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中南米コーヒー産地大全|コロンビア・グアテマラ・コスタリカ・ホンジュラス・ペルー比較

詳しく

5か国の生産量・標高・品種・精製・格付け制度を一表で比較

コロンビア・グアテマラ・コスタリカ・ホンジュラス・ペルーの5か国を、USDAなど一次資料で生産量・標高・品種・精製・格付け制度・風味傾向まで横断比較します


この記事の要点

  • 5か国の2025/26年度生産量はコロンビア1,250万袋、ホンジュラス553万袋、ペルー476万袋、グアテマラ316万袋、コスタリカ116万袋で、合計は世界の約15%(USDA 2026年7月版)
  • 格付けの物差しは国ごとに違い、グアテマラは標高(SHB)、コロンビアは豆のサイズ(スクリーン)、ホンジュラスは標高による等級(SHG・HG)で、同じ記号でも比較できない
  • さび病への対応は、コロンビアの耐病性品種比率87%、ホンジュラスのパライネマ導入、ペルーの被害約4割と、国ごとに段階が違う

中南米は、コーヒーの店頭に最も多く並ぶ産地群です。コロンビア、グアテマラ、コスタリカ、ホンジュラス、ペルーの5か国だけで、USDA(米国農務省)の2025/26年度推計では世界生産の約15%を占めます。ところが「中南米産」とひと括りにされると、国ごとの違いが見えなくなります。コロンビアは生産量が桁違いで全国に産地が散らばる国、グアテマラはアナカフェ(グアテマラ国立コーヒー協会)が8つの産地に分けた国(火山性の土壌はそのうち5産地)、コスタリカは生産量は小さいものの精製の方法が多様な国、ホンジュラスは近年の増産が目立つ国、ペルーは協同組合と小規模農家が支える国と、背景が大きく違います。

この違いが産地選びで重要になる理由は2つあります。1つ目は、袋に書かれた等級の記号が国をまたぐと意味を変えることです。同じ「SHB」「SHG」「Supremo」という表記でも、標高で決める国とサイズで決める国があり、記号だけでは味の優劣は読めません。2つ目は、さび病をはじめとする病害への対応段階が国ごとに違い、品種構成が数年で入れ替わりつつあることです。今日の「定番の味」が、数年後も同じ品種から来るとは限りません。

この記事では、USDA FAS(海外農業局)の2026年版Coffee Annual(各国)と同年7月のCoffee: World Markets and Tradeを軸に、5か国を同じ物差しで並べます。そのうえで国別の特徴、横断テーマ(さび病後の品種転換、格付け制度、ミル・精製)を整理します。数値は年度と出典を付記し、一次資料で確認できなかった項目は「未確認」と明記しました。なお、東アフリカコーヒー産地大全も同じ形式でまとめているので、読み比べられます。

5か国の比較表

生産量と生産構造

項目 コロンビア グアテマラ コスタリカ ホンジュラス ペルー
生産量 2025/26年度(千袋=60kg袋) 12,500 3,155 1,160 5,530 4,764
2026/27年度予測(千袋) 13,400 3,260 1,200 6,030 4,780
収穫面積・栽培面積 植付800千ha・収穫640千ha(USDA、2026/27) 収穫345千ha(予測、2026/27) 約83,000ha(USDA、2026/27予測) 全国15県で栽培(USDA)。作付約36万ha・収穫約31万ha(2025/26年度、USDA 2025年版の年次報告) 植付375千ha・収穫340千ha(予測、2026/27)
生産者の構成 生産の約60%が5ha未満の農地(USDA) 未確認 生産者24,653人(2024/25、ICAFE)。規模別の全国値は未確認 2024/25の生産のうち小規模農家が約55%(算出値) 生産の90%超が5ha未満の農地(USDA)
市場年度の始まり 10月 未確認 未確認 未確認 4月
主収穫期 未確認 未確認 未確認 未確認 4〜9月(ピーク5〜8月)

生産量は USDA FAS Coffee: World Markets and Trade(2026年7月版)の総生産量です。グアテマラのみ、各国報告(GAIN、2026年)は3,025千袋(2025/26)と3,130千袋(2026/27予測)で、これはアラビカの値です。ホンジュラスの小規模農家比率は、IHCAFE登録農家の2024/25年度生産(小規模2,627,164袋、中規模1,661,733袋、大規模515,533袋)から算出しました。市場年度の始まりは国により異なり(コロンビアは10月、ペルーは4月)、年度の数字は同じ期間ではありません。

5か国の合計は、2025/26年度が27,109千袋(世界178,830千袋の約15.2%)、2026/27年度予測が28,670千袋(世界189,667千袋の約15.1%)です。

栽培条件・精製・格付け・風味

項目 コロンビア グアテマラ コスタリカ ホンジュラス ペルー
主な標高 栽培標高は400〜2,500m(原産地呼称「Café de Colombia」の公告)。ナリーニョの原産地呼称区域は1,300〜2,300m(FNC) SHBは4,500フィート(約1,372m)超(アナカフェ)。ウエウエテナンゴは1,500〜2,000m(アナカフェ) 地域で異なる。ロス・サントスは1,200〜1,900m(ICAFE) 国全体の範囲は未確認(IHCAFEの推奨は900m超・最高1,600m) 約75%が1,000〜1,800m(USDA)
主要品種 耐病性品種が面積の87%(カスティージョなど、USDA)。新品種も展開 カティモールとカトゥーラで栽培の半分近く。カトゥアイ・サルチモール・ブルボンは、栽培する農家の割合がそれぞれ10%未満(USDA) カトゥーラとカトゥアイで面積の90%超(ICAFE)。ヴィラ・サルチも栽培 ブルボン・カトゥアイ・カトゥーラ・ティピカ(USDA)。さび病耐性のパライネマを導入中 ティピカが70%超、カトゥーラ20%、その他10%(USDA)
主な精製 ウォッシュドが主流 主にウォッシュド(アナカフェ) ウォッシュド・ハニー・ナチュラルなど複数(ICAFE) 未確認(産地記事ではウォッシュド中心) ウォッシュドが大半(カハマルカ)
格付けの軸 豆のサイズ(スクリーン)。Supremoなど(現行の基準値は未確認) 標高。SHB(4,500フィート超)、HBなど 標高・硬度による呼称が取引で使われる(ICAFE原文は未確認) 標高による等級。SHG・HG・SL・STD(USDA) 全国共通の標高等級は未確認
風味傾向 全国共通の風味は未確認。ウイラの原産地呼称はキャラメル・果実の風味(SIC) 産地差が大きい。アンティグアはスモーキーなコク、ウエウエテナンゴは強い酸とワインのような風味 透き通る甘みとクリーンな酸味(タラス)、プラム・オレンジの酸甘(トレス・リオス) キャラメル・グレープフルーツ・ミルクチョコレート(コパン) 柑橘・フローラル・アプリコット(カハマルカ)

風味傾向は、当サイトの各産地記事の記述にもとづく傾向です(ウエウエテナンゴはアナカフェのカタログ、コロンビアはウイラの原産地呼称の記載による)。ロットごとに差があります。

国別の深掘り

コロンビア:量と多様性の両方を持つ最大国

USDAの2025/26年度推計は1,250万袋で、2026/27年度は7.2%増の1,340万袋が予測されています(USDA年次報告、2026年)。2025/26年度の減産は、過度な降雨が開花を妨げ、さび病を誘発しやすい湿度を生んだことが原因とUSDAは説明しています。全国の収穫期は、一次資料では確認できていません。

生産の約60%は5ヘクタール未満の農地から出ています。栽培面積の87%はさび病に強い品種で、2010年の35%から大きく伸びました。カスティージョ2.0に加え、カスタリア、セレストラ、コクーンといった味を重視した新品種、暑さに強いとされる「ウンブラル」の開発も報告されています。

産地記事: ウイラ、ナリーニョ、カウカ、トリマ、コロンビア全体の概要。

グアテマラ:標高で等級を決め、産地は8つに分ける

USDAの2026/27年度予測は、総生産で3,260千袋(GAINのアラビカ値は3,130千袋)です。収穫面積は345,000ヘクタールの予測で、アラビカが栽培の98%を占めます。

等級は標高で決まる点が特徴です。アナカフェの資料では、標高4,500フィート(約1,372m)超がSHB(Strictly Hard Bean)です。2024/25年度の収穫の81%がSHB、11%がHB(ハードビーン)でした。標高は等級を決める条件であって、カップの優劣を保証するものではありません。標高と品質の関係は標高と品質のガイドで整理しています。

さび病の圧力は高く、2024/25年度の1〜3月には発生率が最大20%に達しました。アラビカ農園の約3分の1が耐病性のハイブリッドに更新され、栽培の半分近くをカティモールとカトゥーラが占めます。

産地記事: ウエウエテナンゴ、アカテナンゴ、グアテマラ全体の概要(アンティグア)。

コスタリカ:生産量は最小、精製は多様

USDAの2025/26年度は1,160千袋、2026/27年度は3.5%増の1,200千袋の予測です(USDA年次報告、2026年)。生産量は5か国で最小です。ICAFEによると、生産者は2024/25年度に24,653人です。生産者の規模別の全国値と、生産者数やミル(精製所)の数の長期的な推移は、一次資料では確認できていません。

一方、通貨コロンの相場は2022年半ばから約35%上昇し、コロン建ての収入と採算が悪化していると、USDAは報告しています。生産者の収入は2021/22年度以降30%近く減ったとも記しています。地域別では、ロス・サントス(タラス)の栽培面積が2022年に28,519haでした(ICAFEの統計。ICAFEの地域紹介ページでは約22,000ha)。全国の栽培面積の推移と、地域どうしの比較は確認できていません。

精製はハニー、ナチュラルなど複数の方法がICAFEの資料で紹介されています。ただし「ハニー精製の発祥」をどの国に帰属させるかは資料により異なるため、この記事では扱いません。

産地記事: タラス(コスタリカ全体)、トレス・リオス、ターリアルバ、ヴァジェ・オクシデンタル。

ホンジュラス:増産が続く中米最大級の生産国

USDAの2025/26年度は5,530千袋で、2021/22年度以来の水準に戻りました。2026/27年度は9.0%増の6,030千袋の予測です(USDA年次報告、2026年)。IHCAFEはコパン、モンテシージョス、オパラカ、コマヤグア、エル・パライソ、アガルタの6産地に分けており(国全体の栽培標高の範囲は未確認)、ブルボン、カトゥアイ、カトゥーラ、ティピカが主な品種です。2025/26年度には、さび病に強いパライネマの導入で、植付面積が約3%(約1万ヘクタール)増えました。

さび病の全国平均発生率は2026年3月に8.44%(前回7.57%)と、警戒レベルは黄色(レベル4)です。県別の発生率は確認できていません。

格付けでは、2025/26年度(報告時点の暫定値)の輸出の49%がSHG、43%がHGでした(IHCAFEの統計、USDA掲載)。IHCAFEの等級資料では、SHGは標高1,300m超、HGは900〜1,300m、STDは900m以下です。

産地記事: コパン、エル・パライソ、ホンジュラス全体の概要。

ペルー:協同組合と小規模農家が支える

USDAの2025/26年度は4,764千袋、2026/27年度は4,780千袋の予測です(USDA年次報告、2026年)。主産地はカハマルカ(生産の22%)、サン・マルティン(20%)、フニン(19%)、アマゾナス(15%)です。コーヒーを主な収入源にする世帯数は、一次資料で確認できていません。

品種はティピカが70%超と、5か国で最も在来寄りの構成です。一方、さび病は2013年から続き、被害は作付けの約4割に及びます。2020年から広がるコーヒーベリーボーラーも、標高1,500m未満を中心に続いています。正式な土地の権利書がないことが、小規模農家の融資の制約になっていると報告されています(権利書のない農家の割合は未確認)。また、協同組合で価格交渉力と加工設備を共有する形が広がっています。

産地記事: カハマルカ、サン・マルティン、チャンチャマヨ、クスコ、プーノ。

横断テーマ

さび病後の品種転換:5か国で段階が違う

項目 コロンビア グアテマラ ホンジュラス ペルー
さび病の状況 全国の発生率は未確認 2024/25年度の1〜3月に最大20% 全国平均8.44%(2026年3月、IHCAFE) 2013年から続き作付けの約4割に影響
対応の段階 面積の87%が耐病性品種に転換済み アラビカ農園の約3分の1が耐病性ハイブリッドに更新 パライネマの導入で面積拡大中 薬剤処理と被害樹の植え替え
注意点 新品種の農家での普及データは未整備 カティモールが栽培の半分近くを占める 全国平均の値で、県別の差は未確認 ティピカ70%超で在来寄りの構成

発生率は国ごとに測る時期・指標が異なるため、数字の大小をそのまま優劣として読むことはできません。コスタリカは今回のUSDA報告にさび病の数値が見当たらず、表から外しました。品種の分類と系統はアラビカ品種ガイドで整理しています。

格付け制度:記号が同じでも物差しが違う

国 格付けの軸 代表的な表記 読み方の注意
コロンビア 豆のサイズ(スクリーン) Supremoなど 標高ではなくサイズ。大粒=高品質を意味しない。現行の基準値は未確認
グアテマラ 標高 SHB(4,500フィート超)、HB 品質ではなく栽培標高の区分
ホンジュラス 標高による等級 SHG、HG、SL、STD IHCAFEの等級資料ではSHGが1,300m超、HGが900〜1,300m
コスタリカ 標高・硬度(取引表記) SHBなど ICAFEの正式規定は未確認

SHBとSHGはどちらも「標高が高い」ことを示す記号ですが、基準値が国ごとに違います。袋に記号があるだけで品質を判断せず、産地・精製・ロット情報とセットで読むのが現実的です。

標高と農園規模

標高は5か国とも主要な条件ですが、数値の幅は広く、コロンビアの原産地呼称は400〜2,500m、ペルーは約75%が1,000〜1,800mです。標高の数字そのものは、味や品質を保証するものではありません。標高と品質の関係は標高と品質のガイドで整理しています。農園規模は、ペルーでは生産の90%超が5ha未満の農家から、コロンビアでは生産の約60%が5ha未満の農地から出ており、小規模な生産者が中心の構造が共通しています。

精製:産地の標準が国ごとに違う

比較表のとおり、ウォッシュドが主流の国が多い一方、コスタリカはハニー・ナチュラルを含む複数の方法がICAFEの資料で紹介されています。精製工程の違いはコーヒーの精製方法ガイドで比較しています。

まとめと次に読む記事

5か国を一言で整理すると、次のようになります。

  • コロンビア:最大の生産国。耐病性品種が面積の87%に達し、全国で産地が分かれる
  • グアテマラ:標高で等級を決め、産地を8つに分ける。2024/25年度の収穫の81%がSHB
  • コスタリカ:生産量は最小だが、精製の方法の多様さが特徴
  • ホンジュラス:増産が続き、SHGが輸出の約半分。さび病対策でパライネマを導入
  • ペルー:協同組合と小規模農家が中心。ティピカ主体でさび病の影響が大きい

読者へのアクション

  1. 手元の豆の国を確認し、比較表で標高・品種・精製・格付けの軸を読み合わせる
  2. 袋の「SHB」「SHG」「Supremo」を見たら、標高の区分かサイズの区分かをまず確認する
  3. 気になった国の産地記事(各国見出し末尾)へ進み、ロット名・精製・農園情報まで追う

全体像の土台にはスペシャルティコーヒーとは何か、生産国の規模は世界コーヒー生産国データも併せてご覧ください。

追記(2026-10-15): 比較表のホンジュラスの「収穫面積・栽培面積」を「面積の絶対値は未確認」としていましたが、USDA FAS の2025年版の年次報告(HO2025-0002)にある2025/26年度の作付約36万ha・収穫約31万haを追記し、出典に加えました。


訂正(2026-10-15): Codex による USDA 年次報告(GAIN 2026)・IHCAFE・ICAFE の原文との照合(PR #407)を受けて、次の点を改めました。ホンジュラスの「2021/22年度以来の水準」は2026/27年度予測(6,030千袋)ではなく2025/26年度(5,530千袋)についての記述で、パライネマの導入による植付面積の約3%増も2025/26年度のことでした。輸出のSHG 49%・HG 43%を「2026年4月までの暫定値」としていましたが、締切の月は確認できなかったため「報告時点の暫定値」としました。SHGの標高の下限は「資料により1,200m超から1,350m超まで幅がある」としていましたが、IHCAFEの等級資料でSHGは1,300m超、HGは900〜1,300mと確認できたため、その値に改めました。コスタリカのロス・サントス地域の栽培面積28,519haは、出典をICAFEの地域紹介ページとしていましたが、ICAFEの統計の2022年の値でした。コロン高について「農家の手取りを削っている」としていましたが、USDAの記載は為替の上昇(約35%)によるコロン建ての収入と採算の悪化と、生産者の収入の減少(2021/22年度以降30%近く)を分けて述べているため、そのように改めました。グアテマラのカトゥアイ・サルチモール・ブルボンの「各10%未満」は栽培面積ではなく、それぞれを育てる農家の割合でした。ペルーの「90%超が5ha未満」は生産量の比率と明記しました。カスティージョ2.0の「2024年12月発表」と、ペルーの「小規模農家の多くは土地の権利書がない」の割合は確認できなかったため外しました。出典の USDA 年次報告は、報告番号・公表日と公式PDFのURLに改めました。

訂正(2026-10-16): グアテマラの節で「標高が高い豆ほど締まって硬くなる傾向は標高と品質のガイドで整理しています」、横断テーマの「標高と農園規模:産地の個性を決める条件」の節で「標高の数字そのものより、日射・降雨・土壌との組み合わせが味を作ります」と記載していましたが、標高(気候)と豆の硬さ・風味の因果を示す一次資料は記事で示していなかったため、「標高と品質の関係は標高と品質のガイドで整理しています」「標高の数字そのものは、味や品質を保証するものではありません」に改め、節の見出しを「標高と農園規模」に改めました。

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