コーヒー農園の児童労働・強制労働は、どの国で報告されているのか|米国労働省のリスト2024年版で17か国を読む

「載っている」は何を意味し、「載っていない」は何を意味しないのか

米国労働省の児童労働・強制労働リスト2024年版でコーヒーが挙がる17か国と区分を、リストの載せ方の指針とあわせて整理します


この記事の要点

  • 米国労働省(ILAB)の「児童労働または強制労働で作られた品目のリスト」2024年版(2024年9月5日現在)で、コーヒーが載っている国は17か国。全17か国に「児童労働」の印があり、「強制労働」の印はブラジルとコートジボワール、「強制児童労働」の印はコートジボワールだけ
  • リストの載せ方の指針は、1つの会社・施設だけの情報や孤立した事例は載せる根拠になりにくく、7年より古い情報は原則として使わないと定めている。「載っている」は、その国のコーヒー全体の状態の測定値ではなく、一定の基準で集めた情報に基づく判断
  • エチオピア、ペルー、インドネシア、インドは別の品目ではリストに載っているが、コーヒーでは載っていない。載っていないことが「問題がない」ことを示すかどうかは、リストからは分からない
  • 児童労働の定義は、15歳未満の全ての労働と、18歳未満の最悪の形態の労働。国の法律が特に認めた作業などは対象外とされている。家の手伝いが当たるかどうかは、指針からは判断できない
  • 各国で何人の子どもが働いているかという数字は、この記事では確認できていないため載せない

結論から書くと、米国労働省の「児童労働または強制労働で作られた品目のリスト」2024年版でコーヒーが挙がっている国は17か国で、全ての国に児童労働の印があり、強制労働の印があるのはブラジルとコートジボワールだけです。 ただしこのリストは、各国のコーヒー農園で何人の子どもが働いているかを測ったものではありません。一定の基準で集めた情報から「この国のこの品目に、児童労働または強制労働がある」と判断した記録です。

この記事では、リストのExcel版を開いてコーヒーの行を取り出し、リストの載せ方を定めた指針(連邦官報に載った手続きの指針)と並べて、「載っている」「載っていない」をどう読めばよいかを整理します。各国の児童労働の人数や、個々の農園の状況は、確認できた資料がないため書きません。

リストは何で、どう作られているのか

このリストは、米国労働省の国際労働局(ILAB)が、人身取引被害者保護法(TVPRA)の再承認法に基づいて作り、公開しているものです。公式ページによると、ILABは「国際基準に違反して児童労働または強制労働で作られていると信じる理由がある」品目を載せていて、2年に1度更新します。2024年版は2024年9月5日現在で、ページには「204品目、82か国・地域」と表示されています。

載せ方の指針(2024年1月25日の官報に載った改正通知)は、集めた情報を次の5つの観点で評価するとしています。

  1. 情報の性質:児童労働・強制労働の定義に当てはまり、関連があるか
  2. 情報の日付:受け取った時点で7年以内のもの。それより古い情報は、原則として考慮しない
  3. 情報源:方法論や実績、国際労働基準への理解から見て、信頼できるか
  4. 裏づけの程度:他の情報源でどれだけ裏づけられているか
  5. 重大な発生(significant incidence):その国・その品目で、児童労働・強制労働の発生が「重大」と言えるか

5つ目について指針は、1つの会社・施設だけに関する情報や、孤立した事例を示す情報は、載せる判断を支える材料にはなりにくいとしています。一方で、業界全体の「パターン」とまでは言えなくても、特定の品目で重大な発生を示す情報は、載せる方向で扱うとしています。

つまり「載っている」は、「その国のコーヒーのどこかに子どもが働く事例がある」ではなく、「基準を満たす情報が集まり、重大な発生があると判断された」という意味です。他方、提出を受けて除外を検討するときには、提出する側が「重大な発生がない」ことを示す情報を出す必要があります。

2024年版でコーヒーが挙がる17か国

Excel版の「Goods」シートには、国・品目・児童労働・強制労働・強制児童労働の列があります。品目が「Coffee」の行を取り出すと、17行でした(国名は日本語にしています)。

国 児童労働 強制労働 強制児童労働
ブラジル ○ ○
コロンビア ○
コスタリカ ○
コートジボワール ○ ○ ○
ドミニカ共和国 ○
エルサルバドル ○
グアテマラ ○
ギニア ○
ホンジュラス ○
ケニア ○
メキシコ ○
ニカラグア ○
パナマ ○
シエラレオネ ○
タンザニア ○
ウガンダ ○
ベトナム ○

○はExcel版で「X」の印があるところです。強制労働の印があるのはブラジルとコートジボワール、強制児童労働の印があるのはコートジボワールだけで、残りの15か国は児童労働の印のみです。

地域で分けると、中南米・カリブがブラジル、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマの10か国、アフリカがコートジボワール、ギニア、ケニア、シエラレオネ、タンザニア、ウガンダの6か国、アジアがベトナムの1か国です。

Excel版の全体(Goodsシート)は478行、80か国・地域、169品目でした。品目ごとの国の数では、金(28か国)、レンガ(20)、サトウキビ(19)に次いで、タバコとコーヒーが各17か国です。ページが最も多く挙がる農産物として挙げる7品目を、Excel版の国と品目の組を数えて並べると、サトウキビ(19)、コーヒーとタバコ(各17)、綿と牛(各16)、魚(15)、米(13)の順です。ページには、最も多く挙がる農産物としてサトウキビ、綿、コーヒー、タバコ、牛、米、魚が挙げられており、コーヒーは農産物の中で挙がる国が多い品目のひとつです。なお、ページの見出し(204品目、82か国・地域)とGoodsシートの数は一致していません。Excel版にはもう1枚「Downstream Goods」シート(川上の品目が原料に使われる川下の品目)があり、このシートにコーヒーはありませんでした。見出しの数との差の理由は、この記事では確かめていません。

記事で扱っている産地との関係

17か国の多くは、このサイトで産地の記事を書いている国です。リストに載っていることと、その産地の個別の農園の状況は別の話で、リストだけから個々の銘柄の状況は分かりません。産地の背景は各記事を参照してください。

「載っていない」は何も意味しない

このリストでコーヒーが載っていない国の中にも、別の品目では載っている国があります。Excel版で確かめると、次のとおりです。

  • エチオピア:牛、金、カート、手織りの織物の4品目(コーヒーなし)
  • ペルー:ブラジルナッツ、レンガ、コカ、花火、魚、金など7品目(コーヒーなし)
  • インドネシア:魚、サンダル、金、ニッケル、パーム果実、ゴムなど8品目(コーヒーなし)
  • インド:28品目(コーヒーなし)

エチオピア、ペルー、インドネシアはコーヒーの主要な産地ですが、リストにコーヒーは載っていません。指針の仕組みから言えるのは、情報の日付(原則7年以内)、情報源、裏づけの程度、重大な発生かどうかを考慮して総合的に判断するということです。載っていない理由が、実際に児童労働・強制労働がないからなのか、基準を満たす情報が集まっていないからなのかは、リストからは分かりません。載っていない国のコーヒーが「問題なし」と読める根拠は、この資料にはありません。

「児童労働」の定義を確かめる

リストの指針は、「児童労働」を次のように定義しています。

  • 15歳未満の人の全ての労働
  • 18歳未満の人の、最悪の形態の労働:奴隷またはそれに類する慣行、売春・ポルノ、薬物の生産・取引などの違法行為、そして「その性質または状況から、子どもの健康・安全・道徳を害するおそれのある仕事」

最後の「害するおそれのある仕事」に何が当たるかは、各国の法律や所管官庁が、使用者と労働者の団体と協議して決めるとされています。また、この定義は、国の法律が特に認めた作業(学校などでの作業を含み、国際基準に沿い、所管官庁の定める条件のもとで、通学を妨げないもの)には適用されないとあります。

「強制労働」の定義は(一部を抜粋すると)、罰の脅しのもとで強いられ、自発的に申し出たものではない仕事や役務で、強制・詐欺・脅迫によって得られた労働を含むとされています。

指針の定義は「15歳未満の全ての労働」が基本で、除外は国の法律が特に認めた作業などです。子どもの家の手伝いが当たるかどうかは、指針からは判断できません。条件によって当たる場合と当たらない場合があり、リストの印だけでは、どの働き方を指すのかは分かりません。各国の根拠の報告書(2024年版の全文報告書)は、この記事では開けておらず、各国の具体的な状況は書けません。

認証や規制との関係

児童労働・強制労働は、認証の基準にも条文として入っています。たとえば、フェアトレードの小規模生産者組織の基準は15歳未満の雇用を認めず、レインフォレスト・アライアンスの農園基準も児童労働・強制労働を禁止し、評価して対処する仕組みを求めています。条文の比較は認証ラベルの比較の記事にあります。認証と直接取引の違いはフェアトレードとダイレクトトレードの比較にあります。

輸入側の規制では、EUの森林破壊防止規則(規則 (EU) 2023/1115、EUDR)が、コーヒーを含む産品に「森林破壊のないこと」と「生産国の関係法令に沿って生産されたこと」を求めています(2023年6月公布の原文の第3条。ほかに、デューデリジェンス・ステートメントの対象であることも条件)。第2条(40)は、この関係法令を「生産地域の法的地位に関する」生産国の法律と定め、その分野に、労働者の権利(labour rights)と国際法で守られる人権を挙げています。労働の面で求められるのは、生産国の法律に沿っているかどうかで、米国労働省のリストの国や区分に応じた扱いは、この原文には見当たりませんでした。その後に改正があったかも含めて、現行の条文は、この記事では確かめていません。規則の内容はEUDRの記事にあります。また、農家の手取りや価格の背景はコーヒーの価格の記事とブラジルのコーヒー経済で扱っています。

確認できたこと・確認できなかったこと

確認できたこと

  • 米国労働省ILABの公式ページで、2024年版が2024年9月5日現在、204品目・82か国・地域と表示されていること、2年に1度更新されること、最も多く挙がる農産物にコーヒーが入っていること
  • Excel版(Goodsシート)でコーヒーの行が17行あり、国名と区分(児童労働・強制労働・強制児童労働)が上の表のとおりであること。Downstream Goodsシートにコーヒーがないこと
  • Excel版(Goodsシート)で、国と品目の組が478、国・地域が80、品目が169あること。品目別の国の数は、金28、レンガ20、サトウキビ19、コーヒー17、タバコ17、綿16、牛16、魚15、米13(数え直して確かめた)
  • 2026-10-30時点で、ILABの公式ページが2024年版を現行の版として表示し、2026年版の記載がないこと
  • 載せ方の指針(2024年1月25日の官報の通知)の、5つの観点、7年の期間、孤立した事例の扱い、児童労働・強制労働の定義
  • 2024年9月5日の官報の通知に、次の版を2026年に公表すると書かれていること
  • EUDR(規則 (EU) 2023/1115)の第2条(40)に、関係法令として労働者の権利(e)と国際法で守られる人権(f)が入っていること(2023年6月公布の原文を開いた。現行の条文は未確認)

確認できなかったこと(未確認)

  • 17か国それぞれの根拠となった調査・年・人数(2024年版の全文報告書と参考文献が開けなかった)
  • EUDRの2024年以降の改正後の現行条文(第2条(40)・第3条が原文のままか)
  • ページの見出し(204品目・82か国・地域)とExcel版Goodsシート(169品目・80か国・地域)の数の差の理由
  • ILO(国際労働機関)の報告など、リスト以外の資料での各国の状況
  • リストにコーヒーが載っていない国で、実際に児童労働・強制労働がないかどうか
  • 17か国のうち、輸出向けの農園と国内向けの農園のどちらで報告されているか、または日本に輸入される豆と関係があるか

次回の更新手順:公式ページ(List of Goods)から最新版のExcelを取得し、Goodsシートの「Good」列が「Coffee」の行を抽出して、表を差し替えます。版の日付と、次の版の公表予定(2026年)を確かめてください。

参考文献・情報ソース

よくある質問

米国労働省のリストでコーヒーが挙がっているのはどの国ですか?
2024年版(2024年9月5日現在)のExcel版の一覧では、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、コートジボワール、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ギニア、ホンジュラス、ケニア、メキシコ、ニカラグア、パナマ、シエラレオネ、タンザニア、ウガンダ、ベトナムの17か国です。全てに児童労働の印があり、強制労働の印はブラジルとコートジボワールにあります。
リストに載っている国のコーヒーは買わないほうがよいのですか?
リストだけでは判断できません。リストは、基準に沿って集めた情報に基づき「その国のその品目に、児童労働または強制労働がある」と判断したもので、特定の農園・銘柄・輸入業者を名指ししていません。リストの目的は、公式ページで「懲罰的なものではない」と説明されています。個々の袋については、認証の基準やトレーサビリティの情報を確かめるのが、文書に沿った読み方です。
リストにないエチオピアやペルーは、問題がないということですか?
そうは言えません。リストの指針は、情報の日付(原則7年以内)や裏づけの程度などを考慮して総合的に判断しています。載っていない理由が「問題がない」からなのか、「基準を満たす情報がないから」なのかは、リストの表からは分かりません。
リストはいつ更新されますか?
公式ページによると、2年に1度更新されます。2024年9月5日の官報の通知には、次の版は2026年に公表すると書かれています。この記事は2026年10月30日時点で2024年版を引いているため、次の版が出たら国名と区分を確かめ直してください。

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