フィリピン コルディリエラ山岳地帯
4種のコーヒーがすべて育つ、アジア唯一の山岳産地
世界で4種のコーヒー原種すべてを商業生産できる稀有な国・フィリピン。北ルソン島のコルディリエラ山脈では、イゴロット族が受け継ぐベンゲット・アラビカ(Slow Food Ark of Taste登録)とカリンガ産有機ロブスタが並び立つ。シベット由来のカペ・アラミドは野生採取が主流で、同種の東南アジア産と一線を画す産地です
産地情報
| 産地 | フィリピン・コルディリエラ行政地域(ベンゲット州・カリンガ州) |
|---|---|
| 品種 | アラビカ(ティピカ)/ロブスタ/リベリカ(バラコ)/エクセルサ |
| 標高 | 約900〜2,500m(コルディリエラ山岳地帯) |
| 味わい | シトラス・アプリコット・ナッツ・カラメル・穏やかな酸味 |
品種情報
品種:ベンゲット・ティピカ(Benguet Arabica)
19世紀にスペイン人入植者がコルディリエラ高地に持ち込んだティピカ種が、イゴロット族の農家によって100年以上にわたって在来管理されてきた在来系統。標高1,200〜1,800mの松林・アルナスの木陰で有機農法に近い形で栽培され、ハワイアン・コナやジャマイカ・ブルーマウンテンに比肩する酸質をもつと評される。Slow Food「Ark of Taste(食の味方)」に登録されたフィリピンを代表する遺産品種
- スペイン植民地時代(19世紀)に導入されたティピカ由来
- Slow Food Ark of Taste(2016年登録)
- 松・アルナスの混栽シェードグロウン
- クリーンな酸質をもつコルディリエラ原産品種
フィリピン・コーヒーとは
フィリピンは世界で唯一、アラビカ・ロブスタ・リベリカ・エクセルサの4種を商業生産する国です。Philippine Coffee Boardによれば、生産比率はロブスタが約69%と最大で、アラビカが約23%、エクセルサが約7%、リベリカが約1%を占めます。
生産の中心は南部ミンダナオ島(全体の64%)ですが、スペシャルティとして注目を集めるのが北ルソン島の**コルディリエラ行政地域(CAR)**です。ベンゲット州・カリンガ州・マウンテン州・イフガオ州など複数の山岳州で構成され、石造棚田で知られるコルディリエラの山肌がコーヒー産地としても機能しています。
代表的な産地・銘柄
代表的な農園
- ベンゲット・アトック/バクン Atok / Bakun, Benguet🏆 Slow Food Ark of Taste(ベンゲット・アラビカ)
ベンゲット州内でもアトック・ラ・トリニダッド・バクン周辺が主産地。バクンは標高2,500m前後まで達する特殊高地エリアで、スペシャルティグレードの単一農園豆が輸出されている。品種はスペイン由来のティピカで、有機的な混栽農法が一般的
- カリンガ州(山岳有機ロブスタ) Kalinga Province
コルディリエラ山脈の奥地に位置し、ルブアガン周辺の小規模農家が有機栽培ロブスタを生産。ダークチョコレート・クルミ・クリームのノートが特徴で、海外(米ニューオーリンズ等)にも輸出される高地ロブスタとして評価されている
- カペ・アラミド(野生シベットコーヒー) Kape Alamid
フィリピン固有のパームシベット(Paradoxurus philippinensis/ムサン)が食べたコーヒーチェリーの豆を農家が手作業で回収。インドネシア産コピ・ルアックと異なり、飼育ケージ型の大規模生産が発達していないため、フィリピン産は野生採取品が主流。チェリーの熟度選別が自然に行われ、なめらかで酸味が穏やかなカップになる
4種混栽国の背景
フィリピンでリベリカ(バラコ)が生き残っている背景には19世紀のコーヒー産業史があります。1860〜1880年代、スペイン植民地下のフィリピンはコーヒーの主要輸出国で、主力はアラビカでした。しかし1889年前後にコーヒーサビ病(Hemileia vastatrix)が上陸し、アラビカが壊滅。代替として耐病性の高いリベリカが導入され、バタンガス州・カビテ州を中心に「カペン・バラコ(Kapeng Barako)」として普及しました。
その後ロブスタ・エクセルサが加わり、現在の4種体制になっています。この多様性はフィリピン独自の農業史と地形の産物であり、他のコーヒー大国にはほぼ見られません。
精製方法
精製方法
ウォッシュド
Washed / Wet Process
豆本来の味が際立つクリーンカップ。明るい酸味とクリアな風味が特徴
フレーバー
フレーバーチャート
- ベンゲット・アラビカ: シトラス・レモン・アプリコット・ナッツ、中程度の酸味、軽めのボディ
- カリンガ・ロブスタ: ダークチョコレート・クルミ・クリーム、フルボディ
- カペ・アラミド: なめらかな口当たり、アースィー・キャラメル・複雑な発酵香
焙煎度
おすすめの焙煎度
ミディアム ロースト
ベンゲット・アラビカは浅〜中煎りでシトラスとナッツの繊細さが最もよく出ます。カリンガ・ロブスタや深みを楽しみたい場合は中深煎りまで引き上げると、チョコレートとクリームのノートが強まります。
ポジショニング
ポジショニングマップ
淹れ方のポイント
- お湯の温度:88〜92℃(浅煎り)/ 85〜90℃(中深煎り)
- 挽き目:中〜中細挽き
- 抽出方法:ペーパードリップ(ベンゲット・アラビカ)/フレンチプレス・エスプレッソ(カリンガ・ロブスタ)
- 豆の量:12〜14g / 200ml(12g → 繊細なシトラスと花香、14g → ナッツとカラメルのコクが増す)
参考文献・情報ソース
- Benguet coffee - Wikipedia
- Benguet Arabica Listed in Ark of Taste - Philippine Coffee Board
- Coffee production in the Philippines - Wikipedia
- Philippine Coffee - Philippine Coffee Board
- Coffee Country: Exploring Philippine Coffee Regions and Provinces - ECHOstore
- Philippines Premium Robusta Green Coffee. Kalinga, Cordillera Mtns - NOLA Coffee Import
- Benguet Coffee: A Rare Treasure of Northern Philippines - XLIII Coffee
- Benguet Coffee - Arca del Gusto - Slow Food Foundation
コメント
コメントを書く