ブータン サムツェ

幸福の国ヒマラヤ山麓——カーボンネガティブの大地が育むフローラルなアラビカ

標高1,300〜1,800mのブータン南部サムツェ地区で育つアラビカ。600世帯超の農家が有機栽培で支える稀少なヒマラヤ産コーヒーで、フルーティー・フローラル・ハーバルな香りが際立つ


産地情報

産地 ブータン・サムツェ県(Samtse Dzongkhag)・サルパン県(Sarpang Dzongkhag)
品種 アラビカ(ティピカ系・コロンビア導入種)
標高 1,300〜1,800m
味わい フルーティー・フローラル・ハーバル・ハチミツの甘み・明るく柔らかい酸

品種情報

アラビカ種 Coffea arabica 最高品質

品種:ティピカ系 / アラビカ(コロンビア導入種)

ブータンへのアラビカ導入は1960〜1980年代にかけて。ダショという農業省官僚がコロンビアから種子を持ち帰ったのが起源とされる(Bhutan Mountain Coffee記録)。コロンビア産アラビカはティピカ系が中心で、現在のブータン産主力品種もこの系譜を引く。政府の2024〜2030年計画では全農地の80%をアラビカ、20%をロブスタとする方針が示されており、スペシャルティ品質向上を優先している

  • ティピカ(Typica)系:アラビカ原種に近い系統で、シルキーなボディと繊細なシトラス・フローラル感が特徴。コロンビアから持ち込まれた種系が起源のため、ブータンでは南部山岳斜面の涼しい気候と相まってクリーンで甘みのあるカップに仕上がる
  • ブータン南部の湿潤亜熱帯気候(Samtse・Sarpang)は年間降水量が豊富で、標高1,300〜1,800mの急斜面が昼夜の温度差を生む。緩慢な成熟がコーヒーチェリーの糖度を高め、フルーティーでハーバルな香りを際立たせる
  • 有機農法が原則:ブータンはカーボンネガティブ国家として環境保護を国策に掲げており、農薬・化学肥料の使用を最小限に抑えた自然農法が標準。この方針がクリーンなカップキャラクターに直結している

ブータン サムツェとは

**ブータン王国(Kingdom of Bhutan)**はヒマラヤ東部に位置する人口約75万人の内陸国。「国民総幸福量(GNH)」を国家指標とし、森林覆蓋率72%・カーボンネガティブという環境政策でも知られます。コーヒー産業はまだ発展途上ながら、2020年代に入って急速に国際的な注目を集めています。

コーヒー栽培の歴史

ブータンでのコーヒー栽培が本格化したのは2010年代後半のことです。農業省(MoAF)の農業振興プログラムとして南部地区への導入が進められ、2020年代に民間企業による商業化が始まりました。

転機となったのは2020年のパンデミック期。Karma Chimeが主導するBhutan Mountain Coffeeがサムツェ県ニマリン(Nyimaling)の2エーカーの土地でパイロット栽培を開始。その後、サムツェ県ダムダム工業団地(Damdum Industrial Estate)に加工工場を設立し、600世帯超の農家コミュニティをネットワーク化しました。焙煎・パッケージングはパロ(Paro)で行われています。

2024年には政府とUNDP(国連開発計画)が連携し、17世帯が参加する種苗生産協同組合プロジェクトを開始。2024〜2030年の中期計画では累計1,500エーカーのコーヒー農地造成(アラビカ80%・ロブスタ20%)が掲げられており、スペシャルティグレードへの移行が本格化しています。

産地の地理と気候

主産地のサムツェ(Samtse)はブータン南西端、インドのシッキム州と接するドゥアール平原に近い丘陵地帯です。湿潤亜熱帯気候で年間降水量は豊富ながら、標高1,300〜1,800mの斜面では昼夜の気温差が10〜15℃に達します。この緩慢な成熟条件がアラビカの糖度と香気成分の蓄積を促します。

サルパン(Sarpang)はサムツェ東方の隣接県で、同様の気候条件を持ちます。2024年にはジェムガン(Zhemgang)県でも初の農園が開設されており、産地は徐々に拡大しています。


代表的な生産者・協同組合

代表的な農園

  • ブータン・マウンテン・コーヒー Bhutan Mountain Coffee
    🏆 国内スペシャルティコーヒー先駆者
    📍 ブータン・サムツェ県(ニマリン・ダムダム工業団地周辺) ⛰️ 1,300〜1,700m

    Karma Chime創業。パンデミック期の2020年にサムツェ県で2エーカーからパイロット栽培を開始し、現在は600世帯超の農家コミュニティを統括。ダムダム工業団地に手加工処理施設を持ち、焙煎・パッケージングはパロで実施。環境負荷を最小限に抑えたコミュニティベースの持続可能モデルを標榜している(Bhutan Mountain Coffee公式)

  • UNDP連携農家協同組合(サムツェ) UNDP-Supported Coffee Cooperative, Samtse
    📍 ブータン・サムツェ県 ⛰️ 1,300〜1,800m

    2024年にUNDPとブータン農業食料省の支援のもと17世帯で設立した種苗生産協同組合。高品質アラビカの苗木供給から始まり、加工・品質管理の技術移転(SCA基準)を進める。2030年までに1,500エーカーを達成するための基幹的農家育成拠点(Medium, 2025)

  • ブータン農業食料省(MoAF)農業振興プログラム Ministry of Agriculture & Food, Bhutan Coffee Program
    📍 ブータン南部5県(サムツェ・サルパン・チランカルビ・ジェムガン・ツィラン) ⛰️ 1,200〜1,900m

    政府主導のコーヒー普及プログラム。5つのナーサリーで苗木を供給し、南部各県への栽培拡大を推進。2024〜2030年の農業計画にコーヒーが重点作物として明記されており、輸出用スペシャルティグレード達成に向けたトレーニングプログラムを各地で展開(NSB農業統計2023・MoAF計画)


精製方法

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫
2
果肉除去
3
水洗い・発酵
4
乾燥
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴

ウォッシュドが主流。 サムツェ県ダムダム工業団地の手加工処理施設でチェリーを果肉除去し、発酵タンクでムシラージを分解後に水洗。天日乾燥はレイズドベッドまたはコンクリートパティオで行われる。有機農法の農場からの果肉はコンポストとして農場に還元される。クリーンで透明感のあるフルーティーなカップキャラクターはこのウォッシュドプロセスから生まれる。一部農家ではナチュラル処理の試験も進んでいる(Bhutan Mountain Coffee, 2024)。


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味 苦味 甘み コク 香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎 深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味 酸味 コク 軽い ブータン サムツェ ネパール グルミ エチオピア イルガチェフェ インドネシア マンデリンG1 インド チクマガルル コロンビア ウィラ

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:87〜91℃
  • 挽き目:中挽き〜中細挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ・エアロプレス
  • 豆の量:12g / 200ml(フローラル感を最大化するなら低め温度・やや短め抽出)

ブータン産アラビカのフローラル・ハーバル感は高温(95℃以上)で揮発しやすい。87〜91℃のやや低温でゆっくりドリップすると、ハチミツのような甘みとフルーツ系の香りが際立つ。エアロプレスでは短時間抽出(1分30秒程度)でクリーンなカップが得られる。


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