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メキシコ ベラクルス

湾岸の古都コアテペック、有機協同組合が磨くアラビカ

メキシコ湾岸のベラクルス州はチアパスに次ぐ国内第2の産地。1808年にラ・オルドゥーニャで栽培が根づき、1989年のINMECAFE解体後は小農が有機協同組合へ再編した。コアテペックの標高1,100〜1,400mでティピカやブルボンを水洗式にし、ミルクチョコとキャラメルの穏やかなカップに仕上がる


産地情報

産地メキシコ・ベラクルス州 メキシコ湾岸山地(コアテペック/ウアツスコ 一帯)
品種ティピカ・ブルボン主体(カトゥーラ・ムンド・ノーボ・ガルニカ・オロ・アステカを併用)
標高800〜1,600m(コアテペック・ウアツスコの中核帯は1,100〜1,400m)
味わいミルクチョコレート・キャラメル・きび砂糖・アーモンド・オレンジ

品種情報

アラビカ種Coffea arabica最高品質

品種:ティピカ / ブルボン(カトゥーラ・ムンド・ノーボ・ガルニカ・オロ・アステカ併用)

ベラクルス州の畑はティピカとブルボンという古い在来種を土台に、収量と耐病性を狙って交配種が重ねられてきた歴史を映す。ガルニカはムンド・ノーボとカトゥーラを掛け合わせた品種で、1960年にメキシコ・コーヒー院(INMECAFE)が育成し、現在も州の生産の約5%を占める。オロ・アステカは国立林業農牧研究所(INIFAP)が15年かけて育成したサビ病抵抗性品種で、レッド・カトゥーラより約37%多い収量を示し、標高600〜1,300mのベラクルスでよく順応する(World Coffee Research/Mercanta 品種資料)

  • ベラクルス州チアパス州・プエブラ州と並びメキシコ全国生産の80%超を占め、2021年には全国第2位の生産州となった(USDA FAS/州政府資料)
  • コーヒーの作付面積州全体で約139,000ha、約100の自治体が生産地として登録されている(SIAP)
  • 2012〜2014年のサビ病(ロヤ)流行で古い在来種の畑が大きな被害を受け、ガルニカ・オロ・アステカ・マルセジェーサ・コスタリカ95といった抵抗性品種への植え替えが進んだ
  • コアテペック「メキシコのコーヒーの都」と呼ばれ、標高の高い区画のロットは「アルトゥーラ・コアテペック」の名で流通する

ベラクルス州とメキシコ湾岸の産地構造

ベラクルス州はメキシコ湾に沿って南北に細長く延びる州で、コーヒー生産量では最南端のメキシコ チアパス州に次ぐ全国第2位(2021年)に位置します。チアパス州・プエブラ州と合わせると、この3州でメキシコ全国生産の80%超を占めます。参考までに、USDA(米国農務省)の2026年報ではメキシコ全国の生産量は2025/26年度で約408万袋(60kg換算)と見込まれています。

州内のコーヒー産地は北部・中部・南部の3ゾーン、10地区に分かれます。北部はウアヤココトラとパパントラ、中部はアツァラン・ミサントラ・コアテペック・ウアツスコ・コルドバ・ソンゴリカ、南部はテソナパとロス・トゥクストラスです。このうち中核となるのが、州都シャラパに隣り合うコアテペックと、その南のウアツスコです。コアテペックは16,000人を超える生産者と約7,000haの作付面積を抱え、ウアツスコは年間でチェリー約21,434トンを5,954haの畑から産出します。いずれも家族経営の小規模畑が大半を占め、メキシコ湾から吹き上げる湿った空気と豊富な降雨、標高1,100〜1,400mの斜面という条件を共有しています。

指標 数値 出典
ベラクルス州のコーヒー作付面積 約139,000ha SIAP
コーヒーを生産する自治体数 約100 SIAP
全国生産に占める順位 第2位(2021年) 州政府/業界資料
コアテペックの生産者数・作付面積 16,000人超・約7,000ha 州政府
ウアツスコの年間生産量・作付面積 チェリー約21,434t・5,954ha 地域報道(El Buen Tono)
メキシコ全国生産量 約408万袋(60kg/2025/26年度) USDA FAS

ラ・オルドゥーニャからINMECAFE解体、そして有機協同組合へ

ベラクルスはメキシコにコーヒーが根づいた最初期の土地の一つです。18世紀末、カリブ海から持ち込まれた種子が湾岸で栽培され、税関の記録では早くも1802年に数百袋が輸出されています。とりわけ知られるのがコアテペックのアシエンダ・ラ・オルドゥーニャで、1808年ごろにキューバ由来の種子でまとまった作付けが行われました。当時の館は現在も残っています。

その後、20世紀にコーヒー産業を大きく動かしたのが国営のメキシコ・コーヒー院(INMECAFE)です。1970年代以降、INMECAFEは小規模農家への信用供与・技術指導・買い取り保証・輸送・国際市場への販売までを一手に担い、この体制下でベラクルスを含む地方の生産は1973〜1990年に地域によって最大900%近く拡大しました。しかし1989年、世界銀行などの要求を背景としたサリーナス政権の自由化政策でINMECAFEは解体されます。同じ1989年に国際コーヒー協定(ICA)の輸出割当制度も崩壊し、国際価格はほぼ半値まで急落、メキシコの生産は約35%減り、農家の収入は約70%落ち込みました。

支援組織を失った小規模農家がとった対応が、自前の協同組合への再編でした。技術指導や資金融通を組合が肩代わりし、付加価値を得るために日陰栽培と有機栽培へ舵を切った結果、メキシコは有機・シェードグロウンのアラビカで世界有数の産地になりました。ウアツスコの「ウアツスコ地域小規模コーヒー生産者連合(URPPCZH)」のような組織は、この流れの中で育ち現在も機能しています。産地の背景をどう確認するかという観点は、フェアトレードとダイレクトトレードの違いの記事でも整理しています。


メキシコ3大産地の比較

同じメキシコのアラビカでも、湾岸のベラクルスと太平洋側・南部の産地では地形も品種構成も異なります。

項目 ベラクルス(本記事) チアパス オアハカ(プルマ)
位置 メキシコ湾岸の山地 グアテマラ国境・シエラマドレ 太平洋側の急斜面
全国シェア 約24%(第2位・2021年) 約31%(第1位) オアハカ州として一桁台
中核産地 コアテペック/ウアツスコ エル・トリウンフォ生物圏保護区 プルマ・イダルゴ地区
主な品種 ティピカ・ブルボン・ガルニカ・オロ・アステカ ブルボン・ティピカ主体 ティピカ系(ピーベリー精選)
精製 水洗式 水洗式 水洗式
味の傾向 ミルクチョコ・キャラメル・穏やかな酸 ナッツ・カカオ・クリーンな酸 ダークチョコ・シナモン・濃密なボディ

ベラクルスの酸は、標高の高い産地に多いシャープなクエン酸系よりも、ぶどうを思わせる酒石酸系のやわらかい酸に寄るのが特徴です。全体にミルクチョコレートとキャラメル、きび砂糖の甘さが前に出る穏やかなカップになります。


代表的な生産者・協同組合

代表的な農園

  • アシエンダ・ラ・オルドゥーニャHacienda La Orduña
    📍 メキシコ・ベラクルス州 コアテペック⛰️ 約1,200m

    1808年ごろにキューバ由来の種子でまとまったコーヒー作付けが行われた、メキシコ最初期の栽培地の一つ。当時の館が現存し、コアテペックがメキシコ・コーヒーの発祥地とされる根拠になっている

  • ウアツスコ地域小規模コーヒー生産者連合(URPPCZH)Unión Regional de Pequeños Productores de Café Zona Huatusco
    📍 メキシコ・ベラクルス州 ウアツスコ一帯⛰️ 1,100〜1,400m

    INMECAFE解体後に育った家族農家中心の協同組合。有機栽培を軸に、選別収穫と水洗式・天日乾燥のロット管理を共同で行う。ウアツスコ一帯は州全体の生産の約23%を占める

  • APGコーヒー/フィンカ・ファティマAPG Coffee / Finca Fátima (Ernesto Pérez)
    📍 メキシコ・ベラクルス州 コアテペック⛰️ 1,200〜1,350m

    コアテペックの生産者エルネスト・ペレスが自家のフィンカ・ファティマの水洗設備を地域向けのマイクロ・ウェットミルへ拡張。土壌回復と品質向上のための営農コンサルティングも周辺農家に提供している


精製方法

水洗式が主流。 収穫したチェリーはパルパーで果肉を除き、発酵槽で粘液質を分解して洗浄したのち、屋外パティオでの天日乾燥で仕上げる。小規模畑が多いため、協同組合の共同ウェットミルに集約して品質を揃える取り組みが進む。工程ごとの違いはコーヒーの精製方法ガイドを参照。

精製方法

💧

ウォッシュド

Washed / Wet Process

1
収穫
2
果肉除去
3
水洗い・発酵
4
乾燥
5
脱穀
ボディ
2/5
クリアさ
5/5
発酵感
2/5

豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴


フレーバーチャート

フレーバーチャート

酸味苦味甘みコク香り
酸味
苦味
甘み
コク
香り

公開ロット情報と地域の一般的傾向に基づく編集上の目安です。特定ロットの評価や試飲記録ではありません(編集方針)。


おすすめの焙煎度

おすすめの焙煎度

ライト焙煎深煎り

ミディアム ロースト


ポジショニングマップ

ポジショニングマップ

苦味酸味コク軽いメキシコ ベラクルスメキシコ チアパスメキシコ ピーベリーグアテマラ ウエウエテナンゴコスタリカ トレス・リオスブラジル サントスNo.2エチオピア イルガチェフェ

淹れ方のポイント

  • お湯の温度:89〜92℃
  • 挽き目:中挽き
  • 抽出方法:ペーパードリップ
  • 豆の量:12〜13g / 200ml(チョコレートとキャラメルの甘さを軸に、酸をやわらかく残すレシピ)

📏 基準のエビデンス

  • 豆の量:SCA(米スペシャルティコーヒー協会)Golden Cup基準 1:18(200mlで11g)/日本式 1:14〜1:16(200mlで12〜14g)。本ブログは焙煎度別に世界寄りの中間値を採用
  • お湯の温度:SCA基準 90〜96℃(93℃±3)/日本式は焙煎度に応じて低めを好む。本ブログは焙煎度別に世界+日本式の折衷を採用
  • 出典:SCA Coffee Standards / Specialty Coffee Association

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