S795(S.795)
S795
S795は、インドで1940年代に公開されたアラビカの品種です(インド・コーヒー委員会〈Coffee Board of India〉による)。World Coffee Research(WCR)の品種カタログでは、S288とケントの交配に由来し、S288はリベリカ種との交雑に由来する系統とされています。WCRはさび病への耐性を目的に選抜された品種と説明していますが、インドでの比較では感受性とする評価もあり、地域や病原菌のレースによって評価が異なります。WCRは育成者として中央コーヒー研究所(CCRI)を挙げています。育種の原記録、公開の正確な年、インド国内での栽培の割合は、一次資料では確認できていません。
インドネシアでは、地理的表示(GI)の文書にS795が挙がっています。スマトラ島ガヨ高地のGI申請書は、原料として認める5品種(ティムティム、アテン・ジャルク、ボルボル、P-88、S795)の一つにS795を挙げています。フローレス島バジャワのGI仕様(EU官報)にもS795が含まれます。オーストラリア国際農業研究センター(ACIAR)の報告書は、調査時のスラウェシ島トラジャの小農家のアラビカはほぼS系統で、S795がおそらく最も人気のある品種だったとしています。豆を選ぶときは、GIの産地名まで明記されたロットを選ぶと、栽培地の情報をたどりやすくなります。
訂正(2026-10-14): S795を「1945〜46年、インド・バレホンヌール・コーヒー研究所が育成した」「さび病耐性と高収量を両立させました」「インドネシアなど東南アジアにも広まりました」と記載していましたが、一次資料で確認できたのは1940年代にインドで公開されたこと(インド・コーヒー委員会)で、1945〜46年という年は確認できませんでした。育成機関は、World Coffee Research(WCR)の品種カタログが育成者として挙げる中央コーヒー研究所(CCRI)として示しました(育種の原記録は未確認)。さび病への耐性はWCRで確認できる「耐性を目的に選抜」の範囲に改め(ジャワ イエン高原の記事の2026-10-05の訂正)、普及はGIの文書(ガヨ、フローレス バジャワ)とACIARの報告書で確認できるインドネシアの範囲に限定しました(スラウェシ トラジャの記事の2026-09-29の訂正)。あわせて、一次資料で確認できない「高収量」「インドの栽培面積の約25〜30%」「ティピカ系統のケント」、キャラメルやミルクチョコレートの風味、標高1000m以上という目安の記述を外しました。
インドネシア アチェ ガヨ
EU地理的表示の仕様書から読む、アチェ高地の一杯
インドネシア・アチェ州ガヨ高地のアラビカ。アチェ・テンガ、ブナー・ムリア、ガヨ・ルスの3県が地理的表示(GI)の対象で、国内登録は申請書で2010年、EU登録は2017年。仕様書の標高・品種・精製・組合の数字から産地の輪郭を読み解きます
インド アラクバレー
東ガーツ山脈の丘陵で部族農家が育てる、GI登録のアラビカ
アンドラ・プラデシュ州アラク渓谷のアラビカは、2019年に地理的表示(GI)「アラクバレー・アラビカ」として登録された NGOナーンディ財団の支援を起点に部族農家の協同組合が生産を担い、ブランド「アラクコーヒー」として輸出されている
インド クールグ
ロブスタ7割超、香辛料と共栽培し、インドの生産の35%を担う産地
カルナータカ州クールグ(コダグ)県は、県の資料で年間生産量がインド全体の35%にあたるコーヒー産地で、栽培面積の7割超をロブスタが占める 2019年にGI認証を受けた「クールグ・アラビカ」はS.795などの伝統品種が対象で、カルダモンや胡椒と同じ樹冠の下で栽培される
インド チクマガルル
バーバブーダンの7粒の伝承が残る、インドコーヒー発祥の地
17世紀にスーフィー聖者バーバブーダンがイエメンから持ち帰った7粒の種から始まったと伝わるインドコーヒー発祥地チクマガルル。標高700〜1,200mのマルナード高地で栽培されるアラビカの品種(S.795、カーヴェリ、セレクション9)と、インド・コーヒー委員会の資料を紹介します
バリ キンタマーニ
2008年のGI登録が刻む火山カルデラの柑橘フローラルコーヒー
バリ島キンタマーニ高原は標高900m超(GI認定区域)の火山性土壌にコピョル・S795・USDA 762を育てる、2008年にGI(地理的表示)登録された産地。トリ・ヒタ・カラナ哲学に根ざした農法から、柑橘とホワイトフラワーのクリーンな一杯が生まれる
フローレス バジャワ
火山の山麓とウェットハル精製のフローレス島の高地コーヒー
インドネシア・フローレス島バジャワ高地は標高1,000mを超える火山の山麓に広がる新興スペシャルティ産地。ギリン・バサ(ウェットハル)精製で仕上げられ、りんごのような酸・ブラウンシュガー・シナモンの風味で紹介される
スラウェシ トラジャのコーヒー|ウェットハル精製と山岳地帯の産地・味
トラジャの高地で育ち、ウェットハル精製で仕上げるアラビカ
インドネシア・スラウェシ島トラジャの山岳地帯。北トラジャのコーヒー栽培適地は標高1,200〜1,700m(トラジャ・キリスト教大学の研究)。インドネシアで広く使われるウェットハル精製(ギリン・バサ)で仕上げられ、濃厚なボディとダークチョコレート・黒胡椒のフレーバーで紹介される
インド モンスーンマラバールとは|南西モンスーン期の湿った季節風にさらして仕上げる独自の精製と味
南西モンスーンの風雨で熟成させるインド独自の精製スペシャルティ
カルナータカ州チクマガルル・クールグを中心に栽培されたアラビカを、南西モンスーン期にマラバール海岸で数週間〜数か月風雨にさらす独自精製です。豆は2倍近くに膨らみ、酸味が抑えられ、低酸・重厚なボディとスパイス・ダークチョコの風味を持つ一杯になります。GI登録された産地限定の希少なインドコーヒーです
参考文献・情報ソース