカッピングスコアを満たすスペシャルティ規格として選別している
インド アラクバレーとは
アラク渓谷は、インド南東部アンドラ・プラデシュ州アルルリ・シタラマラジュ県(旧ヴィシャーカパトナム県)に位置する東ガーツ山脈の丘陵地帯です。2019年、インド政府知的財産局(DPIIT)はクールグ・チクマガルル・ワヤナードなどと並び「アラクバレー・アラビカ・コーヒー」にGI(地理的表示)タグを付与しました。GI認証上の栽培地定義は標高900〜1,100mですが、コーヒーブランド側の資料では1,350mまでの畑も報告されています(ETV Bharat「Araku, Coorg & Wayanaad coffee varieties get GI tag」)。
この地域はアディヴァシ(先住部族)が多く暮らす地域で、コーヒー栽培は長らく仲買人を通じた低価格取引に依存していました。転機は1999年、NGOナーンディ財団が「村の収入をどう上げるか」という問いから、放置されていたコーヒーの木に着目したことに始まります。最初の100万本の植樹と、40の村・1万人の農家へのアラビカ栽培研修からスタートし、2011年までに600万本以上が植えられました(Naandi Foundation公式ブログ)。
現在この農家ネットワークは「Arakunomics」と呼ばれるモデルへと発展しています。約1万人の独立した小規模農家が協同組合として結束し、世界市場価格を上回る買取価格を保証されながら、20年間で3,000万本以上の植樹(コーヒー樹・在来樹種・果樹を含む)を実現し、水消費量は10年間で36分の1に削減されました。ブランド側は自社ロットを「世界最大級のバイオダイナミック認証スペシャルティコーヒー農園」と位置づけています(Araku Coffee公式サイト「Arakunomics」)。国全体で見ると、アンドラ・プラデシュ州はインドのコーヒー生産州で第4位、州全体のアラビカ生産量は2024年時点で年間1万2千トンを超えます(業界データ)。
代表的な農園・協同組合
代表的な農園
- ナーンディ財団支援 部族農家協同組合Naandi Foundation-supported Tribal Farmer Cooperative
1999年にナーンディ財団が植樹・栽培研修を開始 2011年までに600万本以上を植樹し、現在は「Arakunomics」モデルの下で約1万人の部族農家が加盟する協同組合として組織されている(Naandi Foundation公式)
- ギリジャン協同組合公社Girijan Cooperative Corporation (GCC)
州政府が運営する指定部族向け協同組合公社 アラク渓谷を含む部族地域産のコーヒーなど林産物・農産物の集荷・販売を担い、生産者の市場アクセスを支援する(The Federal報道)
- アラクコーヒー(ブランド)Araku Coffee / Araku Originals
カッピングスコア85点以上をスペシャルティ規格として選別し、フランス・パリで販売するブランド 世界市場価格を上回る買取保証と、20年で3,000万本の植樹実績を「Arakunomics」として掲げる(Araku Coffee公式)
精製方法
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
アラクバレーはファーメント・ウォッシュド(発酵水洗式)が主力。 ブランド資料ではS.795種のウォッシュドロットが「甘み・酸味・ボディのバランスが取れたプロファイル」と説明され、ジャグリー(粗糖)やミルクチョコレート、柑橘系の風味を引き出すとされる一方、一部ロットはウォッシュドとナチュラルをブレンドしライトミディアムのオムニロースト向けに仕立てられる(Araku Coffee公式サイト製品ページ)。
フレーバーチャート
フレーバーチャート
おすすめの焙煎度
おすすめの焙煎度
シナモン ロースト
ポジショニングマップ
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜93℃
- 挽き目:中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ
- 豆の量:12g / 200ml(浅煎り〜中浅煎りで柑橘系の酸とジャグリーの甘みを引き立てる標準量)
📏 基準のエビデンス
- 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に中間値を採用
- お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)。浅煎りはやや高めの温度でしっかり抽出する
- 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association
インドの他産地、ロブスタ優勢のインド クールグやタタコーヒー発祥のインド チクマガルルと飲み比べると、同じ国でも協同組合モデル・栽培標高・精製方法の違いがカップにはっきり表れます。
参考文献・情報ソース
- ETV Bharat — Araku, Coorg & Wayanaad coffee varieties get GI tag(2019年GI認証、標高定義900〜1,100m)
- PIB India — GI Certification for five varieties of Indian coffee(5品種のGI認証概要)
- Naandi Foundation — Araku Valley coverage(1999年開始の植樹・農家研修プロジェクト経緯)
- Araku Coffee — Arakunomics(農家数・植樹本数・水消費削減・バイオダイナミック認証)
- The Federal — Araku coffee: How Andhra Pradesh govt, tribal farmers are taking organic beans global(GCC・生産統計)
- Agriculture Institute — Popular Arabica Coffee Varieties in India(S.795の交配来歴)
- SCA Coffee Standards — Golden Cup Brewing Standard(抽出基準)
よくある質問
- アラクバレーのコーヒーはどこで買えますか?
- 「アラクコーヒー(Araku Coffee)」ブランドがフランス・パリに直営店を構えるほか、インド国内・オンラインでも自社サイトや取扱店で購入できます オーガニック・バイオダイナミック認証ロットが中心です
- GI認証と有機・バイオダイナミック認証は同じものですか?
- 別の制度です GI(地理的表示)は原産地・栽培地域を保証する制度で2019年にインド政府から認証されました 一方オーガニック・バイオダイナミック認証は栽培方法を保証する制度で、アラクコーヒーはブランド独自にこれらの認証を取得・訴求しています
- なぜ「部族農家」が主役になっているのですか?
- アラク渓谷はアディヴァシ(先住部族)が多く暮らす地域で、伝統的に仲買人に買い叩かれる立場に置かれてきました 1999年からのナーンディ財団の支援で農家自身が所有・出荷・利益配分に関わる協同組合モデルが構築され、貧困対策と結びついた産地として知られています
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