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Winterstick Swallowtail

1970年代の元祖パウダーボードを、2018年からメイン州の工房で作り直した現行スワローテール

WinterstickスワローテールDimitrije MilovichSeth WescottパウダーボードMade in Maine

Winterstick「Swallowtail」の解説――Dimitrije Milovich が1970年代にユタで作った元祖スワローテールを、五輪金メダリスト Seth Wescott とエンジニア Rob Lu が2018年から再設計。ノーズを短く、テーパーを減らし、テール側で半径が伸びるリグレッシブ・サイドカットに変えた現行モデルの仕様と作り


「Swallowtail」は、米国の Winterstick が登録商標(®)付きのモデル名で現在も作っているパウダーボードです。原型は1970年代に Dimitrije Milovich がユタの深雪で作った板で、現在はメイン州シュガーローフの麓にある自社工房が受注生産しています。スワローテールという形がその後どう広がったかは スワローテールの系譜 で整理しているので、本記事は Swallowtail という板そのもの――作った人、いまの仕様、2018年からの作り直し――に絞ります。

起点の要約

Milovich は1970年代初めにユタへ移り、深雪で試作を重ねて1974年までに「Snow Surfboard」の特許を2件取得しました。1976年に Winterstick を会社にし、Roundtail と Swallow Tail の2モデルを売り出します。ただし、Google Patents で原文を読める特許 US 3,782,744 にスワローテールの記載はなく、スワローの起点は特許ではなく製品としての Swallow Tail にあります(資料によって Swallow Tail/Swallowtail と表記が揺れるため、本記事では1970〜80年代の製品を Swallow Tail、1994年の再始動以降の製品を Swallowtail(登録商標)と書き分けます)。年代の確度を含めた詳しい経緯は スワローテールの系譜 の「起点」の節を参照してください。

作った人:Dimitrije Milovich

項目 内容(出典)
出自 「オランダ生まれの東海岸育ち」(Tahoe Quarterly)
学歴 コーネル大学を1972年に中退(Summit Daily)。在学中は学食のトレーに立って雪の斜面を滑っていた(同)
きっかけ Surfing 誌で「スノーサーフィン」に触れていた Wayne Stoveken に1970年に連絡を取り、板を試して夢中になった(Summit Daily)
ユタへ Stoveken とニュージャージーからユタへ移り、Powder Mountain で試作を磨いた(Winterstick 公式)
職業的な素性 エンジニア(Maine Magazine)
離脱 1982年に会社を離れる(Tahoe Quarterly)。Summit Daily は「1986〜87年までに閉鎖し、Radius Engineering を設立」と記す
その後 エンジニアリング会社を経営(Tahoe Quarterly)

Maine Magazine によると、Milovich は最初の Swallow Tail を友人たちのために削りました。割れたテールが雪に沈み、ノーズがパウダーの上に浮く。ガレージで作った板を、ソルトレイクシティの小さな店から海外へも売り、買い手は「Winterstickers」と呼ばれる熱心な支持層になりました。Tahoe Quarterly によれば、ポリエチレン(P-tex)のベース、フォームのコア、グラスファイバーのトップを1枚にまとめた構造で、メタルエッジは深雪に不要だとして外したこともありました。

それでも商売としては早すぎました。1977年の業界展示会では関心を集められず(Summit Daily)、6年ほどの間に売れた板は1,000本に届かなかったといいます(Tahoe Quarterly)。同誌は、2003年に Deseret News へ語った Milovich の言葉を「流行に早すぎるのは、遅すぎるのと同じくらい悪い」と伝えています。Maine Magazine では、Winterstick の営業担当として紹介されている Merrick が彼を「スノーボードのゴッドファーザー」と呼び、Seth Wescott は「時代のはるか先を行っていた」と評しています。

初代と現行の違い

項目 1970〜80年代の Swallow Tail 現行 Swallowtail®
輪郭 尖ったノーズ、前足付近で最大幅、急なテーパーで深いスワローへ(Tahoe Quarterly) 長くロッカーの低いノーズ(2018年の再設計で以前より短くし、テーパーも減らした。Winterstick 公式ブログ)、深いスワロー
コア フォーム(Tahoe Quarterly) 木。全長方向に通した木目で、継ぎ目(フィンガージョイント)なし(Maine Magazine)
トップ グラスファイバー 木のベニアまたはグラフィック。公式ページの現行の選択肢はブラック/カーリーメープル/ウォルナット。Maine Magazine(2019年)はエルム、ターキーフェザー・アッシュなども挙げる
エッジ メタルエッジを外した時期あり スチールエッジ
重さ 1981年の赤い Swallow Tail(Brooke Long 所蔵)を Tahoe Quarterly は「羽のように軽い」と描写 公式に重量の記載なし
付属 デッキのグリップ用スパイク、簡素なフットストラップ(同上の1981年モデル) 公式ページに記載なし

1981年の赤い Swallow Tail は、所蔵者の Brooke Long が「現存は2〜3本」と見ている個体です(Tahoe Quarterly)。

シェイプ

Winterstick Swallowtail 183cm 現行モデル:赤いトップデッキ、長いノーズと深くV字に割れたスワローテール

画像:Winterstick Swallowtail®(183cm/現行モデル)
出典:Winterstick 公式サイト(winterstick.com)製品画像

※ 製品画像の著作権は Winterstick に帰属します。本記事は批評・解説目的での参照引用です。権利者からの削除要請があれば速やかに対応します。

公式の製品ページは、現行モデルの設計を4点で説明しています。

  • リグレッシブ・サイドカット:表記の半径から始まり、テールに向けて半径が伸びる。高速での安定と取り回しを両立させる狙い
  • 長くロッカーの低いノーズ:最も深い日でも板を持ち上げる
  • 深いスワローテール:後ろ足が疲れにくい、攻めた姿勢で乗れる
  • ノーズ/テールのパウダーバランス 63/37

プロファイルは「伝統的なキャンバーの前に、長く低いライズのノーズ」。公式はさらに、深いスワローがカービング中にたわみ、長いサイドカットを補うので「意外なほど楽しいカービングボード」になると書いています。

スペック

サイズ 有効エッジ ノーズ幅 ウエスト幅 テーパー サイドカット半径 基準スタンス
163cm 1170mm 320mm 258mm 35mm 7.0m 510mm
173cm 1245mm 330mm 264mm 40mm 8.0m 535mm
183cm 1320mm 340mm 270mm 45mm 9.0m 560mm

データソース:Winterstick 公式製品ページ(2026年10月確認)。サイドカット半径は表記値で、実際はテール側で長くなるリグレッシブ形状です。183の「テーパー45mm・ウエスト270mm」は、Rob Lu の公式ブログの記述とも一致します。

公式の表には「Setback(セットバック)」の列がありますが、3サイズとも空欄です。35/40/45mm はテーパーの列の値で、セットバックではありません。テール幅・フレックス数値・ベース素材の名称・重量も公式ページでは確認できず、記載していません(製品データには全サイズ共通で「4536」という値がありますが、単位の表示がなく、本記事では重量として扱っていません)。

価格・販売形態(公式、2026年10月確認) 内容
価格 1,500〜1,700ドル(公式の一覧ページの価格帯。トップシートごとの価格は未確認)
50周年記念 Swallowtail 2,000ドル(50周年ページ。掲載画像は183cm)
生産 多くの仕様は受注生産(注文順に製作)。一部は在庫あり

2018年からの作り直し

現行の Swallowtail を設計し直したのは、Seth Wescott と、Winterstick の社長兼エンジニア Rob Lu です。Rob Lu は2026年7月の公式ブログで経緯を書いています。

それまで作っていた Swallowtail は、昔ながらの「巨大なノーズ、巨大なテーパー、ドアのように硬い」板でした。Wescott は初めて固い圧雪で乗ったとき、ストラップを締めた直後に転びかけたほど直感に反する板だったといいます。2人はパウダーでの浮力、象徴的なスタイル、沈まないサーフ的な形は残したまま、カービング・取り回し・安定性を足すことを目標にしました。

変更点 内容(Winterstick 公式ブログ)
ノーズ 短くした
テーパー 減らした
ウエスト位置 板の中央寄りへ移し、圧雪での扱いやすさを上げた
フレックス テール側に意図的なしなりを入れた(先に2人で作った深いスワローのパウダーボード「Volare」で試した設計)
サイドカット 単一半径(ラジアル)をやめ、ノーズと足元は小さく、スワロー部分で長い半径へつなぐ

Volare の最初の試作に乗った Wescott は、その日1日戻らず、翌日「トップからボトムまで19本滑った。これまでで一番好きなカービングボードだ」と言ったそうです。テールのしなりに体重を載せるとターンの形を自在に変えられる、という手応えが、Swallowtail のサイドカット設計に引き継がれました。製品ページにも Wescott の「Winterstick に関わり始めたときから、長年作られてきた元の Swallowtail の形を変えたいと思っていた」という言葉が載っています。

作り手:メイン州シュガーローフの工房

年 出来事
1994 ユタのスポーツ小売業者が Winterstick を再始動(Summit Daily)。公式50周年ページは1994〜1999年を「Winterstick Snowboards Inc.」の時期とする
1999〜2000 Bigelow Mountain Partners(メイン州資本)が引き継ぐ。Portland Museum of Art は1999年、Maine Magazine は2000年と記載
2007〜08 コロラド州の Wagner Custom と提携・ライセンス生産(Summit Daily は2007年の提携、Maine Magazine は2008年からのライセンスと記載)
2015 Seth Wescott がオーナーグループに参加(SGB、2015年9月22日)。ユタの Powder Mountain に試乗センター開設(Maine Magazine)
2016 シュガーローフの West Mountain リフト小屋を改装した自社工房で製造を再開(Maine Magazine)

Maine Magazine は、この工房をリフトから直接乗り入れられるスノーボード工場として紹介しています。注文者は Rob Lu と形状・長さ・幅・キャンバー・サイドカットを決め、リフトで試し乗りして工房へ戻り、調整できます(Maine Magazine)。同誌によれば、木のコア、手作業で貼るベニア、テクスチャーベース、スチールエッジ、2層の織りグラスファイバーをエポキシで固め、プレス・硬化・成形のあとヨット用ニスを2回塗って仕上げます。2019年12月号の時点で、前年の生産数は350本でした。

使用ライダー

公式のチームページは、Seth Wescott、Rob Kingwill、Tom Burt の3人を「Rider/Owner/Shaper」としています。Wescott はメイン州ファーミントン出身で、2006年トリノと2010年バンクーバーの冬季五輪スノーボードクロスで金メダルを獲った選手です(Portland Museum of Art、Maine Magazine)。Tom Burt は40年以上にわたって雪上で活動してきたライダーとして紹介されています(Winterstick 公式50周年ページ)。

Rob Lu は2022-23シーズン(Winterstick 50周年)に、183を50日乗る企画に挑みました。東海岸の固く狭いコースでも、2日目には持参した別の板よりこちらのほうが自信を持って曲がれたと書き、その後4年で200日以上乗ったうえで「パウダーボードという箱に入れないでほしい」と結んでいます。ただしこれはメーカー自身の記述で、第三者の試乗レビューは今回の調査では見つかりませんでした。

パウダーシーンでの存在感

Portland Museum of Art は Swallowtail を「Dimitrije のアイデアの継承として世界に知られる形」と紹介しています。深いスワローという50年前の特徴は残しつつ、ノーズ・テーパー・サイドカットは2018年から作り直されています。いまの Swallowtail は原型の博物館的な再現ではなく、圧雪や狭いコースでも乗れるよう現代化したパウダーボードです(公式ブログの記述。第三者の評価は未確認)。

本サイトで扱ったほかのスワローと比べると、位置づけが見えます。Burton Fish は大手が量産する深いスワロー、Gentemstick Mantaray は浅いハーフムーンテールで雪面を曲がる日本のスノーサーフ。Swallowtail は、その両方より早い1970年代に深いスワローとして生まれた板で、閉鎖と再始動をはさんで、いまもメイン州の工房で受注生産を中心に作られています。rideType は、公式が「究極のパウダーボード」と位置づけ、63/37 のパウダーバランスを掲げていることからパウダーに分類しました。

訂正(2026-10-10):価格を「グラフィック・トップ 1,500ドル」「ウッド・トップ 1,700ドル」と分けて記載していましたが、公式ページで確認できたのは1,500〜1,700ドルという価格帯までで、トップシートと価格の対応は確認できなかったため、価格帯の記載に改めました。スペック表の値(テーパー35/40/45mm、セットバック欄は空欄など)は公式製品ページと一致することを確認しています。

参考文献

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