Dupraz D1

80年代フランスの Hot Snowboards を率いた Serge Dupraz が、2003年に One Sixty を長く作り直したディレクショナル機

DuprazSerge DuprazHot SnowboardsOne Sixtyフリーライドカービングフランス

Dupraz「D1」の解説――公式プロフィールによれば雪の前は水の上でシェイパーをしていた Serge Dupraz が Hot Snowboards の One Sixty の考え方を引き継ぎ、2003年に投入したディレクショナル機。全長より短く乗れるという「体感長」の設計、158〜193cmの公式スペック、Whitelines と Japan Grabs の評価


「D1」は、フランスの Dupraz Snowboards が2003年から作り続けているディレクショナル機です。設計者の Serge Dupraz は、1980年代にフランスで Hot Snowboards を立ち上げた人物で、公式サイトは D1 を Hot 時代の名機「One Sixty」を長く作り直した板と説明しています。現在の Dupraz は D1 を長さ違いで展開しており、公式サイトのトップページは「D1:4サイズと複数のフレックス」として、158cm(5’2)、165cm(5’5)、178cm(6’0)、193cm(6’3)を並べています。

ブランドの成り立ち:Hot Snowboards から Dupraz へ

公式のプロフィールは Serge Dupraz を「ずっとシェイパー、固い水(雪)の前は液体の水の上で」と紹介しています。公式プロフィールによれば、1980年代初めに雪山へ入ったとき、Dimitrije Milovich(Winterstick の創業者)の足跡をたどり、最初のモデル「Expert」は Milovich のやり方に倣って手作りしました。Milovich と Winterstick については Winterstick Swallowtail で取り上げています。

公式サイトの「30年の歴史」ページは、次のように時代を区切っています。

時期 出来事(Dupraz 公式「30 years of history」)
1983〜1985 最初のシェイプとターン。Hot Snowboards が誕生。初期のモデルにはメタルエッジがなく、後ろ足の位置にアルミの小さなフィンが2枚付いていた
1986〜1988 One Sixty の時代。公式は「フランスで、滑走スポーツの全歴史を通じて最も売れたスノーボード」と書く。ゲレンデでカービングでき、パウダーで浮く板で、「現在の D1 のコンセプトが生まれた」
1988〜1990 Hot Pro Team。公式はアルペン・スラロム・スーパーGの「最初のプロ競技チーム」とし、ワールドカップの表彰台を席巻したと書く
1990〜1995 カービングが主流になり、Hot はアルペン市場を広く押さえた。公式は Logical を「市場で最初の100%アシンメトリーのスノーボード」と紹介
1995〜2003 スキーがカービング形状になり、スノーボードではフリースタイルが売上の中心に
2003 「One Sixty が、より長く、より動きのあるシェイプで帰ってきた」――D1 の第1世代
2012 同じシェイプの考え方をスキーへ移した D2 を発表

フランスのアウトドア誌 MK Sport(2017年12月)は、Hot を1984年創業、One Sixty をその翌年(1985年)としています。公式の年表はそれぞれ1983〜1985年、1986〜1988年という幅で示しており、本記事は創業年と発売年を1つに特定しません。Hot 時代から2003年に D1 を出すまでの経緯は、今回照合できた資料には書かれていませんでした。

公式プロフィールは、Serge の代表作として Expert、One Sixty、Revolution、Logical の4つを挙げ、目標を「ゲレンデからパウダーまで連れて行く、究極のシェイプ」と書いています。プロフィールは D1 の名前を挙げていませんが、年表が One Sixty から D1 への流れを示していることから、この目標に当たるのが D1 だと読めます。Whitelines(2017年)は、Serge が年ごとに変わる型破りなモデル名を早くからやめたことに触れています。

シェイプ

Dupraz D1 6'0(178cm):左は黒と白のトップデッキ、右は大きな「DI」ロゴの紺色のベース。尖ったノーズと短く丸いテール

画像:Dupraz D1 6’0(178cm/現行モデル、トップデッキとベース)
出典:Dupraz 公式サイト(dupraz-snow.com)製品画像

※ 製品画像の著作権は Dupraz Snowboards に帰属します。本記事は批評・解説目的での参照引用です。権利者からの削除要請があれば速やかに対応します。

D1 の形は、長く尖ったノーズと短いテールが特徴です。Whitelines(2018年)は、ブランドが1980年代からターンを中心に考えてきたとし、その特徴を「長いサイドカット、尖ったノーズ、短いテール」とまとめています。公式の製品ページは、シェイプを「ディレクショナル、特許取得(breveté)」、シェイプの名前を「Infinity 4D shape」としています(特許の番号や内容は今回の調査では確認できませんでした)。

公式が最も強く打ち出しているのは**体感長(Longueur ressentie)**です。各サイズのページに「この165は156のように乗れる」「この178は164のように乗れる」「この193は172のように乗れる」と書き、全長の長い D1 と、体感長と同じ全長の一般的な板とで、雪に接する長さは同じだと説明しています。長いノーズで浮く面積を増やしつつ、乗り味は短い板に近づける、という考え方です。公式の英語ページは D1 全体を「究極のパウダーボードの長所と、最高のカービングボードの長所を組み合わせた」と表現しています。

プロファイルの呼び方は資料で異なります。

資料 プロファイルの表記
Dupraz 公式 Aquasmooth Rocker。ノーズが地形の凹凸を吸収し、パウダーですぐに浮き上がる、と説明
Whitelines(2017・2018年) Setback Camber
Japan Grabs(2021年) Aquasmooth Rocker の名前に触れたうえで、「S字ロッカー」または「ディレクショナル・キャンバー」の一種と説明。低いキャンバーがテールまで続く

テールの形について、公式ページにはテーパー(表の列名は「Pintail」)の数値以外の説明はありません。

スペック(現行モデル)

サイズ 全長 体感長(公式) 有効エッジ ノーズ幅 ウエスト幅 テール幅 テーパー サイドカット半径 スタンス幅
5’2 N 158cm 150cm 1080mm 293mm 242mm 282mm 11mm 6.1m 46〜62cm
5’2 158cm 150cm 1080mm 307mm 256mm 295mm 12mm 6.1m 46〜62cm
5’5 165cm 154cm 1115mm 310mm 256mm 298mm 12mm 7.6m 46〜62cm
6’0 178cm 164cm 1220mm 317mm 258mm 303mm 14mm 8.7m 50〜66cm
6’3 193cm 172cm 1310mm 330mm 280mm 310mm 20mm 10.5m 54〜70cm

データソース:Dupraz 公式製品ページ(2026年10月確認)。各ページの「Board specs」の表の値です。同じページの下の「Parlons technique(技術の話)」の欄(本文と「Cotes(寸法)」の小欄)とは、いくつか数字が食い違っています。

  • 5’2 の体感長:表と技術の欄の本文は150cm、Cotes の小欄は146cm
  • 5’5 の体感長:表と Cotes の小欄は154cm、技術の欄の本文は「156のように乗れる」
  • 5’5 の有効エッジ:表は1115mm、Cotes の小欄は115cm
  • 6’0 の体感長:表と技術の欄の本文は164cm、Cotes の小欄は165cm
  • 6’3 の有効エッジ:表は1310mm、Cotes の小欄は134cm

なお Japan Grabs は 5’5 の有効エッジを115cm、テーパーを13mm(公式の表は12mm)と記載しています。

セットバックとフレックスの数値は公式ページに記載がありません。公式はフレックスを0〜10の目盛りの図で示すだけです。Whitelines は 6’0 の「+」と 5’5 の「+」をどちらもフレックス7(Whitelines の表記「Flex: 7」。尺度の記載はなし)と記載しています。重量はサイズ別のページにはなく、フレックスごとの個別の商品ページの「Poids(重量)」欄に載っています(板単体か梱包込みかの記載はありません)。

モデル 重量(公式の個別商品ページ)
5’2 N/5’2 2.9kg/3.0kg
5’5 STD/+/++ 3.3kg/3.4kg/3.5kg
6’0 +/++ 3.7kg/3.8kg
6’3 4.2kg
項目 内容(公式製品ページ、2026年10月確認)
フレックスの種類 5’5 は STD/+/++、6’0 は +/++、6’3 は1種(商品名は Flex HARD、分類は Flex ++)。5’2 は通常幅と細身の「N」。英語版ページは「+」を「ほとんどのライダーに勧める、やや硬め(medium-stiff)のフレックス」、「++」を「最も硬いフレックス」と説明
++ の違い カーボンの補強を追加(6’0 のページは仏語・英語とも「ノーズに」と明記)。6’0 の英語ページは、体重の重いライダーや、非常に速く滑りたいパワーのあるライダー向けとする
コア 100%木。複数の樹種を組み合わせたもの
構造 3軸のグラスファイバー、エッジの上にゴムの補強(エッジとグラスファイバーの接着と振動吸収)、ABS のサイドウォール
ベース 高密度のベース(Semelle tranchée haute densité)。Japan Grabs はシンタードと記載
製造 欧州連合(EU)内。工場の所在地は公式に記載なし
価格 5’2:650ユーロ/5’5:690ユーロ/6’0:780ユーロ/6’3:880ユーロ(2026年10月の確認時点で、個別の商品ページはいずれも「Rupture de stock(在庫切れ)」表示)

公式は、サイズとフレックスごとに、ライダーのレベル別の推奨体重(POIDS IDEAL)と推奨身長(TAILLE IDEALE)の欄を設けています。推奨体重と推奨身長は次のとおりです(レベルの名前は公式の表記のまま)。

モデル(推奨体重) Débutant Confirmé Expert
5’2 N 50〜80kg 45〜75kg 40〜70kg
5’2 50〜90kg 45〜85kg 40〜75kg
5’5 STD 55〜85kg 50〜80kg 45〜75kg
5’5 + 65〜100kg 60〜95kg 55〜90kg
5’5 ++ 70〜105kg 65〜100kg 60〜95kg
6’0 + 70〜105kg 65〜100kg 60〜95kg
6’0 ++ 75〜115kg 70〜110kg 65〜105kg
6’3 80〜120kg 70〜110kg 60〜100kg
モデル(推奨身長) Débutant Confirmé Expert
5’2 N 1.40〜1.70m 1.45〜1.75m 1.50〜1.80m
5’2 1.50〜1.85m 1.45〜1.80m 1.40〜1.75m
5’5 STD 1.55〜1.90m 1.55〜1.85m 1.60〜1.80m
5’5 + 1.55〜1.95m 1.60〜1.90m 1.60〜1.85m
5’5 ++ 1.55〜1.90m 1.55〜1.85m 1.60〜1.80m
6’0 + 1.80〜2.00m 1.75〜1.95m 1.70〜1.90m
6’0 ++ 1.80〜2.00m 1.75〜1.95m 1.70〜1.90m
6’3 1.90〜2.10m 1.80〜2.10m 1.70〜2.10m

データソース:Dupraz 公式のサイズ別ページ(5’2・5’5・6’0・6’3)の「POIDS IDEAL」(推奨体重、1つ目の表)と「TAILLE IDEALE」(推奨身長、2つ目の表)の欄(2026年10月確認)。推奨身長は、レベルが上がると範囲が低くなるモデル(5’2、6’0、6’3)と、逆に高くなる 5’2 N、範囲が狭まる 5’5 があり、いずれも公式の表記のまま載せています。5’5 ++ の推奨身長は 5’5 STD と3段階とも同じ値で、推奨体重の範囲だけが15〜20kg 重くなっています(公式の表記のままで、誤記ではありません)。

評価

資料 試乗した板 主な評価
Whitelines(2017年9月、Andrew Duthie) D1 6’+(178cm)、2017-18 「スピードでのばかげたほどの安定感」。気ままに乗る板ではないが、カービングのラインを描くなら心をつかまれる。ディレクショナルな形はパウダーでも働くが、狭いシュートには向かないだろう
Whitelines(2018年11月) D1 5’5+(165cm)、2018-19 木の間では扱いにくいが、開けた斜面に出れば「夢のよう」(Pingu)。急で深い日なら迷わず選べる板で、髪をなびかせて飛ばすタイプのゲレンデ好きにも合う。一方「森の中ならほかにいい板がある」、人の多い場所でよく減速する人には勧めない(以上 Kieron Black)
Japan Grabs(2021年11月) D1 5’5 STD(白馬で試乗、板はメーカー提供) 形から期待どおりの浮力と繊細さがパウダーにある。パウダーでは緩斜面でもよく加速する。ゲレンデでは、荒れた斜面やシャバ雪の上を滑るように進む。慣れが必要なのは速さで、パウダーでは半日ほどかかった。速さに慣れた後は、5’5 STD が木の間で扱いにくいとは感じなかった。STD は硬い「+」「++」より木の間で扱いやすく、硬い 6’+ は木の間で手に余った

3つの試乗に共通して挙がるのは速さです(高速での安定感は Whitelines 2017 が明記し、Japan Grabs はパウダーでの高速時の「パワーとホールド」を挙げています)。カービングを明示しているのは Whitelines 2017 だけで、Whitelines 2018 は開けた斜面で飛ばす気持ちよさ、Japan Grabs は浮力・加速・荒れた斜面での進みやすさを挙げています。木の間の評価は分かれます。Whitelines 2018 の2人と、Japan Grabs が 6’+ で試したときは扱いにくいと感じ、Japan Grabs は柔らかい 5’5 STD なら慣れた後は問題なかったとしています。Whitelines 2017 は木には触れず、狭いシュートはおそらく向かないと書いています。Japan Grabs は総評を「扱いやすいフレックスの、速い板」としています。

カービングとパウダーを1本で

Dupraz 公式も 5’5 を「完璧なスノーサーフ(le snowsurf parfait)」、6’0 のページで「比べるもののないサーフ感覚」と書いており、サーフの乗り味を目指す点は Gentemstick Mantaray などと共通します。違いは形です。ハーフムーンテールの Mantaray や、スワローテールの Burton Fish に対し、D1 はテールを割らず、長いサイドカットと尖ったノーズ(Whitelines)で、ゲレンデのカービングとパウダーの浮力を1本にまとめようとした板です。

公式の年表は、D2 スキーがスキー業界に影響を与えたと書き、D1 については、2003年以降に他社から多くのフリーライド機が生まれ、フリーライドが多くのブランドの宣伝の柱になったと書いています。ただしこれはメーカー自身の主張で、第三者の検証は今回の調査では見つかりませんでした。確かめられるのは、公式と Japan Grabs が2003年からとする D1 が、2017・2018・2021年のレビューと現行ラインナップに同じ名前で出ていること、そして試乗レビューが速さを評価していること(カービングを明示するのは Whitelines 2017)です。

rideType は、公式が D1 を「大多数のライダーにとって、あらゆる雪質とゲレンデで性能を発揮する」板と説明し、トップページでも「究極のオールマウンテン・スノーボード」と打ち出していること、試乗でもゲレンデとパウダーの両方が評価されていることから、オールラウンドに分類しました。パウダー専用機ではなく、速さと長さ(Japan Grabs は硬さも)が狭い木の間では扱いにくいという声がある、という点は上の評価のとおりです。

参考文献

コメント

コメントを書く

閲覧数 …

最新情報をフォロー

各SNSでも記事・動画を発信しています