インド チクマガルル

バーバブーダンが密輸した7粒から始まったインドコーヒー発祥の地

1670年にスーフィー聖者バーバブーダンがイエメンから持ち帰った7粒の種から始まったとされるインドコーヒー発祥地チクマガルル。標高700〜1,200mのマルナード高地で栽培されるアラビカはS.795主体のウォッシュド精製で、チョコレートとキャラメルの甘み・穏やかな酸・スムーズなボディが特徴です


産地情報

産地インド・カルナータカ州チクマガルル県(マルナード地方、デカン高原西縁)
品種S.795・カウベリー(Cauvery)・セレクション9(Selection 9)
標高700〜1,200m(バーバブーダンギリ丘陵部は1,500m前後まで)
味わいミルクチョコレート・キャラメル・ドライフルーツ・穏やかな酸・スムーズなボディ

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:S.795 / カウベリー / セレクション9

カルナータカ州で主力とされるアラビカ品種はS.795(アラビカとリベリカの交配種S.288とケント種の交配、バレホンヌルのコーヒー研究所〈CCRI〉でR.L.ナラシンハスワミ氏が育成)で、耐病性と安定した風味バランスから南インド全域で最も広く栽培されている。カウベリーはカトゥーラとヒブリド・デ・ティモールの交配種(カティモール系)、セレクション9はタファリケラとヒブリド・デ・ティモールの交配で葉さび病耐性を持つ。チクマガルル県バレホンヌルにあるコーヒー研究センター(Central Coffee Research Institute)が新品種の育成・実証を担ってきた

  • S.7951940年代にマイソール州(現カルナータカ州)で育成された品種で、インド国内アラビカ栽培面積の過半を占めるとされる主力品種。チョコレートやスパイスを思わせる複雑な風味とバランスの良い酸味が持ち味で、モンスーン気候下でも安定した収量を維持しやすい
  • カウベリーブルボンの矮性突然変異種カトゥーラとヒブリド・デ・ティモールの交配種(カティモール系、1985年にポルトガルCIFCからインドへ導入)で、多収性と葉さび病耐性を兼ね備える。標高の高いエリアではブルボン系に近いクリーンな風味が出やすい
  • セレクション9(S.9)コーヒー研究所が1940年代後半から選抜を進めた葉さび病耐性品種。カルナータカ・ケーララ両州で普及が進んでおり、病害リスクの高い多雨地帯での安定生産に寄与している

インドコーヒー発祥の地、チクマガルルとは

インド共和国カルナータカ州の西部、デカン高原の西縁に広がるマルナード地方(「雨の国」の意)にチクマガルル県はあります。西ガーツ山脈の一角、標高700〜1,200m(バーバブーダンギリ丘陵部は1,500m前後まで)の丘陵地帯は年間降水量2,000mmを超える多雨地帯で、日中の霧と夜間の冷涼な気温がアラビカ種の緩やかな成熟を後押しします。カルナータカ州はインド全体のコーヒー生産量の70%以上(2022/23年度で約24万8,000トン)を占める最大産地で、その中でもチクマガルルはインドにおけるコーヒー栽培発祥の地として知られています。

バーバブーダンが密輸した7粒の種

チクマガルルの物語は17世紀に遡ります。伝承によれば、スーフィー聖者バーバブーダンは1670年、メッカ巡礼(ハッジ)からの帰路でイエメンのモカ港に立ち寄った際、当時輸出が固く禁じられていたコーヒーの生豆を7粒、自らのひげに隠して持ち出しました。イスラム教で聖数とされる「7」にちなんだ数だったとされています。彼はその種をチクマガルル県のチャンドラドローナ丘陵(現在のバーバブーダンギリ)に植え、これがイエメンによるコーヒー貿易独占を崩し、インドにおけるコーヒー産業の出発点になったという逸話が今も語り継がれています。史実としての実証は乏しく伝説的な色彩が強いものの、丘陵地には彼の名を冠した聖地が今も残り、地域のアイデンティティとして根付いています。

2019年、地理的表示(GI)登録

チクマガルル・アラビカは2019年、インド商工省の地理的表示登録局によってGIタグを取得した5種のインドコーヒーの一つに認定されました。デカン高原マルナード地方チクマガルル県産という産地限定条件のもと、「穏やかな酸味とフルーティーな余韻を持つ高地アラビカ」として保護対象となっています。GI登録は生産者が産地の個性を守りながら適正価格を得るための制度で、インドコーヒーの国際的な認知向上にもつながっています(インド商工省プレスリリース、2019年)。

バレホンヌルの中央コーヒー研究所

チクマガルル県バレホンヌルには、インド・コーヒー委員会(Coffee Board of India)傘下の**中央コーヒー研究所(Central Coffee Research Institute)**が置かれています。品種改良・土壌化学・病害虫対策・収穫後処理技術の研究を一手に担う機関で、S.795をはじめとする主要品種の多くがここで育成されました。県内の農業生産統計でも、チクマガルル県のコーヒー生産量は2022年の8万150トンから2023年には8万2,450トンへと増加しており(CEICデータ)、インド最大の単一県産地としての地位を保っています。


代表的な生産者・農園

代表的な農園

  • バールバラ農園Baarbara Estate
    📍 インド・カルナータカ州チクマガルル県⛰️ 1,524m

    1894年創業、インダバラ家が経営する老舗農園。標高1,500m超の高地でS.795種を主体にウォッシュド精製を行い、ミルクチョコレート・キャラメル・ドライフルーツの風味で複数の海外ロースターから安定した評価を得ている

  • ラトナギリ農園Ratnagiri Estate
    📍 インド・カルナータカ州チクマガルル県⛰️ 1,200〜1,500m

    1927年創業、約45haの農園。アショク・パトレ氏が経営し、ウォッシュド・ナチュラル・ハニー・嫌気性発酵・カーボニックマセレーション・二段階発酵など多様な精製方式をステンレス発酵タンクで実験的に展開している

  • ヘマヴァティ農園Hemavathi Estate
    📍 インド・カルナータカ州チクマガルル県ニドゥヴァレ⛰️ 1,000〜1,350m

    有機栽培条件下でヘマヴァティ種(新交配種)を手摘み収穫し、ウォッシュド精製で仕上げる実証農園。カルナータカ州における新品種の栽培実証拠点としても知られる


精製方法

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫
2
果肉除去
3
水洗い・発酵
4
乾燥
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴

ウォッシュドが伝統的主流。 収穫したチェリーをパルパーで果肉除去後、発酵タンクでムシラージ(粘液質)を分解し、水洗いしてからパティオやレイズドベッドで天日乾燥する。輸出等級「プランテーションA」はこのウォッシュド豆を指し、チクマガルル産アラビカの旗艦グレードとして扱われる。近年はラトナギリ農園のようにナチュラル・ハニー・嫌気性発酵など多様な精製に挑む生産者も増えており、単一農園でも複数プロセスを並行するケースが広がっている。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ハイ ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いインド チクマガルルインド モンスーンマラバールブラジル サントスNo.2エチオピア イルガチェフェインドネシア マンデリンG1グアテマラ ウエウエテナンゴ

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:90〜94℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ・フレンチプレス
  • 豆の量:13g / 200ml(チョコレートの甘みとボディを引き出すにはやや高温・長め抽出が向く)

酸味が穏やかでボディがしっかりしているため、低酸味を好む人やミルクを合わせるカフェラテ用途にも扱いやすい。フレンチプレスで淹れるとキャラメルのような甘みとコクがより前面に出る。


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