カティモール(Catimor)
カティモール
カティモールは、カトゥーラとティモール・ハイブリッドの交配に由来する品種群です。World Coffee Research(WCR)によると、ティモール・ハイブリッドは1920年代に東ティモールでアラビカ種とカネフォラ種(ロブスタ)が自然に交雑して生じた系統で、さび病に強い品種の育種に使われ、カティモールやサルチモールの交配親になりました。同じカトゥーラ×ティモール・ハイブリッドの組み合わせから選ばれたホンジュラスの品種レンピラについて、ホンジュラス・コーヒー協会(IHCAFE)の資料は、親系統が1959年にポルトガルのコーヒーさび病研究センター(CIFC)で交配され、IHCAFEが1982年に複数の系統を試験導入したとしています。ただしIHCAFEとCATIEの報告では、調査の時点でレンピラはさび病に感受性とされています。
カティモールの系統は各地で別の名前でも育てられています。WCRによると、マラウイの「ニャイカ」はカティモール129の現地での呼び名です。タイのドイトゥンでは、日本の地理的表示の登録情報(農林水産省、第138号)でカティモール系の栽培が確認できます。ケニアの複合交配品種ルイル11も、WCRによるとカティモールを母系としています。中南米・アジアへ広まった時期ときっかけ、風味の特徴は、このページでは一次資料で確認できていません。豆を選ぶときは、品種欄に「カティモール」とあっても系統は一つではないため、産地の記事で具体的な系統名を確かめると育種の背景が見えてきます。
訂正(2026-10-14): 「1959年にポルトガル・CIFCが…レッドカトゥーラを交配して作った品種」「1970年代のブラジルでのさび病大流行を機に耐病性の強さを買われ、中南米・アジア各地へ広まりました」と記載していましたが、World Coffee Researchではカティモールはカトゥーラとティモール・ハイブリッドの交配に由来する品種群とされ、1959年のCIFCでの交配はIHCAFEの資料でレンピラの親系統として確認できる範囲で、「レッド」カトゥーラと1970年代のブラジルのさび病をきっかけとする普及は一次資料で確認できないため改めました(マレーシア サバ、フィジーの記事の訂正に合わせました)。あわせて、一次資料で確認できない「ロブスタ由来の血を引くため、風味は素朴でボディ寄りになりやすい」の記述を外しました。
南アフリカ クワズール・ナタール
標高100m台の海沿いの農園を含む小さな産地
南アフリカのコーヒーは国土全体で約200ha・年120トン規模、国際コーヒー機関(ICO)にも加盟していない小さな産地です。南ア農業省の資料による栽培の歴史、標高100m台で栽培するポート・エドワードの農園Beaver Creek、SL28・カトゥアイ・カティモールF6を紹介します
タイ ドイトゥン
アヘン畑を森に変えた王室財団のアラビカ
タイ北部チェンライ県、故シーナカリン王太后が1988年に始めたドイトゥン開発プロジェクトがアヘン畑と荒廃林をアラビカの森へ変えた産地。標高800〜1,200mでカティモール系などを育ててウォッシュド精製、柑橘とナッツ、ミルクチョコレートの穏やかなカップでEU・日本のGIにも登録
タイ ドイチャン
アヘン畑から高地アラビカへ、アカ族が築いた協同組合
タイ北部チェンライ県ドイチャン、アヘン代替作物政策のもとアカ族・リス族が育てたアラビカが標高900〜1,600mで農家協同組合による直接輸出モデルへ成長、ダークチョコレートとキャラメル、オレンジ系シトラスが層をなすスペシャルティ産地
ペルー プーノ
2010年SCAAピープルズ・チョイス賞のトゥンキ、コカ畑から生まれ変わった渓谷
ペルー南東部プーノ県サンディア郡、アンデスと熱帯雨林が接する渓谷。標高約800〜2,059mでティピカ中心のフルウォッシュド。協同組合セコバサのブランド「トゥンキ」は2010年SCAAのピープルズ・チョイス賞を受賞。かつてコカ栽培地だった谷がコーヒーで生まれ変わった産地
マラウイのコーヒー|ミスク・ヒルズ(チティパ県)の産地・品種と味
タンザニア国境の高地——チティパ県で育つ、ベリーと透明感のカップ
マラウイ(マラウィ)最北部チティパ県、タンザニア国境沿いのミスク丘陵で栽培されるアラビカ。標高1,700〜2,000m、ニャイカ(カティモール129)・ゲイシャなどをウォッシュド精製し、ベリーやストーンフルーツのような酸味とフローラルな香りで紹介される
ベトナム ソンラ
ベトナム北西部の山岳地帯に広がるアラビカ産地
1990年代前半から大規模栽培が広がったベトナム北西部ソンラ省のアラビカ産地(2023/24年度のコーヒー栽培面積は20,708ha、省の報道)と、ビッチャオ協同組合のハニープロセスによる付加価値化の事例を紹介
ペルー サンマルティン
国内生産の約2割を担う州、アルト・マヨが生む温和なチョコとナッツ
ペルー北東部サンマルティン州、アルト・マヨ高地を中心とする、国内生産の約2割を担う産地で、カトゥーラ・ティピカ・カティモール主体のウォッシュド。協同組合アルト・マヨ(COOPBAM)に500名超の組合員が加わり、チョコレート・ナッツ・キャラメルの温和な甘みを生む
ベトナム ダラット
ロブスタが約96%を占める国で、ダラット近郊の高原で栽培されるアラビカ
生産量の約96%がロブスタというベトナムで、ダラット近郊の高原カウダットが持つアラビカの顔を、ラムドン省の公的資料とUSDAの統計から探ります
マレーシア サバ州
ボルネオ島北部、北緯6°前後のラナウ高地で育つサバ州のアラビカ
ボルネオ島北部、北緯6°前後のサバ州ラナウ高地で育つアラビカ。州の農業局が苗を供給していると報じられ、取材された生産者では木の大半がカティモール。紹介された農園の標高は1,300〜1,500m、精製はウォッシュド・ハニー・ナチュラル
バヌアトゥ タナ島(Tanna)のコーヒー|活火山ヤスール山の火山灰が積もる高原で育つ南太平洋のアラビカ
活火山の灰が積もる南太平洋の島で育つアラビカ
バヌアトゥのタナ島は、活火山ヤスール山の火山灰が積もる高原でアラビカ種が育つ南太平洋の産地。1984年設立のタナ・コーヒー・ディベロップメント・カンパニー(TCDC)が農家の豆を買い取り、国際市場に出す。導入の歴史、品種、精製方法、味の特徴をまとめる
モザンビーク ゴロンゴサ|コーヒーの味・産地・野生種ラセモサ
内戦を経た国立公園の山で、在来樹の下に育つアラビカと野生種ラセモサ
モザンビーク コーヒーはどんな味か。ゴロンゴサ国立公園の山で2015年に最初の種子が植えられたCatimor系コスタリカ95は、生産者などがウォルナットやマイヤーレモンのノートと紹介するカップ。Slow Food財団がハーブ香と低カフェインを紹介し、IUCNレッドリストで準絶滅危惧に評価される在来の野生種Coffea racemosaとあわせて解説します
ジンバブエ 東部高地
土地改革で生産が崩れた東部高地、チピンゲとホンデバレーで進むアラビカの復興
1990年前後には年1.4万トン規模の生産があったジンバブエのコーヒーは、2000年からの土地改革で生産が崩れ、東部高地チピンゲ〜ホンデバレーで復興が進む。CatimorとSL系を主体とするウォッシュドで、Nespressoなどの製品紹介ではベリー様の明るい酸味とワイン・チョコのノートが重なると紹介されています
ラオス ボラベン高原のコーヒー|南部の火山性台地に広がるラオスの中心産地と品種
玄武岩の台地に広がる、協同組合が支える高原アラビカ
ラオス南部のボラベン高原は、同国のコーヒーの中心産地。標高800〜1,350m(ラオスコーヒー協会)の玄武岩の台地で、ティピカ・ブルボン・カティモールが育つ。約1,855世帯が参加するCPC協同組合(FAO資料)とウォッシュドの精製をまとめる
ザンビアのコーヒー|ノーザン州・ムチンガ州の産地・品種と味の特徴
ムチンガ山脈の台地が育む——SL28とカティモールが交差する、チョコ&シトラスのクリーンカップ
ザンビアのコーヒーは、北部のノーザン州と2011年に新設されたムチンガ州にかけての高原が中心の産地。世界銀行の資料による栽培史、SL28・カティモール129の品種、ウォッシュドのレモンとダークチョコのような味(販売店の紹介)を、確認できた範囲で解説
マラウイ ムズズ
ミスク山の高地で栽培される、繊細なシトラスと花香のアラビカ
北部ミスク丘陵・ヴィフィヤ丘陵の標高1,000〜2,000mで栽培されるマラウイのスペシャルティアラビカ。ゲイシャ・ニャイカ(Catimor 129)・SL28が混在し、ウォッシュド精製が主流。味わいの目安(本ブログの整理):シトラス・カラメル・フローラル
中国 雲南のコーヒー|生産量・歴史・精品率で見る中国最大の産地
Yunnan coffeeを数字・歴史・抽出から知る
中国政府が国内コーヒー生産の98%を占めると紹介する雲南省。2024年の生産量約15.0万トン、保山GI、精品率31.6%への品質転換を公式資料で解説
参考文献・情報ソース