Bataleon Camel Toe

凸型ベースが浮力を生む3BT、深雪専用に振り切ったディレクショナル

Bataleon3BTTriple Base TechnologyパウダーボードBill Stewart

Bataleonのパウダー機「Camel Toe」の解説です。生物物理学者Jørgen Karlsenが従来のキャンバー構造の限界に着目して発明した3BT(Triple Base Technology)を核に、2012-13シーズンに登場、ノーズ側を大きく凸型に持ち上げる「Pow 3BT」で深雪での引っかかりのない浮遊感を狙ったモデルです。サーフレジェンドBill Stewartとのコラボモデルも展開されました


「Camel Toe(キャメルトウ)」は、オランダを拠点とするBataleon Snowboardsのパウダー特化モデル。Bataleonの核心技術「3BT(Triple Base Technology)」のなかでも最も攻めた仕様「Pow 3BT」を採用し、ノーズ側のベースを大きく凸型に持ち上げることで、キャッチフリーな浮遊感を狙った一枚です。サーフボードシェイパーの重鎮Bill Stewartとのコラボモデルが展開されたことでも知られています。

ブランドの成り立ち:生物物理学者が見た「キャンバーの限界」

項目 内容
創業 1998〜2001年(資料により表記にゆらぎ)。生物物理学者 Jørgen Karlsen がノルウェーで発案、のちにオランダ・アムステルダムへ拠点移転
発明の動機 スノーボードの生体力学を研究し、伝統的なフラット・キャンバー構造ではターン中にノーズ・テールのねじれがエッジと戦い合ってしまう(引っかかりの原因になる)ことに着目
中核技術 3BT(Triple Base Technology)— ノーズ・テールに凸型ベースを追加し、キャンバー由来のポップ・エッジホールドを保ったまま、ロッカーのような引っかかりのない乗り味を両立
現在の運営 Dennis Dusseldorp と Danny Kiebert が約20年来のパートナーとしてアムステルダムから運営(Bataleon公式ジャーナル)
資本 2018年、Bataleonの親会社 Low Pressure Studio(オランダ)をスイスの Nidecker Group が買収。現在はNidecker Groupの一ブランド

3BTは「船の船体や飛行機の翼のような設計思想」とBataleon自身が説明する構造で、①ノーズ〜テールにかけてのポジティブキャンバーでポップと反応性を確保、②ボードの最も幅広い部分にリフトポイントを設けて乗り心地を穏やかにし、③サイドベースを徐々に持ち上げることでターンとエッジホールドを両立させる、という3要素の組み合わせです。どの部位をどれだけ持ち上げるかで「フレーバー」を変え、パーク向け・オールマウンテン向け・パウダー向けとラインナップを作り分けています。

シェイプ:ノーズを凸型に持ち上げる「Pow 3BT」

Bataleon Camel Toe 148cm 2023年モデル(左:ベース、右:トップデッキ、Bataleonのハンドロゴ入り)

画像:Bataleon Camel Toe 148cm(2023年モデル)
出典:Blue Tomato 製品画像

Camel Toeに搭載される3BTは、ラインナップのなかでも最も凸型のうねりが強い「Pow 3BT」。サイドベースがノーズに向かって急激に持ち上がり、ワイドポイントに「SideKick」と呼ぶスクープ状の造形を加えることで、深いボウル状の浮力ポケットを作ります。ノーズはロッカー、足下はキャンバーというプロファイルに、ノーズ幅からテール幅を引いた20mmのテーパーを組み合わせたディレクショナルシェイプです。

Bataleonは「通常のパウダーボードより5〜10cm短いサイズで乗れる」と謳っており、テール側をコンパクトに削り込んでも浮力を落とさず、ツリーランのようなタイトな場所での取り回しを両立させる狙いがあります。

スペック(148cmサイズ、2023年モデル)

項目 内容
全長 148cm
有効エッジ 117.7cm
ノーズ幅 301mm
ウエスト幅 251mm
テール幅 281mm
テーパー 20mm(ノーズ−テール、全サイズ共通)
サイドカット半径 9.0/8.5/8.0m(3段階ブレンド)
スタンス幅 490〜570mm
ベント Pow 3BT(ノーズ側ロッカー+足下キャンバー)
フレックス(10段階) 4/10(ソフト寄り)
コア フルポプラ+ブナ材ストリンガー(インサート沿いにtip-to-tail)
構造 Bi-axグラスファイバー
ベース Hyper Glide S(焼結ベース)
推奨体重 55〜70kg
サイズ展開 148 / 153 / 158 / 162cm

サイズ間の傾向として、158cmのウエスト幅は261mm、162cmは264mmとの記録があり(Freeride.com)、148cm→162cmにかけてウエスト幅が広がる通常のディレクショナル機と同じ傾向です。153cmの単独データは確認できず、本記事では148cmの数値を基準スペックとして記載しています。データソースは末尾の参考文献セクション参照。

年式によって構造の記述に幅があります。2019-2020年モデルのレビュー(Whitelines)では「mellow camber, bi-ax layup and a simple lightweight core」に加え「Dual Super Tubes(サイドウォール沿いのカーボンロッド)」の搭載が言及されている一方、2021-2022年モデルのレビューではポプラ+ブナのフルコアとbi-axのみが記載されています。年式によって仕様変更があった可能性がありますが、詳細な切り替え年は確認できていません。

名称の変遷

シーズン 名称
2012-13〜2021-22 Camel Toe
2022-23 Camel Two
2023-24〜現行 Cameleon

Bataleon公式のボードアーカイブによれば、Camel Toeは2012-13シーズンに初登場し、2021-22シーズンまで同名で継続。2022-23シーズンに「Camel Two」へ改称、2023-24シーズン以降は現行モデル「Cameleon」として展開されています。シェイプ・3BTの基本思想は継承されていますが、Cameleonではコア構成が「70%パロニア材+30%ポプラ材、カーボンストリンガー、ウレタン補強」に変更されているとの記録があり(thegoodride.com)、Camel Toe時代とは異なる仕様です。

評価

  • 深雪での浮力: ロッカーノーズ+Pow 3BT+20mmテーパーの組み合わせで、後ろ足を送り込まなくてもノーズが自然に浮く設計
  • 速度域: Japan Grabsのレビューは「パウダーではよく浮くが、スピードに乗ってからが本領」とコメント。フレックスは「全体を通してかなり硬め」で、荒れた雪面やチョップの通過性能・高速安定性を評価する一方、“夢のようなふわふわ感”ではなく硬派な安定感寄りとしている
  • ターン: Bataleon自身は「開けたバーンから深雪まで、速く大きなカービングターンを描くのに向く」オールテレイン設計と説明
  • サイズ選び: 通常のバックカントリー用ボードより5〜10cm短く乗れる設計。テールを詰めても浮力を落とさず、ツリーランで取り回しやすいとされる

Bill Stewart Editionというコラボモデル

2014-15シーズン、Camel ToeはサーフボードシェイパーBill Stewart(Stewart Surfboards創業者、「モダンロングボードの父」の一人と評される人物)とのコラボレーション「Bill Stewart Edition」を展開しました。Stewartは1981年の時点で先進的なスノーボードのプロトタイプを自ら設計していた人物で、コラボモデルのトップシート・ベースグラフィックには当時のオリジナルボードのデザインがそのまま使われています。ソフト〜ミディアムフレックスのフルポプラコアで、153・158・162cmの3サイズ展開。パウダー・バックカントリーでの性能に加えオールマウンテンでも扱えるとされ、サーフィンのDNAをスノーボードに持ち込むBataleonのブランド哲学を象徴するモデルでした。

チームライダーのShayne Pospisilも、ニュージャージーの波とバーモントの雪の両方で育った経歴を持つサーファー出身のオールラウンドスノーボーダー。Snowboard Magazineのインタビューでは3BTについて「エッジをデチューンする必要がなく、流れるように乗れる」と評しており、Camel Toeが体現する「サーフィンの感覚を雪山に持ち込む」というBataleonのコンセプトを体現するライダーの一人です。

パウダーボードシーンでの存在感

  • 3BTという独自技術を核に、大手メーカーとは異なる立ち位置で20年以上パウダー・フリーライド市場に留まり続けているブランドで、Camel Toeはそのなかでも最もパウダー寄りに振った「Pow 3BT」を体現するモデルだった
  • 2018年のNidecker Group(Nidecker・Rome SDS・Lobster・Switchbackなどを傘下に持つスイスのボードスポーツ企業)によるBataleon買収は、独立系のニッチブランドが技術力を武器に業界大手グループへ合流した事例の一つ
  • 現行の後継モデル「Cameleon」にも、ノーズを凸型に持ち上げるシェイプ哲学は受け継がれている

参考文献

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