ベトナム ダラット

ロブスタ大国が育てる幻の高地アラビカ

生産量の95%がロブスタというベトナムで、標高1,500m級の高原だけが持つアラビカの顔。カウダットが世界的ロースターに認められた理由を探ります


この記事の要点

  • 産地はベトナム中南部ラムドン省ダラット近郊カウダット地区(標高1,450〜1,650m)
  • ベトナム生産量の約95%はロブスタ種だが、ラムドン省はアラビカ栽培に特化する数少ない産地
  • ブルボン・ティピカ・カティモール種を栽培、19世紀末のフランス植民地時代に始まる
  • 2015年からスターバックスの単一原産地商品にも採用された
  • 穏やかな酸味とベリー系の香り、ロブスタ主体のベトナムコーヒーとは対照的な味わい

産地情報

産地ベトナム・ラムドン省ダラット近郊カウダット地区
品種アラビカ種(ブルボン・ティピカ・カティモール)
標高1,450〜1,650m
味わい穏やかな酸味・ベリー・フローラル・すっきりした後味

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:ブルボン種・ティピカ種・カティモール種

フランスが19世紀末にコーヒー農園をベトナムに開き、その後ラムドン省にもブルボン・ティピカ等の高品質アラビカが持ち込まれたのが起源。カティモールは1980年代にキューバ経由で導入された、カトゥーラとチモール・ハイブリッドの交配種で、さび病耐性を持つ。ベトナムの主要産地の多くが低標高でロブスタに適する中、ラムドン省は標高1,000〜1,600mの高原がありアラビカ栽培に特化する数少ない地域

  • ベトナム生産量の約95%ロブスタ種、アラビカは少数派
  • ラムドン省・ソンラ省が主なアラビカ産地
  • 2015年からスターバックスの単一原産地商品に採用
  • フランス植民地時代の19世紀末に栽培開始

ロブスタ大国のアラビカという矛盾

ベトナムはブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国で、生産量の約95%をロブスタ種が占めます(2025/26年度、米国農務省USDA FAS推計)。 中央高地のダクラク省を中心に広がるロブスタ農園が、濃厚な苦味とカフェ・スア・ダ(練乳アイスコーヒー)文化を生んだことは、ベトナム ブオンマトゥオットの記事で紹介した通りです。

しかしベトナムの中でも例外的にアラビカ栽培に特化する地域があります。それがラムドン省、特にダラット市近郊のカウダット地区です。標高1,450〜1,650mという、ベトナムのコーヒー産地としては際立って高い土地が、アラビカが求める冷涼な気候を生み出しています。北西部のベトナム ソンラと並び、ロブスタ大国ベトナムにおける二大アラビカ産地を形成しています。


産地の特徴

代表的な農園

  • カウダット地区産アラビカCau Dat Arabica
    📍 ベトナム・ラムドン省ダラット市近郊⛰️ 1,450〜1,650m

    玄武岩質の肥沃な土壌と、年間を通じて5〜33℃という寒暖差の大きい冷涼な気候。ダラット周辺は「ベトナムのアラビカの女王」と呼ばれ、国内で最も評価の高いアラビカ産地とされる

  • ラムドン省 ディリン地区Di Linh District
    📍 ベトナム・ラムドン省⛰️ 1,000〜1,200m

    カウダットよりやや低い標高帯に広がる産地。ロブスタとアラビカの混作も見られ、上品な香りとベリー系の穏やかな酸味を持つ豆を産出する

  • LIFTプログラム参加農家LIFT (Linking Industry, Farmers, and Traders)
    📍 ベトナム・ダラット周辺

    生産者・業界・トレーダーを繋ぐ技術支援プログラム。ダラット周辺の約100軒の農家が参加し、うち約30軒は女性が経営に関わる。品質改善のための技術指導と農学サポートを提供


世界に認められた経緯

カウダット産アラビカは2015年、米国スターバックスの単一原産地商品としてラインナップに加わりました。スターバックスの品質・倫理基準「C.A.F.E. Practices」の厳格な審査を通過し、2016年以降は世界56カ国・21,500店舗以上で展開されています(スターバックス公式ストーリー)。

ロブスタが主力のベトナムにおいて、高地の限られた産地だけが持つアラビカの個性が、国際的なロースターの目に留まった事例といえます。


精製方法

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫
2
果肉除去
3
水洗い・発酵
4
乾燥
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴

カウダットではウォッシュド・ハニー・ナチュラルが併用されますが、甘みを引き出すためウォッシュドとハニープロセスが優先される傾向があります。ウォッシュドでは完熟したコーヒーチェリーを収穫後、果肉を完全に除去して一晩発酵させることで、良好な酸味とチョコレートのような香り、甘い後味を引き出します。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

シナモン ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いベトナム ダラットベトナム ブオンマトゥオット(ロブスタ)インドネシア マンデリンG1エチオピア イルガチェフェブラジル サントスNo.2コロンビア ウィラ

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:88〜92℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ推奨
  • 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → ベリー系の穏やかな酸味が際立つ、14g → 甘みとボディが増しバランス重視に)

📏 基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む(特に深煎り82〜85℃)。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

よくある質問

ベトナムはロブスタばかりではないのですか?
生産量の約95%はロブスタ種ですが、ラムドン省やソンラ省など一部の高地ではアラビカ種も栽培されています。ラムドン省のカウダット地区は標高1,450〜1,650mとベトナムでは珍しい高地で、アラビカ栽培に適した気候です
カウダット産アラビカはどんな味がしますか?
穏やかな酸味とベリー系の香り、すっきりした後味が特徴です。ロブスタ主体の濃厚な苦味とは対照的で、ベトナムコーヒーのイメージを覆す繊細さがあります
ベトナムのアラビカはどこで手に入りますか?
スペシャルティコーヒー専門店やオンラインショップで「ベトナム ラムドン アラビカ」「カウダット」等の表記で扱われています。スターバックスでも2015年に単一原産地商品として販売された実績があります

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